ヒーローだって人間です

木全伸治

文字の大きさ
上 下
8 / 228

ヒーローの苦悩

しおりを挟む
「正義の味方なんてものは金持ちが、こっそりと趣味か道楽でやるもんだ」
「え? どうしてですか」
記者として、いつか憧れのヒーローたちのまじめな記事が書きたくて俺は記者を目指し、ようやく最近現役を引退したばかりのヒーローとコンタクトが取れて、こうして喫茶店で雑誌記者としてインタビューをしていた。が、なんか、身も蓋もない返事が返ってきて、俺はどんな顔をしていいのか分からなくなった。
「いいか、まず、定職につけない。怪人が現れたら、即駆けつけないといけないからな」
「はぁ、そうですね」
「それと、被害が出た場合の補償の問題もあるから、貧乏人にはきつい仕事だ」
「賠償ですか?」
「そうだ、正義のためとはいえ、周辺の物を壊しまくっていいわけじゃなし、政府の支援もない」
「え、政府は何も協力してくれないんですか」
「ああ、そういうものだ。宇宙や異世界から怪人が攻めてくるなんて話、政治家や官僚が信じると思うか? 信じたとしても、素性の怪しいヒーローより、警察か自衛隊を動かすだろ」
「はい。現実的に考えたら、公務員たる警官か自衛官の仕事ですよね」
「そう、向こうは国民を守るという大義名分からきちんと給料が税金から出るが、ヒーローってやつは税金から給料は出ない」
「だからヒーローは、金持ちの趣味か道楽でしかやっていけないと」
「そういうこと。俺だって、ここだけの話、倒した怪人の肉片をとある研究機関に密かに売り飛ばして、なんとかこれまで活動できたんだ。どうだ、ヒーローに幻滅したか。」
「いえ、ますます、ヒーローに興味を持ちました」
「じゃ、こういう黒い噂話は聞いたことないか。敵の組織をぶっ潰した際、その敵組織の貯め込んでた軍資金をそのままネコババしたヒーローがいるっていう噂」
「いえ、初耳です」
「あと、これを記事にするなら、俺の名前を出さないことと俺が怪人の肉片を売りさばいてた研究所の存在を調べたりするなよ」
「分かってます。当然、記事にするときは、名前・名称等は分からないようにしますよ」
「そうしてくれ。純粋な正義だけでは、この世の中メシは食えねぇんだ」
「はい」
俺は、そのヒーローの言葉に重みを感じ、納得してうなずき返した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...