桜はもう枯れた。

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鷹華

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鷹華は目を開いた。
瞳には、木草も野良猫も存在しえない、灰色の街の風景がうつった。

「……。」

鷹華に思い出せる記憶はそれだけで、
その後どうなったのか思い出せはしなかった。抜け落ちたといった方が正確だろう。
鷹華の目の前を歩く人物が、心配をのせた表情で此方を見る。

「鷹華?どうしたの?」

「あっ…いえ!何でもございません!」

「そう、良かった。」

目の前でそう微笑む人を、今、自分が今仕えている人の顔をじっとみる。


(ー私は、この人のお役に立てているだろうか。)


「じゃあそろそろ行こうか。長い旅になりそうだ。」

「はい!」


鷹華はその、護るべき人物の手を取る。
そして歩きだした。

長くきめ細やかな黒髪と一緒に、桜の髪飾りが揺れた。





資源の枯渇したこの世界に、桜はもうどこにもない。



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