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第6節 畑 賢太郎 其の2
(1)
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10月15日(3日前)
ー 畑宅 ー
22時06分
畑は足立からきた、<呪いを掛けていい?>というメッセージに対して返信できずにいた。どういう意味だ、どう返したらいいんだ、と自室で悩んでいると、部屋のドアをノックする音がして、ドアがスゥッと開いた。
「おにぃちゃん?」
スマホを目の前に返事を考えることに集中しており、畑はノックにもドアが開いたことにも気づかなかった。
「ウォアッ!…な、なんだ栞菜(かんな)か。びっくりさせるなよ。」
「ちゃんとノックもしましたぁ。てか、帰ってるなら言ってよね。誰かいる気配だけしてたからびっくりしちゃったよ。」
「あぁすまんすまん。考え事しちゃってて。」
「さっきからスマホの画面なんか眺めちゃって、まさか恋のお悩みですか?」
ニヤニヤ迫ってくる栞菜に、畑は無言でスマホの画面を見せた。
「…なにこれ?呪っていいかって、この人冗談で言ってるんじゃないの?」
畑も普通ならそう思うだろうが、この差出人がオカルトが好きすぎて堪らない足立ということが、本気か冗談かわからずに困っていたのだ。
「ホント、“言葉”ってのは、内容よりも、誰が言ったかってのが一番重要だよなぁ。」
畑はぼそりと呟いた。
「あ~あ、ちょっとトイレ。」
畑はスマホをベッドに置き、トイレに用を足しに向かい、終わって部屋に戻ると栞菜が自分のスマホをいじくってる姿が目に入った。
「ちょ、おまっ。」
慌ててスマホを栞菜から取り上げ画面を見ると、足立からメッセージが来ていた。
<ありがとう!>
畑は、えっ、と思いひとつ前のメッセージに目を向けた。
<もちろんっすよ。呪いでもなんでもかけてぇ(笑)>
「てめぇ栞菜!なんてことすんだよ!」
あまりの怒りように栞菜は少々引いていた。
「いいじゃん、面白おかしく返しておけば!大体の女の子は嫌な気持ちにはならないよ。」
「だ、か、ら、恋の悩みじゃねぇっつーの!!」
兄の恋を応援するために悪気なくやったつもりの栞菜は、爆発が止まらない兄に嫌気がさし、乱暴な歩き方で部屋を出ていった。
「たくっ。」
畑はスマホをベッドに放り投げ、ベッドを背にフローリングに座り込んだ。落ち着いてみると、まぁ、どうしていいかずっと困り果てるよりは良いか、と少し妹に感謝した。次の瞬間…
ハッと、畑は目を覚ました感覚がした。
特に眠かった感覚も寝てしまったという記憶もないが、急に目の前の画面が切り替わった気がした。不思議な感覚に、すぐに時計を見たが、多分さっきとほぼ同じ時間帯だったので、知らぬ間に寝落ちし、首がガクッとなった拍子に起きたんだと考えた。
顔でも洗って頭をスッキリさせようと洗面所に向かい、明かりを付けた。すると、目の前の鏡に映っている自分の顔が落書きだらけなのに気がついた。
「ウォアッ!なんじゃこりゃあ!」
再び独特な驚いたリアクションをすると、慌てて栞菜が洗面所にやってきた!
「お兄ちゃん、どしたの!?………プッ、ハハハ、何やってんの!?あ、私と気まずくなったから?派手にやりすぎだよ!」
一瞬栞菜がやったんじゃないかと畑は考えたが、その選択肢が一瞬で消えた今、混乱しか残っていなかった。とりあえず部屋に何かヒントがあるんじゃないかと考え、洗面所の入口に立っている栞菜をすり抜け部屋に戻った。すると、ベッドの上のスマホがメッセージ受信を表示していたのが見え、慌てて掴んだ。
<鏡見てみて!>
畑は一瞬時が止まった気がした。一旦深呼吸し、冷静にメッセージを返した。
<この落書き、足立さんの仕業ですか?>
すぐに返信が来た。
<え!ホントに!?やった☆呪い成功!>
畑はわけがわからなかった。畑が返信するまえにまたメッセージが届いた。
<呪いの機械が出来ちゃった。インターネットってすごいね。>
「呪いの…機械?」
再びメッセージが届いた。
<あ、そうそう。明日の取材さ、私も一緒に行くよ。予定だった打ち合わせが無くなっちゃって、班長に聞いたら一緒に行ってあげてくれって言われたから。時間と集合場所だけ教えて。>
さっきの呪いの機械の話については一切触れなくなり、クエスチョンマークだらけの畑は放置された感覚だった。
<あの、呪いの機械って?>
<明日教えます。ねぇ、時間と場所。>
畑は場所と時間のメッセージを送ると、よろしく、おやすみ、というメッセージが来た。
「なんなんだ一体。」
急な展開と、謎が多い状況に恐怖と混乱で頭がいっぱいの畑は、ベッドに横たわり、ストレス発散のため、手足をジタバタと乱暴に振り回し、ベッドに八つ当たりをした。
