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第2節 畑 賢太郎
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畑の言葉で、話題を戻し、足立がお茶を一口飲んで話し始めた。
「あ、そうそう。結局呪いってさ、さっき話した心霊写真と事故みたいなもんなのよ。私の中では心霊写真が100パー原因だと思ってる、つまり霊的なものが働いたってことね。でも、あなたみたいにオカルト信じない人は偶然だろって考えるわよね。当時は私もだけど、その友人もかなり怖がってたわ、もしかしたら自分たちに悪いことが起こるかもしれないって。そんな考えで生活してると、いつもは注意してる交差点とか踏切とかも、要らぬとこに意識がいっちゃって注意散漫になるの。霊的なものじゃなくても、起こるべくして起きた事故だったのよ。」
畑は足立の話を理解したようなしてないような、何だかよくわからない気持ちだった。
「それって、、、」
足立は、そんな畑の表情を読み取って、もう一度説明し始めた。
「えーと、つまり一種の暗示かなぁ。同じ類いだと思うのよね、呪いって。私としては、本当に呪いってものがあると信じたいけど、オカルト信じない人向けに話すわね。」
畑は頷いきながら聞き入った。足立が続けた。
「まず呪われるってことは、自分がそれなりのことしちゃってるわけじゃん。仮に自覚がなくても、何か嫌がらせされたりすれば、悪いことしたのかなぁって気づくと思うし。それで方法は色々あるだろうけど、何か自分に悪いことが起きるかもしれないって凄く思わせることで、一種の暗示をかけるみたいな。」
つまり、呪いが直接じゃなく、自分に悪いことが起きると思い込ませることで、いつもと違う感情な行動を取らせて、偶然かもしれないが本当に悪いことが起きる、そういう意味だと畑は理解した。だが、畑は腑に落ちなかった。
「なんとなくは言ってることわかりますが。でも、今回の事件は明らかに事故じゃないんですよ。」
「確かに今回のはねぇ。自分で腹に包丁刺して死んだんだっけ。」
「朝の会議の後に今回の事件の最新記事を真剣に見直したんすよ。なんか最初は自殺で片付くはずだったんですけど、警察署に変な女が急にやってきて、自殺で報道されてる被害者は自分が殺したんだって言い切ったらしいですよ。その内容が呪殺だったそうです。」
畑はそう言うと、鞄から数種類の新聞記事の切り抜きをテーブルの上に並べた。足立はその記事を徐に手に取った。
「その変な女が被告人の桐生(きりゅう)か……呪殺なんて、よく警察が信じたわね。」
「勿論最初は真剣に扱わなかったみたいで、被害者の自殺で片付けるはずだったようです。でも桐生が呪いのメカニズムを語り出し、逮捕して欲しいと懇願したようです。そのメカニズムが余りに詳細で、警察組織の科学部署が検証してるみたいですよ。」
「なんか話を聞けば聞くほど現実離れした話よね。」
「そうですよね。」
畑が徐に店内に目を向けるとカウンター席は満席になっていた。話に集中してて全く気づかなかったのだ。
カウンター内の店主は畑の目線を気にし、カウンター内のテレビが点いていないことに気付いて電源を入れた。
「すまんね、兄ちゃん。電源入れ忘れてたよ。」
「あ、いえ、ありがとうございます。」
そんなつもりは更々なかった畑だが、とりあえず礼を言った。テレビは調度昼時のニュース番組が流れており、今回の事件の特集が組まれていた。
足立もテレビに釘付けとなり、テレビを見ながら呟いた。
「桐生って女性、綺麗だよね。」
「え?犯人がですか?」
「うん。なんか呪いって聞くと、丑の刻参りみたいなの想像しちゃうから、髪も長くてボサボサでみたいなの考えちゃってたから。」
確かにテレビ画面に映っている被告人の桐生朱美(きりゅうあけみ)はショートカットが似合っており、化粧もしており、スタイルも所謂モデル体型であった。確かに綺麗な女性だった。
「綺麗な女性なりの悩みがあったんすかね。」
「…会ってみたいなぁ、桐生さんに。」
足立がぼそっと呟いた。おそらく心の中だけの言葉にしときたかったのだろう。ポロっと口から出てしまった事に気づいた足立が慌てて続けた。
「あ、いや、冗談よ、冗談。いや、まぁオカルト好きとしては、桐生が警察に説明した内容が気になるなぁって。」
