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1章

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    「良かったじゃない初めてのキスが天使様とだなんて。」

    これが脂ぎったオジサンだったら悲惨すぎて目も当てられないわ~。と、沈む私を前にしてゲラゲラ笑いながらお茶を啜るのが三歳年上の姉オデットだ。

    「何が良いのよ!?シャルル様はまだ九歳よ!!こんな事が陛下に知れたら処罰されちゃうかもしれないじゃない!!」

    そう。ただでさえ王宮内は王家と縁付こうと血眼になっている者達で溢れかえっている。歴代の王子殿下達もそれはそれは大変な目に遭ってきたそうだ。
    とある王子は気付いたらお色気ムンムンの家庭教師に跨がられていたり、またとある王子は湯殿で裸の侍女に押し倒されていたり、更にまたとある王子は何としても娘を嫁がせたい侯爵の姉妹丼が待つ寝室へ閉じ込められたり……確かいずれも全て処罰されたと記憶している。
    それなのに、それなのに私ときたら九歳のシャルル様とはむはむしてしまった上に…その上にあんな事……!!!


    【マリー……マリー……もっとちょうだい……お願い……】


    シャ、シャルル様ったら私の…私の唾液をあんな………!!!


    思い出すだけで身体中から火を吹きそうになる。火ダルマさながらの私をオデットがニターッと悪人顔で楽しそうに見てる。クソッ!!

    「でもまぁ今回はシャルル様からしてきた事だし、うちが抗議するならまだしも、王家からお咎めなんてないわよ。もしそんな事が起こったら私が陛下のところに乗り込んで文句言ってあげる。」

    ユリシス王子から持たされた飴細工をバリバリ食べながら話す姉が、少し頼もしく見える。さすが女だてらに公爵家を継ごうとしてるだけあって、そこら辺の男よりずっと男前だ。

    「それよりマリー。シャルル様との事、ユリシス王子に知られないようにしなさいよ?」


    へ?何で??




    「あんた、ユリシス王子の婚約者候補になったらしいから。」

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