栞菜は、慌てふためく様子の兄を、心配そうにドアの隙間から見ていた。
「お兄ちゃん、好きな人と上手くいかなかったのかな…。」
ー 畑宅 ー
22時06分
畑は足立からきた、<呪いを掛けていい?>というメッセージに対して返信できずにいた。どういう意味だ、どう返したらいいんだ、と自室で悩んでいると、部屋のドアをノックする音がして、ドアがスゥッと開いた。
「おにぃちゃん?」
スマホを目の前に返事を考えることに集中しており、畑はノックにもドアが開いたことにも気づかなかった。
「ウォアッ!…な、なんだ栞菜(かんな)か。びっくりさせるなよ。」
「ちゃんとノックもしましたぁ。てか、帰ってるなら言ってよね。誰かいる気配だけしてたからびっくりしちゃったよ。」
「あぁすまんすまん。考え事しちゃってて。」
「さっきからスマホの画面なんか眺めちゃって、まさか恋のお悩みですか?」
ニヤニヤ迫ってくる栞菜に、畑は無言でスマホの画面を見せた。
「…なにこれ?呪っていいかって、この人冗談で言ってるんじゃないの?」
畑も普通ならそう思うだろうが、この差出人がオカルトが好きすぎて堪らない足立ということが、本気か冗談かわからずに困っていたのだ。
「ホント、“言葉”ってのは、内容よりも、誰が言ったかってのが一番重要だよなぁ。」
畑はぼそりと呟いた。
「あ~あ、ちょっとトイレ。」
畑はスマホをベッドに置き、トイレに用を足しに向かい、終わって部屋に戻ると栞菜が自分のスマホをいじくってる姿が目に入った。
「ちょ、おまっ。」
慌ててスマホを栞菜から取り上げ画面を見ると、足立からメッセージが来ていた。
<ありがとう!>
畑は、えっ、と思いひとつ前のメッセージに目を向けた。
<もちろんっすよ。呪いでもなんでもかけてぇ(笑)>
「てめぇ栞菜!なんてことすんだよ!」
あまりの怒りように栞菜は少々引いていた。
「いいじゃん、面白おかしく返しておけば!大体の女の子は嫌な気持ちにはならないよ。」
「だ、か、ら、恋の悩みじゃねぇっつーの!!」
兄の恋を応援するために悪気なくやったつもりの栞菜は、爆発が止まらない兄に嫌気がさし、乱暴な歩き方で部屋を出ていった。
「たくっ。」
畑はスマホをベッドに放り投げ、ベッドを背にフローリングに座り込んだ。落ち着いてみると、まぁ、どうしていいかずっと困り果てるよりは良いか、と少し妹に感謝した。次の瞬間…
ハッと、畑は目を覚ました感覚がした。
特に眠かった感覚も寝てしまったという記憶もないが、急に目の前の画面が切り替わった気がした。不思議な感覚に、すぐに時計を見たが、多分さっきとほぼ同じ時間帯だったので、知らぬ間に寝落ちし、首がガクッとなった拍子に起きたんだと考えた。
顔でも洗って頭をスッキリさせようと洗面所に向かい、明かりを付けた。すると、目の前の鏡に映っている自分の顔が落書きだらけなのに気がついた。
「ウォアッ!なんじゃこりゃあ!」
再び独特な驚いたリアクションをすると、慌てて栞菜が洗面所にやってきた!
「お兄ちゃん、どしたの!?………プッ、ハハハ、何やってんの!?あ、私と気まずくなったから?派手にやりすぎだよ!」
一瞬栞菜がやったんじゃないかと畑は考えたが、その選択肢が一瞬で消えた今、混乱しか残っていなかった。とりあえず部屋に何かヒントがあるんじゃないかと考え、洗面所の入口に立っている栞菜をすり抜け部屋に戻った。すると、ベッドの上のスマホがメッセージ受信を表示していたのが見え、慌てて掴んだ。
<鏡見てみて!>
畑は一瞬時が止まった気がした。一旦深呼吸し、冷静にメッセージを返した。
<この落書き、足立さんの仕業ですか?>
すぐに返信が来た。
<え!ホントに!?やった☆呪い成功!>
畑はわけがわからなかった。畑が返信するまえにまたメッセージが届いた。
<呪いの機械が出来ちゃった。インターネットってすごいね。>
「呪いの…機械?」
再びメッセージが届いた。
<あ、そうそう。明日の取材さ、私も一緒に行くよ。予定だった打ち合わせが無くなっちゃって、班長に聞いたら一緒に行ってあげてくれって言われたから。時間と集合場所だけ教えて。>
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<明日教えます。ねぇ、時間と場所。>
畑は場所と時間のメッセージを送ると、よろしく、おやすみ、というメッセージが来た。
「なんなんだ一体。」
急な展開と、謎が多い状況に恐怖と混乱で頭がいっぱいの畑は、ベッドに横たわり、ストレス発散のため、手足をジタバタと乱暴に振り回し、ベッドに八つ当たりをした。
栞菜は、慌てふためく様子の兄を、心配そうにドアの隙間から見ていた。
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