畑は足立の発言に少し驚いたが、リアクションに困ったので、普通を装って返事をした。
「公表されてませんからね。あ、でも、ネット上には、推測のメカニズムがいっぱい出てますよ。」
畑はスマホの検索結果画面を足立に向け、指で画面をスライドさせて、結果数の多さを見せ付けた。
「試す人とかいるだろうね。あ、そうだ、実は今日ランチに誘ったのは、オカルトの話がしたかったのもあるんだけど、本当は一つお願いがあってさ。」
「え!何ですか!?」
畑は勝手に自分に都合の良い願い事だと思いドキドキしてしまった。
「実は私、大学時代にオカケンに入ってて、今はそのOBで作ったサークルのリーダーしてるのね。」
畑は一瞬何のことかわからなかった。オカケン……オカ…ルト、あ、オカルト研究部かと頭の中で処理した。
「本当に好きなんですね。どんな活動してるんですか?」
「活動内容はまぁ心霊スポット行ったり、UFOを呼び寄せる儀式を研究したり、あまり大学時代と変わらないかな。」
ガチな内容に畑は一瞬笑いそうになったが何とか堪えた。
「でね、最近まで男の子もいたんだけど、田舎に帰ることになって抜けちゃって。変な話、重いもの持ってもらったり、運転してもらったりで凄い助かってたの。それで、畑くんがもし興味があったら是非サークルに入ってくれないかな?って。」
「がっつりパシリ的なポジションっすね。」
畑は思ったことをつい口走ってしまった。
「ハハハ、確かに。でも、これで畑くんがオカルトに興味もってくれて、いずれは私みたいにオカルト信者になってくれたら嬉しいと思ってるよ。畑くん話しやすいし、距離が近づいたら嬉しいなぁ。」
満面の笑みで畑の目を見て話す足立。内容が内容だが、畑はその足立の笑顔に満足してしまい、即答してしまった。
「と、取り敢えず体験入部的な感じなら。」
「本当!?ありがとう、嬉しい。じゃあ連絡先も交換しないとね。」
そういうと足立はメッセージアプリのIDを畑のスマホに記録させた。今まで仕事上の付き合いで携帯番号のみしか知らなかったし、メッセージは仕事で与えられたメール環境でしかやり取りしていなかった為、メッセージアプリで一気に距離が縮まった気がして、畑はとても嬉しかった。
「次の集まりが決まったら連絡するね。ふふ。」
二人の様子をカウンター内の店主がニヤニヤしながら見守っていた。
「あ、そうそう。結局呪いってさ、さっき話した心霊写真と事故みたいなもんなのよ。私の中では心霊写真が100パー原因だと思ってる、つまり霊的なものが働いたってことね。でも、あなたみたいにオカルト信じない人は偶然だろって考えるわよね。当時は私もだけど、その友人もかなり怖がってたわ、もしかしたら自分たちに悪いことが起こるかもしれないって。そんな考えで生活してると、いつもは注意してる交差点とか踏切とかも、要らぬとこに意識がいっちゃって注意散漫になるの。霊的なものじゃなくても、起こるべくして起きた事故だったのよ。」
畑は足立の話を理解したようなしてないような、何だかよくわからない気持ちだった。
「それって、、、」
足立は、そんな畑の表情を読み取って、もう一度説明し始めた。
「えーと、つまり一種の暗示かなぁ。同じ類いだと思うのよね、呪いって。私としては、本当に呪いってものがあると信じたいけど、オカルト信じない人向けに話すわね。」
畑は頷いきながら聞き入った。足立が続けた。
「まず呪われるってことは、自分がそれなりのことしちゃってるわけじゃん。仮に自覚がなくても、何か嫌がらせされたりすれば、悪いことしたのかなぁって気づくと思うし。それで方法は色々あるだろうけど、何か自分に悪いことが起きるかもしれないって凄く思わせることで、一種の暗示をかけるみたいな。」
つまり、呪いが直接じゃなく、自分に悪いことが起きると思い込ませることで、いつもと違う感情な行動を取らせて、偶然かもしれないが本当に悪いことが起きる、そういう意味だと畑は理解した。だが、畑は腑に落ちなかった。
「なんとなくは言ってることわかりますが。でも、今回の事件は明らかに事故じゃないんですよ。」
「確かに今回のはねぇ。自分で腹に包丁刺して死んだんだっけ。」
「朝の会議の後に今回の事件の最新記事を真剣に見直したんすよ。なんか最初は自殺で片付くはずだったんですけど、警察署に変な女が急にやってきて、自殺で報道されてる被害者は自分が殺したんだって言い切ったらしいですよ。その内容が呪殺だったそうです。」
