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3歳

うちのお庭は森??

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晴れた日には出るお庭は、いくつかあるけど、
一番大きな庭だと聞いている所はあまり手入れされている感じがしない上に、
どこまであるのかわからないくらい広い。

「ねー、イシュトー」

「どうしました?」

「いったいここ、おくってどこまでなんだろうね?」

普段は中庭のようなあまり大きくない庭で遊んでいるのだけど、
そこは鑑定が一通り終わってしまい、飽きてしまった。

そこで、一番大きい庭だと聞いたのでやってきてみたのだが、
庭、というには手が入っていない気がする。
まぁ、飽きちゃった庭も、大して手が入っていなかったようだったけど・・・

庭、というより、森と言った方がしっくりくるかもしれない。

「庭と聞いていますから、そこまで大きくはないでしょうが・・・」

「おくにいってみていい?」

「行ってみましょうか」

どうやら、イシュトも興味があったらしい。

手をつないでどんどん奥に入っていく。

イシュトはいつの間にか手にしていた短剣で、時々木に傷をつけている。
帰る時の目印かな?
なんか、その対応、すでに庭じゃないよね???

庭は奥に行くにつれて鬱蒼としており、
しばらく歩くと庭、というより森のような風景に見える。

「なんか、ひょっこりくまにでもであいそうな・・・」

「さすがに、それはないと思いますが・・・」

思わずつぶやいた独り言に、律儀に返事を返すイシュト。

いや、それは私もそう思うんだけどさ。
そんなに歩いた感覚ないのに、すでに周囲が薄暗くなってきてる時点でやばくないかい?
他の庭に植えてあった木なんかとあまり変わらないようだが、
微妙に薄暗いからのんびり鑑定~って気分になれない・・・。
ただ、さすがに危険察知のために周囲を警戒しているが、それには引っかかってくるものはない。

「少し休憩しましょうか」

座るのによさそうな木を見つけ、イシュトが座るとお膝の上に乗せられる。

そよそよと、肌に当たる風は気持ちがいい。

「足は痛くありませんか?」

「うん、だいじょうぶだよ」

イシュトの膝から、何気なしに周囲を見渡す。

ふと、視界に気になるものが視えた。

「イシュト、ひとが、いるよ」

気になった方をよく見ると、どうも、人が倒れている。

イシュトは私が視ている方向を見ながら身構える。

「きけんがあるわけではなさそうだけど・・・」

「そのようですが、」

2人で鑑定するも、特に危険人物というわけでもなさそう。
特に目立った怪我などもなさそうだし、生きてるみたいだけど、動かない。

「放っておくわけにもいきませんね・・・」

「べつにはんざいしゃってわけでもなさそうだし、
 つれてかえれるならつれてかえりたいけど・・・」

そろそろと近づく。
うつぶせに倒れているため、イシュトが仰向けに返す。
ぱっと見白いひげが胸辺りまで伸びていて、おじいさんのよう。
髪も白く見える。

脈を取っても、特に異常はない。
呼吸も、ゆっくりだけど安定している。
鑑定によると、疲労から倒れているようだった。

「背負っていきましょうか。
 ネージュ様は私の前を歩いてくださいね」

「あ、ちょっとまってね」

お母様から預かっていたイヤリングを手に握る。

お庭で遊んでたら人を見つけました。
危険人物じゃないみたいだから、連れて帰りたいです。
動かないので、寝台の準備をお願いしたいです。

イヤリングに念じると届く、と言われて渡されたので、
試しにやってみた。

「おかあさまからわたされたの。ねんじるととどくよ、っていわれたから、
 ひとをつれてかえるってねんじてみたの」

「・・・いいんでしょうかね?」

「おこられるときは、いっしょにおこられてね?」

イシュトの顔が少しひきつった笑いになる。

「2人の鑑定で危険がないと出たのを言い訳にしますか・・・」

本当は鑑定だけに頼るのは良くない、とあんまり人は鑑定しないように言われているし、
しないようにしていたんだけどね、2人とも。
人を見る目を養えなくなるから、というお父様の言で。

「へたしたらそれもあわせてごめんなさいになるかもね?」

イシュトが苦笑いをして、おじいさんを背中に乗せようとするものの、
意識のない人って、ぐにゃぐにゃしてて、イシュト一人では難しい。
微力ながらも私もお手伝いして、2人でなんとかイシュトの背中におじいさんを乗せる。
イシュトが木に入れた傷を頼りに、家の方へと戻る。

小さそうに見えたおじいさんだが、
まだ成長途中のイシュトとほとんど同じくらいのようで、
背中に乗せて歩いているものの、意識のない人は、重い。
うまく背中に乗せて歩いてはいるものの、かなりゆっくりとしたペース。
私が傷をつけた木を見つけると止まり、イシュトが近づいてくると次の木に移動する。
そうやって、ゆっくりと歩き、木が開けて建物がみえるところまで来る頃にはイシュトの息が上がっていた。

イシュト、結構鍛えてるのにね?
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