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第一章
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しおりを挟む「まさか色恋の分野で姫様に先を越されるなんて…しかもお相手があんなに素敵な殿方だなんて本当に羨ましいですわ……。」
レニーはあれからずっとボーッとしている。
ちなみに二匹はアンリ様が帰ったショックで寄り添ってふて寝中だ。
「レニー?あれはアンリ様に魔力をあげてるだけだってば。変な勘違いしないで?」
レニーは私の言葉に驚愕の表情を見せる。
「姫様何言ってるんですか!?」
何言ってるんだと言われても至極当たり前の事を口にしただけだ。あれはアンリ様の命を繋ぐ言わば医療行為のようなもので、レニーが考えているような男女の行為とは訳が違う。
「医療行為はベッドで殿方に上に乗られてするものじゃありませんって!!」
「だからあれは私が貧血みたいに星が飛んじゃうからだってば。目の前が何も見えなくなって危ないからアンリ様が気を遣ってくれてるのよ。」
「違います!絶対違います!!姫様あんな素敵な方といつもあんな事してて胸がときめいたりしないんですか?」
レニーったらしつこいわね。
…確かにアンリ様はとても素敵な人だわ。
普通に出会っていたなら好きになっていたかもしれない。でもアンリ様は私の力が必要だから今はこんな風に一緒にいるけれど、身体が治りローゼンガルドを取り戻した暁には、想う人と一緒に幸せになり国を率いて行くと言う輝かしい未来が待っているのだ。
けれど…万が一の可能性だけど…アンリ様のあの優しい性格では好きでもないのに恩義を感じて私と結婚しようと思うかもしれない。でもそれじゃ駄目なのだ。
アンリ様が心のままに、我が儘に自由に生きられるようにならなければ、奪われてしまった全てを取り戻したとは言えない。
「私は彼のお手伝いをしてるだけよ…。勘違いしたら後が辛いわ。」
そうよ。いつかこの繋がりも切れる時が来るのだから………。
************
「うそ!来たの!?あの【アンリ様】が?」
授業終わりのゼノを取っ捕まえて昼間の一部始終を話したら、信じられないものを見るような目をして驚いている。
「そういう事になっちゃったんだから仕方ないじゃない。それにアンリ様のお陰でお父様にも信用して貰えたの。これで色々と事を進めやすくなったし、結果良かったわよ。」
「まあな。でも俺も会ってみたかった。夢の中でしか見たことないからな。」
そっか。ゼノは映像でしか見たことないのよね…。私は未来でも会っていたから何の違和感もなかったけど、実際会ったらやっぱり色々と驚くだろうな。
「ねぇゼノ。私、【ファルサ】にも会ってみたいの。面と向かってじゃなくてもいい。遠くからでも。」
そう。彼女が一体何者なのかが知りたい。近寄ればその力の質についても何かわかるかもしれないし。
「相手も魔力持ちって言うならあんたが近付いたらすぐバレるぜ。近付くにしてもその魔力を遮断しなければ。」
遮断か……。
「魔力封じの道具か……でも……」
「あんたの魔力はデカ過ぎてとても遮断出来る代物じゃない。出来たとしてもほんの僅かな時間だ。」
「…僅かな時間で会える機会か…わかった。それもアンリ様に相談してみる。それとゼノにお願いがあるの。」
「何?」
「もし何の連絡もないまま私が一日戻らない時はアンリ様の部屋に飛んでくれる?今度実際に連れて行くけど万が一それまでに私の身に何か起こったら、夢で見たあの部屋をそのまま思い浮かべれば飛べるはずだから。」
それぞれの属性の魔法は使えないが、中間魔法と呼ばれるどちらにも属さない魔法は訓練次第で使えるのだ。
「一応聞くけど使えるわよね……?」
「精度はともかく使える事は使える。」
あ、怪しい…。怪しすぎる。
火の玉の一件もあるから色々疑いの目で見てしまう。
「大丈夫だって!一日いなかったらだな!わかった。」
「私の命がかかってるんだから頼むわよ…。レニーっていう侍女に私が戻らない時はゼノに連絡するよう言っておくからね。」
“おうっ!”と安請け合いするゼノに一抹の不安を感じる私なのだった。
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