畑はそう言うと、鞄から数種類の新聞記事の切り抜きをテーブルの上に並べた。足立はその記事を徐に手に取った。
「その変な女が被告人の桐生(きりゅう)か……呪殺なんて、よく警察が信じたわね。」
「勿論最初は真剣に扱わなかったみたいで、被害者の自殺で片付けるはずだったようです。でも桐生が呪いのメカニズムを語り出し、逮捕して欲しいと懇願したようです。そのメカニズムが余りに詳細で、警察組織の科学部署が検証してるみたいですよ。」
「なんか話を聞けば聞くほど現実離れした話よね。」
「そうですよね。」
畑が徐に店内に目を向けるとカウンター席は満席になっていた。話に集中してて全く気づかなかったのだ。
カウンター内の店主は畑の目線を気にし、カウンター内のテレビが点いていないことに気付いて電源を入れた。
「すまんね、兄ちゃん。電源入れ忘れてたよ。」
「あ、いえ、ありがとうございます。」
そんなつもりは更々なかった畑だが、とりあえず礼を言った。テレビは調度昼時のニュース番組が流れており、今回の事件の特集が組まれていた。
足立もテレビに釘付けとなり、テレビを見ながら呟いた。
「桐生って女性、綺麗だよね。」
「え?犯人がですか?」
「うん。なんか呪いって聞くと、丑の刻参りみたいなの想像しちゃうから、髪も長くてボサボサでみたいなの考えちゃってたから。」
確かにテレビ画面に映っている被告人の桐生朱美(きりゅうあけみ)はショートカットが似合っており、化粧もしており、スタイルも所謂モデル体型であった。確かに綺麗な女性だった。
「綺麗な女性なりの悩みがあったんすかね。」
「…会ってみたいなぁ、桐生さんに。」
足立がぼそっと呟いた。おそらく心の中だけの言葉にしときたかったのだろう。ポロっと口から出てしまった事に気づいた足立が慌てて続けた。
「あ、いや、冗談よ、冗談。いや、まぁオカルト好きとしては、桐生が警察に説明した内容が気になるなぁって。」
畑は足立の発言に少し驚いたが、リアクションに困ったので、普通を装って返事をした。
「公表されてませんからね。あ、でも、ネット上には、推測のメカニズムがいっぱい出てますよ。」
畑はスマホの検索結果画面を足立に向け、指で画面をスライドさせて、結果数の多さを見せ付けた。
「試す人とかいるだろうね。あ、そうだ、実は今日ランチに誘ったのは、オカルトの話がしたかったのもあるんだけど、本当は一つお願いがあってさ。」
「え!何ですか!?」
畑は勝手に自分に都合の良い願い事だと思いドキドキしてしまった。
「実は私、大学時代にオカケンに入ってて、今はそのOBで作ったサークルのリーダーしてるのね。」
畑は一瞬何のことかわからなかった。オカケン……オカ…ルト、あ、オカルト研究部かと頭の中で処理した。
「本当に好きなんですね。どんな活動してるんですか?」
「活動内容はまぁ心霊スポット行ったり、UFOを呼び寄せる儀式を研究したり、あまり大学時代と変わらないかな。」
ガチな内容に畑は一瞬笑いそうになったが何とか堪えた。
「でね、最近まで男の子もいたんだけど、田舎に帰ることになって抜けちゃって。変な話、重いもの持ってもらったり、運転してもらったりで凄い助かってたの。それで、畑くんがもし興味があったら是非サークルに入ってくれないかな?って。」
「がっつりパシリ的なポジションっすね。」
畑は思ったことをつい口走ってしまった。
「ハハハ、確かに。でも、これで畑くんがオカルトに興味もってくれて、いずれは私みたいにオカルト信者になってくれたら嬉しいと思ってるよ。畑くん話しやすいし、距離が近づいたら嬉しいなぁ。」
満面の笑みで畑の目を見て話す足立。内容が内容だが、畑はその足立の笑顔に満足してしまい、即答してしまった。
「と、取り敢えず体験入部的な感じなら。」
「本当!?ありがとう、嬉しい。じゃあ連絡先も交換しないとね。」
そういうと足立はメッセージアプリのIDを畑のスマホに記録させた。今まで仕事上の付き合いで携帯番号のみしか知らなかったし、メッセージは仕事で与えられたメール環境でしかやり取りしていなかった為、メッセージアプリで一気に距離が縮まった気がして、畑はとても嬉しかった。
「次の集まりが決まったら連絡するね。ふふ。」
二人の様子をカウンター内の店主がニヤニヤしながら見守っていた。
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