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ハーレムは嫌い。ハーレム男も嫌い。ハーレムと名のつくものは生理的にみんな無理。
ローランは私を犯し尽くして、また勇者の旅へとで出ていった。
私は一人ローランの部屋だと思われるところで顔の見えない知らない人たちにお世話をされる。
顔が見えないのは、私の視界が黒い布で覆われているから。ローランに無理矢理付けられた布は、私がローラン以外を見ないようにするためのものらしい。
解こうにも逃げようにも、黒い布は魔法によって固定されているのか解けないし、この部屋は外から鍵がかけられているようで逃げられない。
魔法が使えないのはやっぱり首輪のせいらしい。ローランの言葉の端々にこの首輪が魔法使い用に作られた魔力封じの首輪だと匂わせるような言葉があった。
どうしようもない。詰んだ。
私の身体はローランの手によって快楽に目覚めているし、心だって唯一話して視界に入れることができるローランに依存しはじめてる。
こんなことになったのはローランが原因だと頭では理解してるのに、どうして心は自分の思う通りにならないのだろう。
このままだとローランにすべてを委ねる日も遠くないと思う。
そんなの絶対嫌なのに。
ベッドから降りてうろうろとしてみるけど、目が見えなくて魔法も使えない時点で意味がない。
私の身の回りの世話をしてくれる人たちは決して私の声に応えない。本当にどうしようもない状況。
「もう、やだ……」
頭が狂いそう。
「助けてやろうか?」
「っ、だれっ!?」
人が入ってきたような気配はしなかったはずなのに、聞こえた声に慌てて振り向く。けれど当然ながら何も見えない。
男の人の声。ローラン以外の男の人の声をここに来て初めて聴いた。
……よく考えたらこの部屋に来てからローラン以外の人の声が初めてだった。
「私か? ……まあ、うん。私のことはどうでもいいじゃないか。ここから出たいのか、出たくないのか、どっちなんだ?」
「出たい、けど……」
明らか様に怪しい人。
この人を信じてもいいの?
「それなら私が出してやろう」
「え……」
「その代わり、ローレンスにはもう近付かないで欲しいんだ」
まるで悪魔との契約みたいと思った。だって、私にとても都合が良過ぎるから。
ローランをローレンスと呼ぶ人。この人がローランとどういう関係なのかはわからない。けど、きっと近しい関係なのだろう。
「ローレンスはね、隣国の王女との婚約が決まってるんだ」
「………あぁ……」
悪魔は優しく私に教えてくれる。
「だからね、君みたいに化け物染みた容姿をした子がローレンスと必要以上に仲良くするのはとても困るんだよ。ローレンスの結婚はこの国と隣国の友好を繋ぐためのものなのだから」
だから、ローランはハーレムの中から一人を選ばなかったんだ。ローランは自分がこの国と隣国の友好を深める存在だと知っていたから。
なら、私はなんだったんだろう。私は、どうして……。
「君はね、ローレンスの一時の欲に付き合わされたに過ぎない。パーティーから勝手に消えた子なんて拐かしやすいだろう? そういうことだよ。ローレンスは君じゃなくてもよかった」
「わたし、じゃなくても、よかった……」
「そうそう。だから私がここから逃がしてあげても、もうローレンスには近付いてはいけないよ。また君が傷付くだけだ」
悪魔の言葉はすんなりと頭の中に入ってくる。とてもわかりやすい事実だった。
だって、ローランが私なんかだけを愛しているなんていう事実よりよっぽど真実味がある。最初からわかってたはずだ。ローランの言葉は嘘だって。
それなのに、どうしてだろう。どうして私の瞳からは涙が止まらないの?
溢れた涙は私の目を覆う布にシミをつけていく。
「おや、泣いてるの?」
「っ、」
「心配ないさ。すぐにローレンスは君のことを忘れる。君も、化け物は化け物らしくひっそりと過ごしていればローレンスのことなんて忘れるだろう」
元の生活に戻るだけ。ただそれだけのこと。
どちらにせよ、私なんかがローランの隣にいられないとわかってた。ここから出たいと望んでいた。
なら、願った通りじゃないか。
「はやく、ここから出して……」
「私相手にその言い方はどうかと思うが……、まあいい。君をローレンスから離すことができるなら許してやろう」
悪魔は私の後ろに回る。はらりと黒い布が外れて落ちた。
そしてそのまま光が溢れ、転移魔法が行使されたのだとわかる。どこに飛ぶかわからない。けど、そんなのどうだっていい。
ローランから離れられるならもうどこだってよかった。
光を感じてゆっくりと目を開けると、そこは私が昔いた森の中。魔力が使えるようになったのか、確認するように魔力を練る。
「少し、違和感があるけど……なんとか使えそう……」
前と同じとは言えないけど、身を守るくらいの結界なら使えそう。でも、冒険者にはなれなそう。
「笑える……」
私になんの価値もなくなってしまった。元から私にはなんにもなかったのに。
魔法だけが私の取り柄だったのに。
ハーレム男は嫌い。それはずっと変わらない。
「ローランなんて、だいきらい」
世界で一番、大嫌いだ。
ローランは私を犯し尽くして、また勇者の旅へとで出ていった。
私は一人ローランの部屋だと思われるところで顔の見えない知らない人たちにお世話をされる。
顔が見えないのは、私の視界が黒い布で覆われているから。ローランに無理矢理付けられた布は、私がローラン以外を見ないようにするためのものらしい。
解こうにも逃げようにも、黒い布は魔法によって固定されているのか解けないし、この部屋は外から鍵がかけられているようで逃げられない。
魔法が使えないのはやっぱり首輪のせいらしい。ローランの言葉の端々にこの首輪が魔法使い用に作られた魔力封じの首輪だと匂わせるような言葉があった。
どうしようもない。詰んだ。
私の身体はローランの手によって快楽に目覚めているし、心だって唯一話して視界に入れることができるローランに依存しはじめてる。
こんなことになったのはローランが原因だと頭では理解してるのに、どうして心は自分の思う通りにならないのだろう。
このままだとローランにすべてを委ねる日も遠くないと思う。
そんなの絶対嫌なのに。
ベッドから降りてうろうろとしてみるけど、目が見えなくて魔法も使えない時点で意味がない。
私の身の回りの世話をしてくれる人たちは決して私の声に応えない。本当にどうしようもない状況。
「もう、やだ……」
頭が狂いそう。
「助けてやろうか?」
「っ、だれっ!?」
人が入ってきたような気配はしなかったはずなのに、聞こえた声に慌てて振り向く。けれど当然ながら何も見えない。
男の人の声。ローラン以外の男の人の声をここに来て初めて聴いた。
……よく考えたらこの部屋に来てからローラン以外の人の声が初めてだった。
「私か? ……まあ、うん。私のことはどうでもいいじゃないか。ここから出たいのか、出たくないのか、どっちなんだ?」
「出たい、けど……」
明らか様に怪しい人。
この人を信じてもいいの?
「それなら私が出してやろう」
「え……」
「その代わり、ローレンスにはもう近付かないで欲しいんだ」
まるで悪魔との契約みたいと思った。だって、私にとても都合が良過ぎるから。
ローランをローレンスと呼ぶ人。この人がローランとどういう関係なのかはわからない。けど、きっと近しい関係なのだろう。
「ローレンスはね、隣国の王女との婚約が決まってるんだ」
「………あぁ……」
悪魔は優しく私に教えてくれる。
「だからね、君みたいに化け物染みた容姿をした子がローレンスと必要以上に仲良くするのはとても困るんだよ。ローレンスの結婚はこの国と隣国の友好を繋ぐためのものなのだから」
だから、ローランはハーレムの中から一人を選ばなかったんだ。ローランは自分がこの国と隣国の友好を深める存在だと知っていたから。
なら、私はなんだったんだろう。私は、どうして……。
「君はね、ローレンスの一時の欲に付き合わされたに過ぎない。パーティーから勝手に消えた子なんて拐かしやすいだろう? そういうことだよ。ローレンスは君じゃなくてもよかった」
「わたし、じゃなくても、よかった……」
「そうそう。だから私がここから逃がしてあげても、もうローレンスには近付いてはいけないよ。また君が傷付くだけだ」
悪魔の言葉はすんなりと頭の中に入ってくる。とてもわかりやすい事実だった。
だって、ローランが私なんかだけを愛しているなんていう事実よりよっぽど真実味がある。最初からわかってたはずだ。ローランの言葉は嘘だって。
それなのに、どうしてだろう。どうして私の瞳からは涙が止まらないの?
溢れた涙は私の目を覆う布にシミをつけていく。
「おや、泣いてるの?」
「っ、」
「心配ないさ。すぐにローレンスは君のことを忘れる。君も、化け物は化け物らしくひっそりと過ごしていればローレンスのことなんて忘れるだろう」
元の生活に戻るだけ。ただそれだけのこと。
どちらにせよ、私なんかがローランの隣にいられないとわかってた。ここから出たいと望んでいた。
なら、願った通りじゃないか。
「はやく、ここから出して……」
「私相手にその言い方はどうかと思うが……、まあいい。君をローレンスから離すことができるなら許してやろう」
悪魔は私の後ろに回る。はらりと黒い布が外れて落ちた。
そしてそのまま光が溢れ、転移魔法が行使されたのだとわかる。どこに飛ぶかわからない。けど、そんなのどうだっていい。
ローランから離れられるならもうどこだってよかった。
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「少し、違和感があるけど……なんとか使えそう……」
前と同じとは言えないけど、身を守るくらいの結界なら使えそう。でも、冒険者にはなれなそう。
「笑える……」
私になんの価値もなくなってしまった。元から私にはなんにもなかったのに。
魔法だけが私の取り柄だったのに。
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「ローランなんて、だいきらい」
世界で一番、大嫌いだ。
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