上 下
11 / 331
1章

6ー6 シャルル

しおりを挟む
    オットー公爵家が取り潰された後、マクシムが大切に慈しんできた領地と領民は、生前彼が信頼していたレーブン侯爵が引き継ぐ事となった。



    ……レーブン侯爵もそこそこマッチョなんだよね……。
    レーブンを推したのが兄上だと聞き、僕の兄上への色んな疑惑は日増しに高まっていった。


    そんなある日、兄上の希望でとあるご令嬢がお茶会に来ると、お喋り好きの侍女から聞いた。
     やっぱり大柄な女性なのかな。どうなの兄上。今まで頑なにご令嬢との接触を避けてきた兄上の希望だなんて。ぜひこの目で確かめたい。たとえどんな女性だって応援する気はある。僕だけは何があっても兄上の味方だ!


    雨続きだったのが嘘のようによく晴れた日だった。兄上のお茶会は薔薇園で行われていると侍女から情報を得た僕は、さも偶然ここを通りましたが何か?的な雰囲気でご令嬢を一目見ようと朝から息巻いていた。

    お茶会会場から少し離れた帰り道辺りで待ち伏せしようと、薔薇の生け垣に身を潜める。王子としては非常に情けない姿だけど、構ってはいられない。応援すると決めたからには、なんとしても兄上を傷付けない形で兄上の女性の好みを把握しなければ!!


    そしてその日、僕はマッチョじゃなく、天使と出会ったんだ。


    「君、名前は!?僕はシャルル!ねぇ、チェスは好き?」


    あまりの緊張で、ゆっくり近付くどころか走ってしまい、さらに早口でまくし立ててしまったのは本当に恥ずかしい思い出だ……。
    だって本当に綺麗で、どうしたらいいかわからなかったんだ。

    淡い空色の瞳に僕を映してくれたその天使は、マリエル・フォンティーヌと名乗った。





*************






    「ん……ふぅっ……シャルル様……シャルル様……もうだめ………」

    あの日見た天使が今僕とキスしてる。

    青空の下でキラキラ輝いていた薄い金色の髪に指を差し入れ、吸い付くような瑞々しい肌に誘われるまま白い首筋に口付けると、僕を掴む手にギュッと力が入るのが可愛い。


    いけない事してるってわかってる。
    兄上がきっとすぐ気付くだろう事も。

    でも止められないんだ。
    好きで、好きで好きで、たまらないんだ。

    「マリー……マリー……もっとちょうだい……お願い……」

    舌が絡まる度に聞こえてくる音で頭がクラクラする。

    あんなにも気持ち悪かった人生初めてのキスだったのに、マリーだと全然違う。マリーの身体はやわらかくてとてもいい匂いがする。身体だけじゃない、口のなかも甘くて、サラサラの砂糖水を飲んでるみたい。だからもっともっと欲しくなって口のなか全部かき回すように味わってしまう。これは僕だけのもの。



    マリー、マリー、お願い。


 
    どうか、兄上の事を好きにならないで。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

絶倫彼は私を離さない~あぁ、私は貴方の虜で快楽に堕ちる~

一ノ瀬 彩音
恋愛
私の彼氏は絶倫で、毎日愛されていく私は、すっかり彼の虜になってしまうのですが そんな彼が大好きなのです。 今日も可愛がられている私は、意地悪な彼氏に愛され続けていき、 次第に染め上げられてしまうのですが……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

処理中です...