23 / 49
暇つぶしの盗賊狩り
しおりを挟む
弟くんの修業の相手をするほど、佐助は暇を持て余していた。
姉妹や娼婦たちは屋敷のメイドたちと仲良くなり、メイドたちの仕事を手伝ったりしていた。
しかも、娼婦たちは屋敷の手伝いだけではなく、ロリビッチである時読みの夜の相手をして、多額のお小遣いをもらったりしているようだった。
それに私は口を出さない。娼婦は店の常連で姉妹はサバトから救い出したからついでに連れて来ただけで、彼女たちがどうしようと勝手である。
ロリビッチにかわいがられたいなら好きにすればいいし、灰色との戦いを前に彼女たちはここに置いていくつもりだから、その方が都合がいいともいえる。
忍二人の木刀が同時に折れた。すると、ためらうことなく二人は素手での殴り合いに移った。
稽古ではなく、死闘だ。隙間空間の扱いを練習していた弟くんも、二人の殺気に気づいて、その殴り合いに視線を向けた。
やばいとは思ったが、その場の誰も二人を止めようとはしなかったが、そこに時読みが現れた。
「あらま、派手にやってるわね」
佐助は鼻血が出ていたし、くノ一は唇が切れていた。
「さっきはしびれ薬をまいたみたいだけど、私たちの周りにはもっといいものがあるの。知ってる?」
時読みは弟くんに教えるように話し掛けた。
「おいおい、また俺の邪魔するつもりか?」
殴り合いを楽しんでいた佐助が時読みを見る
「これ、この子に強いってどういうものか見せるためのものでしょ。なら、私が口出ししてもいいじゃない」
「なっ・・・」
佐助が文句を言おうとして、急に口をパクパクさせ始めた。
「この世界には、隙間の空間があるけど、私たちのまわりには他に空気ってのが、あるのよ。ほら、風を操る魔法があるでしょ、あれで操っているのが空気なのよ」
佐助は何か言いたそうな顔で慌てていた。対照的に時読みがにんまりしている。
「ふふふ、息ができなくて苦しい、少しは頭が冷めたかしら、ほら、水に顔をつけると息苦しくてすぐに顔をあげるでしょ、それは私たちが生きるために周りにある空気が生きるために必要だからよ。だから、それを操れば、どれだけ修練を積んでも、御覧の通り。どんな達人でも、空気を吸えないようにしたら、しびれ薬を撒くより、簡単に相手を弱らせられるわ」
佐助は水の中で溺れるようにジタバタして、顔が真っ赤になっていく。くノ一がそのざまに呆れつつ、彼女も冷静になって彼を眺めていた。
「これで頭が完全に冷えたかしら、もういいかしら」
時読みの言葉にブンブンと佐助がうなずき、彼女は魔法を解き、彼は「ぶふぁ~」と大きく息を吸い込んだ。
「風を操る魔法は、魔法の基本だから、それを応用して空気が喉から奥に行かないようにするの。口から逆に空気を吐き出させる感じかしら」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」
佐助は大きく呼吸を乱し、もうくノ一と殴り合いをする気力は完全になくなっていた。
「武器を取り出すのは苦手そうだから、こういう魔法も覚えてみたら。それから、一つ助言、物には念が込められるのよ」
「念?」
「ほら、呪いの指輪とか、これを持っていたら不幸になるとかいう、あれ、不幸になれっていう人の念がものに染み込んでいるからなの。呪いを込められた物が呪物、物に宿らせずに飛ばして対象者にぶつけるのが呪詛。だから、武器にお前は俺のものだ、俺が呼べばすぐに出て来いって念を込めるの、ものには魂が宿る、確かそちらの忍さんの国の考え方よね」
「え、ええ、物を大切に扱うようにって戒めみたいなもんですね」
佐助が呼吸を整えながら答える。
「とにかく、そんな感じで、自分の扱う武器に愛着を持って囁くと、その念が移って呼ぶと使い魔みたいにすぐ出てくれるようになるわ。あなただって、その槍に愛着を持って長く使っているから、すぐに呼び出せるんじゃないかしら」
槍使いが自分の獲物をブンと振り回す。
「そうですね。道具に愛着を持って大切に扱えば、道具もそれに応えてくれると思います」
色々と教えてくれた時読みに弟くんはぺこりと頭を下げていた。
「あ、ありがとうございます。参考になります」
「それにしても、そっちのふたりは、ずいぶんと血の気が多そうね。そんなに血を流したいなら、ちょっと仕事をしてみない?」
「仕事?」
顔にあざを作った忍ふたりが首を傾げる。
「もうすぐ、この辺りの領主の使者が盗賊退治の助力にくるはずなの。盗賊のねぐらを教えるだけにしようと思ってたけど、あなたたちを見てその盗賊退治を直接引き受けようかなと思って」
「俺たちに盗賊退治を?」
「そうよ。それぐらい血の気があるのなら、どうかしら」
「ちょっと待ちなさいよ、そういうのは私を先に通してよね」
時読みの姿を見かけたので、私も中庭に出てきた。忍は私の護衛であり、それを無視して話を進められては困る。
「あら、私の読みでは、あなたは反対しないと思ったんだけど」
「ええ、反対はしないわ。ちゃんと、報酬は出るわよね」
「もちろん、この私が、金を出さないケチに見える?」
「だから念のためよ」
「大丈夫、ここの領主は、筋は通す方だから、盗賊を退治したら、ちゃんと報奨金を出してくれるわよ」
