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日常とシチュー

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私達はシチューを完成させると、お行儀よく居間の座敷机に座った。
鍋に二人分入ったシチューを、お皿についでゆく。


「シチューにご飯かければ、もうほぼカレーだよね!」
「シチューを白米にかけるとか…味覚可笑しいんじゃないのか?」

私の向かいに座る秋君が、私を軽蔑した眼で見てきた。

「色が白いだけでほぼカレーだよ!」

「米に牛乳かけてるみたいでやだ。」


「えー」
冗談で「これだから最近の若いモンは!」と言おうとしたが、
この台詞は食堂のお客さん達によく言われる台詞ナンバー1で、言うだけでムカつくので辞めて、それからは2人とも黙々とスプーンを動かした。


縁側から何時もと変わらずそよそよと風に揺れる稲と、その上を飛び回るトンボ、夕焼け空が見えた。
口元についたシチューを拭って、私は秋君になんとなく話題をふった。

「そう言えば中学校、どんな感じだった?」

「んー…
なんか思ったより校則厳しくなくてほっとしたな。
指定の鞄じゃ無い奴もいるし、頭にでかいハートの髪飾り着けてる女子も居たし。」

シチューを器半分食べ切りお腹が膨れたのか、秋君はそれ以上に手を付けず、熱いお茶に息を吐きかけ冷ましている。
対して私は二杯目のおかわりをついでいる。この違いとはなんだろう。


「あ、あと学校の近くはパン屋とかコンビニとかあるから其処は嬉しいかな。この村スーパーぐらいしかないし…。
そう言えばパン屋に姉さんと同じぐらいの女の子が働いてたよ。」



「えっ!ほんと?どんな子どんな子!?
年齢は?
顔立ちは?
背丈は?
髪型は?
『ご飯にシチューをかける人が好きです』って言ってた!?」



「落ち着いて!最後のは絶対有り得ないし、遠目からみただけでまだ話してさえないよ!」


「仲良くなったら私にも会わせてね!」

思わぬ情報に満面の笑顔を咲かせる私を一瞥して、
面倒くさそうに秋君は口を開いた。

「……分かった。
味覚のおかしい人が君の背丈を知りたがってたって伝えとく。」

「そんな事言ったら会う前に嫌われる…!」


        ✴


そんなくだらない事をわいわい喋りながら食べる
ジャガイモと、人参、それとウインナーの入ったシチューはそれなりに美味かった。



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