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第3回
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僕はこんな話を聞いたことがある。輪廻転生という言葉があるが、人間は人間にしか生まれ変わることがないと言う話だ。
前世という話がある。今の自分は、生まれる前は別の個体で、その個体が死に、今の自分に生まれ変わったというのだ。
昔、小学生時代は、友達とふざけあって、お前の前世は糞にたかるハエだとか、フンコロガシだとか言い合った覚えがある。
人間は人間にしか生まれ変わらないという話は、そんな僕には衝撃な話であったと同時に、死んでも人間としてまた生まれることができるのだという安心感も生んでくれた。
僕は、いや、僕の意識はこのまま何処まで行くのか。遥か宇宙の彼方まで飛ばされて行くのか。
今、目の前には地球がある。もう僕の視野に地球が丸々納まるほど、地球から離れてしまったようだ。
初めて見る、外からの地球はキレイだった。思っていたよりも、海の青や陸の緑、雲の白は鮮やかだった。
何だか、少し得した気持ちにもなったが、僕の意識はここで止まるわけでもなく、どんどんと地球から離れていく。
あっという間に地球が豆粒ほどの大きさになってしまい、遂には見えなくなってしまった。
今更だが、僕は今、真空状態の宇宙にいる。いつも意識しながら呼吸をしていたわけじゃないが、今僕は自分が呼吸できていることを実感していた。
尚も僕は、後ろ向きのまま宇宙空間を凄いスピードで移動し続けている。
ふと、僕は思った。『天国』と『地獄』についてだ。僕と友人で結成した『死後の世界研究倶楽部』での最大のテーマだ。
天国だの地獄だの、きっと昔の人たちが自分たちを救うために作り上げた適当な逸話なのだろうと、かつて友人は言った。
だが、僕は反対の意見だった。一言で人間といっても、様々な人間がいる。見た目の話じゃない、中身の話だ。犯罪者はどうして犯罪者になるのか。変な話、普通に生きていたら人を殺そうとは思わないし、物を盗もうとも、女湯を盗撮しようとも思わない。僕は、彼らはいわゆる欠陥品のようなものなのだろうと考えている。
どんなに有名なメーカーだって、時には不良品を販売してしまう。これはしょうがないことだ。それの人間版が犯罪者なのだ。物じゃないから取り替えることもできないし、廃棄や修理もできない。だから、これもしょうがないことだ。
僕が許せないのは、犯罪者と同じ年齢まで生きて死んだ場合、その後に優劣が付かないことだ。僕は真面目に生きてきた。多分、これからも真面目に生きていくだろう。物も盗まないし、人を殺めたりもしないつもりだ。だから、僕が今日逮捕された犯罪者と同じ日に同じ年齢で死んだ時は、どうかその後に優劣を付けて欲しい。
僕は、それこそが『天国』と『地獄』であって、それは存在していると信じている。
だとすると、今はどうだ。真上に向かって進み続けているのだから、僕は天国に向かっているのだろうか。仮にこのまま僕が死んだ場合、お釈迦様のいる天国で、幸せに暮らすことができるのだろうか。
もし、そうだとしたら天国は宇宙の何処かにあるということになる。はたまた、宇宙というものを越えた、未知の空間があるのだろうか。
僕に、『楽しみ』という感情が生まれた。
さて、そんなことを考えている内に、僕は大きな星を二つほど越えていた。そして背後からは、赤色やオレンジ色の凄まじい光が差してきた。
僕は後ろを振り返った。
そこには、マグマの塊のような真っ赤な星があった。生きているような大きな火柱をいくつも纏う星は、今の距離でも蒸発しそうな程の熱を感じさせた。
勿論、それは想像であり実際には暑さなどは一切感じれない。ただ、視覚で熱まで感じることができるほど、それは迫力があった。
「これが太陽か。」
僕は基本インドアな性格なので、学校や友人と会う時以外は部屋に閉じ籠っている。無論、部屋で研究をしているわけだが。
運動もしない僕には、太陽の有難みというのをあまり考えたことも感じたこともなかった。
だが、この距離で太陽を見て、太陽を崇拝する世界の人々の気持ちが理解できた。
太陽は、間違いなく僕らの命の源だと、母なる存在だと感じた。
知らぬ間に僕は、身体の向きを変えていた。太陽に向かって進む体勢に変わっていたのだ。
そして、ふと左右を見渡すと、人の形をした透明に近いオレンジ色の光がいくつも太陽に向かって吸い込まれるように進んでいた。
僕もこの無数の光の内の一つのようだ。
先を行く光を凝らして見ると、太陽の火柱に捕まり、そのまま太陽の内側に溶け込むように消えていった。
天国は、太陽の中心にあるのだろうか。だとしたら、人類には永遠に天国を見つけることはできないだろうと、僕は思った。
いよいよ、僕も火柱の先端に触れられそうな距離まで近づいてきた。
目の前に、まるで蛸の足のような火柱が、僕に向かって伸びてきた。僕はむしろ自分から捕らえられに行った。炎の足が僕の身体の回りをぐるりと一周した。
肌に触れている感覚も、勿論熱さも感じることもなかった。
それから僕は、太陽の本体に吸い込まれていくような感覚で、内側へと入り込んでいった。
前世という話がある。今の自分は、生まれる前は別の個体で、その個体が死に、今の自分に生まれ変わったというのだ。
昔、小学生時代は、友達とふざけあって、お前の前世は糞にたかるハエだとか、フンコロガシだとか言い合った覚えがある。
人間は人間にしか生まれ変わらないという話は、そんな僕には衝撃な話であったと同時に、死んでも人間としてまた生まれることができるのだという安心感も生んでくれた。
僕は、いや、僕の意識はこのまま何処まで行くのか。遥か宇宙の彼方まで飛ばされて行くのか。
今、目の前には地球がある。もう僕の視野に地球が丸々納まるほど、地球から離れてしまったようだ。
初めて見る、外からの地球はキレイだった。思っていたよりも、海の青や陸の緑、雲の白は鮮やかだった。
何だか、少し得した気持ちにもなったが、僕の意識はここで止まるわけでもなく、どんどんと地球から離れていく。
あっという間に地球が豆粒ほどの大きさになってしまい、遂には見えなくなってしまった。
今更だが、僕は今、真空状態の宇宙にいる。いつも意識しながら呼吸をしていたわけじゃないが、今僕は自分が呼吸できていることを実感していた。
尚も僕は、後ろ向きのまま宇宙空間を凄いスピードで移動し続けている。
ふと、僕は思った。『天国』と『地獄』についてだ。僕と友人で結成した『死後の世界研究倶楽部』での最大のテーマだ。
天国だの地獄だの、きっと昔の人たちが自分たちを救うために作り上げた適当な逸話なのだろうと、かつて友人は言った。
だが、僕は反対の意見だった。一言で人間といっても、様々な人間がいる。見た目の話じゃない、中身の話だ。犯罪者はどうして犯罪者になるのか。変な話、普通に生きていたら人を殺そうとは思わないし、物を盗もうとも、女湯を盗撮しようとも思わない。僕は、彼らはいわゆる欠陥品のようなものなのだろうと考えている。
どんなに有名なメーカーだって、時には不良品を販売してしまう。これはしょうがないことだ。それの人間版が犯罪者なのだ。物じゃないから取り替えることもできないし、廃棄や修理もできない。だから、これもしょうがないことだ。
僕が許せないのは、犯罪者と同じ年齢まで生きて死んだ場合、その後に優劣が付かないことだ。僕は真面目に生きてきた。多分、これからも真面目に生きていくだろう。物も盗まないし、人を殺めたりもしないつもりだ。だから、僕が今日逮捕された犯罪者と同じ日に同じ年齢で死んだ時は、どうかその後に優劣を付けて欲しい。
僕は、それこそが『天国』と『地獄』であって、それは存在していると信じている。
だとすると、今はどうだ。真上に向かって進み続けているのだから、僕は天国に向かっているのだろうか。仮にこのまま僕が死んだ場合、お釈迦様のいる天国で、幸せに暮らすことができるのだろうか。
もし、そうだとしたら天国は宇宙の何処かにあるということになる。はたまた、宇宙というものを越えた、未知の空間があるのだろうか。
僕に、『楽しみ』という感情が生まれた。
さて、そんなことを考えている内に、僕は大きな星を二つほど越えていた。そして背後からは、赤色やオレンジ色の凄まじい光が差してきた。
僕は後ろを振り返った。
そこには、マグマの塊のような真っ赤な星があった。生きているような大きな火柱をいくつも纏う星は、今の距離でも蒸発しそうな程の熱を感じさせた。
勿論、それは想像であり実際には暑さなどは一切感じれない。ただ、視覚で熱まで感じることができるほど、それは迫力があった。
「これが太陽か。」
僕は基本インドアな性格なので、学校や友人と会う時以外は部屋に閉じ籠っている。無論、部屋で研究をしているわけだが。
運動もしない僕には、太陽の有難みというのをあまり考えたことも感じたこともなかった。
だが、この距離で太陽を見て、太陽を崇拝する世界の人々の気持ちが理解できた。
太陽は、間違いなく僕らの命の源だと、母なる存在だと感じた。
知らぬ間に僕は、身体の向きを変えていた。太陽に向かって進む体勢に変わっていたのだ。
そして、ふと左右を見渡すと、人の形をした透明に近いオレンジ色の光がいくつも太陽に向かって吸い込まれるように進んでいた。
僕もこの無数の光の内の一つのようだ。
先を行く光を凝らして見ると、太陽の火柱に捕まり、そのまま太陽の内側に溶け込むように消えていった。
天国は、太陽の中心にあるのだろうか。だとしたら、人類には永遠に天国を見つけることはできないだろうと、僕は思った。
いよいよ、僕も火柱の先端に触れられそうな距離まで近づいてきた。
目の前に、まるで蛸の足のような火柱が、僕に向かって伸びてきた。僕はむしろ自分から捕らえられに行った。炎の足が僕の身体の回りをぐるりと一周した。
肌に触れている感覚も、勿論熱さも感じることもなかった。
それから僕は、太陽の本体に吸い込まれていくような感覚で、内側へと入り込んでいった。
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