姉妹や娼婦たちは屋敷のメイドたちと仲良くなり、メイドたちの仕事を手伝ったりしていた。
しかも、娼婦たちは屋敷の手伝いだけではなく、ロリビッチである時読みの夜の相手をして、多額のお小遣いをもらったりしているようだった。
それに私は口を出さない。娼婦は店の常連で姉妹はサバトから救い出したからついでに連れて来ただけで、彼女たちがどうしようと勝手である。
ロリビッチにかわいがられたいなら好きにすればいいし、灰色との戦いを前に彼女たちはここに置いていくつもりだから、その方が都合がいいともいえる。
忍二人の木刀が同時に折れた。すると、ためらうことなく二人は素手での殴り合いに移った。
稽古ではなく、死闘だ。隙間空間の扱いを練習していた弟くんも、二人の殺気に気づいて、その殴り合いに視線を向けた。
やばいとは思ったが、その場の誰も二人を止めようとはしなかったが、そこに時読みが現れた。
「あらま、派手にやってるわね」
佐助は鼻血が出ていたし、くノ一は唇が切れていた。
「さっきはしびれ薬をまいたみたいだけど、私たちの周りにはもっといいものがあるの。知ってる?」
時読みは弟くんに教えるように話し掛けた。
「おいおい、また俺の邪魔するつもりか?」
殴り合いを楽しんでいた佐助が時読みを見る
「これ、この子に強いってどういうものか見せるためのものでしょ。なら、私が口出ししてもいいじゃない」
「なっ・・・」
佐助が文句を言おうとして、急に口をパクパクさせ始めた。
「この世界には、隙間の空間があるけど、私たちのまわりには他に空気ってのが、あるのよ。ほら、風を操る魔法があるでしょ、あれで操っているのが空気なのよ」
佐助は何か言いたそうな顔で慌てていた。対照的に時読みがにんまりしている。
「ふふふ、息ができなくて苦しい、少しは頭が冷めたかしら、ほら、水に顔をつけると息苦しくてすぐに顔をあげるでしょ、それは私たちが生きるために周りにある空気が生きるために必要だからよ。だから、それを操れば、どれだけ修練を積んでも、御覧の通り。どんな達人でも、空気を吸えないようにしたら、しびれ薬を撒くより、簡単に相手を弱らせられるわ」
佐助は水の中で溺れるようにジタバタして、顔が真っ赤になっていく。くノ一がそのざまに呆れつつ、彼女も冷静になって彼を眺めていた。
「これで頭が完全に冷えたかしら、もういいかしら」
時読みの言葉にブンブンと佐助がうなずき、彼女は魔法を解き、彼は「ぶふぁ~」と大きく息を吸い込んだ。
「風を操る魔法は、魔法の基本だから、それを応用して空気が喉から奥に行かないようにするの。口から逆に空気を吐き出させる感じかしら」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」
佐助は大きく呼吸を乱し、もうくノ一と殴り合いをする気力は完全になくなっていた。
「武器を取り出すのは苦手そうだから、こういう魔法も覚えてみたら。それから、一つ助言、物には念が込められるのよ」
「念?」
「ほら、呪いの指輪とか、これを持っていたら不幸になるとかいう、あれ、不幸になれっていう人の念がものに染み込んでいるからなの。呪いを込められた物が呪物、物に宿らせずに飛ばして対象者にぶつけるのが呪詛。だから、武器にお前は俺のものだ、俺が呼べばすぐに出て来いって念を込めるの、ものには魂が宿る、確かそちらの忍さんの国の考え方よね」
「え、ええ、物を大切に扱うようにって戒めみたいなもんですね」
佐助が呼吸を整えながら答える。
「とにかく、そんな感じで、自分の扱う武器に愛着を持って囁くと、その念が移って呼ぶと使い魔みたいにすぐ出てくれるようになるわ。あなただって、その槍に愛着を持って長く使っているから、すぐに呼び出せるんじゃないかしら」
槍使いが自分の獲物をブンと振り回す。
「そうですね。道具に愛着を持って大切に扱えば、道具もそれに応えてくれると思います」
色々と教えてくれた時読みに弟くんはぺこりと頭を下げていた。
「あ、ありがとうございます。参考になります」
「それにしても、そっちのふたりは、ずいぶんと血の気が多そうね。そんなに血を流したいなら、ちょっと仕事をしてみない?」
「仕事?」
顔にあざを作った忍ふたりが首を傾げる。
「もうすぐ、この辺りの領主の使者が盗賊退治の助力にくるはずなの。盗賊のねぐらを教えるだけにしようと思ってたけど、あなたたちを見てその盗賊退治を直接引き受けようかなと思って」
「俺たちに盗賊退治を?」
「そうよ。それぐらい血の気があるのなら、どうかしら」
「ちょっと待ちなさいよ、そういうのは私を先に通してよね」
時読みの姿を見かけたので、私も中庭に出てきた。忍は私の護衛であり、それを無視して話を進められては困る。
「あら、私の読みでは、あなたは反対しないと思ったんだけど」
「ええ、反対はしないわ。ちゃんと、報酬は出るわよね」
「もちろん、この私が、金を出さないケチに見える?」
「だから念のためよ」
「大丈夫、ここの領主は、筋は通す方だから、盗賊を退治したら、ちゃんと報奨金を出してくれるわよ」
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる