幸薄少女の捧げる愛

りんごちゃん

文字の大きさ
上 下
5 / 15

5.熱に翻弄される*

しおりを挟む
 元から逃げようとは思っていなかった。
 わたしは彼の妻としてここにいることは理解していたから。だから、わたしに出来ることはこの行為が早く終わるように祈ること。

 わたしの羞恥心など、最初からなければ良かったのに。

「ちゅ、んっ……ヴィティ、たくさん濡れてきたね」
「っ、ん、イデアルさまぁ……」

 イデアルさまは、ちゅう、っと胸の先端に吸いついて、指はわたしの股を弄っている。
 股の間から溢れた分泌液でくちゅくちゅと聞こえる音がわたしに激しい羞恥心を与えていた。
 漏らしたわけではないと言われたけど、ショーツが肌に張り付くくらい濡れているのはもはや病気を疑ってしまう。
 けれど、弄られて快感を感じているのはわたし。誤魔化しようのないほど艶やかな声をあげて、彼にされることを甘受していた。

「ふっ、ぅう……」
「声、出していいんですよ。ヴィティの可愛い声、たくさん聞きたい……」
「っ! んンッ、ぁ、イデアルさまっ! あぁっ!」

 クロッチをズラされて、イデアルさまの指がわたしの恥部へと直接触れる。
 イデアルさまの腕を止めようと触れると、イデアルさまはその手を取り、お互いの指を絡め合った。

「ごめんね。邪魔しないで」
「やっ、だめ……っ、ぁッ、ゃんっ、あっ、あっあっ……!」

 いつの間にかわたしは足を広げさせられていて、片足をイデアルさまの肩に乗せながら、彼の手によってナカをかき混ぜられる。
 恥ずかしいやらはじめての快感やらでわたしのぐるぐると熱が体の中を駆け巡る。本当に頭がおかしくなりそう。

 気がつけば、わたしの身体からはくったりと力が抜けていた。イデアルさまの手によってもたらされる快感に身体が従順になっている。
 彼が腰やヘソの近くにキスを吸い付くようなキスを落としたりしてきたけど、それも合わせてわたしを興奮させる材料にしかならなかった。
 なんで、どうしてこんなに気持ちいいの?
 こんなに気持ち良くていいの?

「いであるさま、いであるさまぁ……ッ!」
「可愛いヴィティ」
「ぁんっ」

 ヘソ近くにキスを落とされると、意図せず腰が動いてしまう。
 もっとして欲しい、全然足りない、もっともっともっと。
 そんなことしか考えられなくなる。
 いつのまにか下腹部にあるイデアルさまの頭の上に自分の手を添えた。くしゃりと彼の髪を握りしめると、イデアルさまはわたしの手に自分の手を重ね、唇を落とすとそのままどんどん下へと下がっていく。

 気づいたのは身体に快感という名の電流が走ったときだった。

「えっ、あ、や、うそっ!」
「ちゅ、ンッ……ヴィティ……」
「あっ、~~~~~~~~っ!」

 イデアルさまの舌がとても言葉では言い表せない場所に触れる。わたしの身体はびりびりと電流が走ったように、なにも考えられなくなった。
 恐ろしくなって、そこを隠すように足に力が籠る。イデアルさまの舌から逃れるように腰を動かすと、彼の腕がわたしの腰に回り、先ほどよりも強くそこに吸いつかれた。

 声も出ない。声を出したらまともではいられなくなるような、そんな気がして歯を食いしばる。

「やっ、えぅ、ゆびぃ……っ!?」
「まだ、一本だけです」

 小さな痛みとともに、中にイデアルさまの指が差し込まれた。そんなことをされるとは思わなくて、変な声が出てしまう。

 指って、え、指っ?
 どうしてそんなところに、指なんて。そう思って止めようとすると、彼の指はわたしのナカの壁を擦った。

「ひぅっ!」
「大丈夫。まだ一本だけ、ですから」
「ゃっ、ひ、いであるさま、いであるさまぁ……」
「うん、気持ちいーね」

 イデアルさまの長い指は入り口に触れているわけじゃなくて、溢れた分泌液の音を鳴らしながら穴の奥を探るように深く入ってくる。
 ぢゅぷぢゅぷとイデアルさまの指が行き来するたびに音が溢れ出す。
 彼の指が内壁を擦り、だんだん異物感に慣れたあと、イデアルさまが囁いた。

「もう一本増やしますよ」
「っ、ぅえっ? ────ッ!」

 二本目が入ったとき、圧迫感が酷かった。
 ギチギチと入り口が痛みを訴える。痛みから、泣きながら彼の名前を何度も呼んだ。
 返ってきたのは深いキス。

「ふ、ちゅ、んっ、いであるさ、んんぅっ」
「ヴィティ……、僕も、そろそろ──」
「ひぅ! みみぃっ……!」

 覆い被さってきたイデアルさまが、わたしの耳孔に舌を入れてきた。ぞくぞくとした得体の知れないくすぐったさにも似たものがわたしの背筋を走る。
 その間もイデアルさまの指はぢゅぷぢゅぷと行き来を繰り返していて、だんだん頭の中が大きくぼーっとしてきた。
 なにも考えられなくなる。こわい。

「やっ、はぅ、いであるさま、いであるさまあっ、こわいっ、へんなのっ、こわいぃっ」
「ヴィティ、大丈夫。大丈夫だから、流れに身を任せて」
「あっあっ、やっ、こわいのっ、~~~~っ、おかしくなっちゃ~~~~~ッ!」

 びくびくっ、と身体が跳ねた。ぴんっと足を伸ばして、その余韻を全身で感じる。
 まるでたくさん走ったあとのような疲労感。けれどそれ以上の充足感。

「ヴィティ、頑張ったね」
「はー、はーっ」
「ん、可愛い、いい子」

 全身で息をするわたしにイデアルさまは優しく微笑む。けれど涙で滲んで彼の顔ははっきりと見えなかった。

「今度は僕の番」

 イデアルさまが着ていたガウンを脱ぎ捨てる。そしてその裸体があらわになった。
 その美しさに一瞬息が止まる。
 細身の男性だと思っていたその身体には、しなやかな筋肉がついていた。まるで偶像のように筋肉は割れていて、身体には大小関わらず傷がついている。それでもその身体は美しかった。彼の裸を見ることは恥ずかしいことのはずなのに、一つの絵画のように美しくて恥ずかしいとさえ思えない。
 美しい顔、それに身体。この人が一瞬でもわたしの旦那様であることに罪悪感を感じる。それも殺そうとしているのだから、なおさら。
 震えながら、その身体に手を伸ばす。

「んっ……」

 指先がイデアルさまの肌に触れると、彼は小さく呻いた。
 それに驚いてすぐさま手を引っ込めると、それを引き止めるようにイデアルさまの手がわたしの手首を掴んだ。

「僕もヴィティにたくさん触れたから、ヴィティも僕にたくさん触れてください」
「そんな……」
「それとも、僕の肌は傷だらけで醜いですか?」
「それはありえません! イデアルさまはとても美しくて、綺麗で、素敵です……」
「嬉しい。なら、もっと触れて」

 まるで吸い寄せられるように、自然とイデアルさまの肌に手を這わせる。
 硬くて、熱い。男性の肌。初めて触れるその感触に心臓が痛いくらいに高鳴った。
 うっとりとしたいところなのに、イデアルさまがまた指を動かしはじめてそれどころじゃなくなる。

「あんっ! ふっ、んんっ、いであるさまぁ……!」
「ヴィティ、可愛い……」
「ひっ、ゃ、んん~~~~~ッ!」

 また気持ちいい波がわたしを襲った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

【完結】幼馴染が妹と番えますように

SKYTRICK
BL
校内で人気の美形幼馴染年上アルファ×自分に自信のない無表情オメガ ※一言でも感想嬉しいです!! オメガ性の夕生は子供の頃から幼馴染の丈に恋をしている。丈はのんびりした性格だが心には芯があり、いつだって優しかった。 だが丈は誰もが認める美貌の持ち主で、アルファだ。いつだって皆の中心にいる。俯いてばかりの夕生とはまるで違う。丈に似ているのは妹の愛海だ。彼女は夕生と同じオメガ性だが明るい性格で、容姿も一際綺麗な女の子だ。 それでも夕生は長年丈に片想いをしていた。 しかしある日、夕生は知ってしまう。丈には『好きな子』がいて、それが妹の愛海であることを。 ☆竹田のSSをXのベッターに上げてます ☆こちらは同人誌にします。詳細はXにて。

初恋と花蜜マゼンダ

麻田
BL
 僕には、何よりも大切で、大好きな彼がいた。  お互いを運命の番だと、出会った時から思っていた。  それなのに、なんで、彼がこんなにも遠くにいるんだろう。  もう、彼の瞳は、僕を映さない。  彼の微笑みは、見ることができない。  それでも、僕は、卑しくも、まだ彼を求めていた。  結ばれない糸なのに、僕はずっと、その片方を握りしめたまま、動き出せずにいた。  あの、美しいつつじでの誓いを、忘れられずにいた。  甘い花蜜をつけた、誓いのキスを、忘れられずにいた。 ◇◇◇  傍若無人の生粋のアルファである生徒会長と、「氷の花」と影で呼ばれている表情の乏しい未完全なオメガの話。  オメガバース独自解釈が入ります。固定攻め以外との絡みもあります。なんでも大丈夫な方、ぜひお楽しみいただければ幸いです。 九条 聖(くじょう・ひじり) 西園寺 咲弥(さいおんじ・さくや) 夢木 美久(ゆめぎ・みく) 北条 柊(ほうじょう・しゅう) ◇◇◇  ご感想やいいね、ブックマークなど、ありがとうございます。大変励みになります。

さみだれの初恋が晴れるまで

める太
BL
出会う前に戻りたい。出会わなければ、こんな苦しさも切なさも味わうことはなかった。恋なんて、知らずにいられたのに。 幼馴染を庇護する美貌のアルファ×ベータ体質の健気なオメガ 浅葱伊織はオメガだが、生まれつきフェロモンが弱い体質である。そのお陰で、伊織は限りなくベータに近い生活を送ることができている。しかし、高校二年生の春、早月環という美貌の同級生と出会う。環は伊織がオメガであると初めて"嗅ぎ分けた"アルファであった。 伊織はいつしか環に恋心を寄せるようになるが、環には可憐なオメガの幼馴染がいた。幾度も傷付きながらも、伊織は想いを諦めきることができないまま、長雨のような恋をしている。 互いに惹かれ合いつつもすれ違う二人が、結ばれるまでのお話。 4/20 後日談として「さみだれの初恋が晴れるまで-AFTER-」を投稿しました ※一言でも感想等頂ければ嬉しいです、励みになります ※タイトル表記にて、R-15表現は「*」R-18表現は「※」 ※オメガバースには独自解釈による設定あり ※高校生編、大学生編、社会人編の三部構成になります ※表紙はオンライン画像出力サービス「同人誌表紙メーカー」https://dojin-support.net/ で作成しております ※別サイトでも連載中の作品になります

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

【完結】旦那の病弱な弟が屋敷に来てから俺の優先順位が変わった

丸田ザール
BL
タイトルのままです アーロ(受け)が自分の子供っぽさを周囲に指摘されて素直に直そうと頑張るけど上手くいかない話。 イーサン(攻め)は何時まで生きられるか分からない弟を優先してアーロ(受け)を蔑ろにし過ぎる話 【※上記はあくまで"あらすじ"です。】 後半になるにつれて受けが可哀想になっていきます。受けにも攻めにも非がありますが受けの味方はほぼ攻めしか居ないので可哀想なのは圧倒的受けです ※病弱な弟くんは誰か(男)カップリングになる事はありません 胸糞展開が長く続きますので、苦手な方は注意してください。ハピエンです ざまぁは書きません

処理中です...