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2人の婚約破棄は特に何か揉めるということもなく、スムーズに認められた。

両家の親も父親同士は嘆いていたものの、
母親同士はやっぱりそうよね、といった風で、
両家の父親を慰めていた。

アリアは破棄を認める代わりにエリクスに恋の顛末だけはきっちり話をするようにとだけ、
条件をつけたのだが・・・

学園内で自由に使えるカフェテリアには
アリアの前にエリクスと栗色の髪フワフワとした髪を結い、紺色にも近い青い瞳をキラキラさせた可愛らしい女の子が立っている。

学園が終わり、しばらくたっているため利用している人はアリアたちの他には誰もいない。

「アリア嬢、紹介するよ
 マリファ・レーベン子爵令嬢だ」

「初めまして、マリファ・レーベンです」

「初めまして、アリア・ボルトンですわ」

2人ともマナーに則った挨拶を交わすと、席に着く。

「エリクス様、私はあなたからの話だけでかまわなかったのですよ?」

目線にて何で元婚約者に紹介してるんだと非難を込める。

「申し訳ありません、ボルトン伯爵令嬢、わたしがお話をしてみたいとお願いしたのです」

「私と?」

「はい!」

貴族令嬢としては些かはきはきとしすぎる返事に面食らうアリア。

「学園一厳しいと言われるマナーの講師のエマ先生より伺いました、
 現在学園の生徒内では一番美しい所作をされるとのことで・・・」

動揺を隠すように口元を手で隠し、エリクスの方を見る。

普通に見ただけでは冷静なように見えるが、幼馴染はすぐに動揺していることを見抜き、笑う。

「どうやら、大きな猫をかぶりすぎてしまっていたようだね、アリア嬢?」

「・・・本当に、そのようね。驚きだわ。
 ただ、エリクス様の好みにも驚きでしたけど」

隠した口角がニヤリ、と上がる。

「わたし、てっきりエリクス様はグラマラスなお姉さまがタイプかと思っておりましたけど・・・
 こんなに可愛らしい方がよろしかったなんて」

「!?」

今度はエリクスの固まる番であった。

「あら、気付かれていなかったと思っていますの?
 一時期私の隣で私よりもお姉様な方々の中でも妖艶な方を目で追いかけていたこと」

オホホ、とでも付け足しそうなアリア。

「あ、あれはその・・・」

「ええ、数年前のことですものね。
 私がこんな性格だからか、守ってあげたい方を好きになったようで」

言い訳しようとしたエリクスにハイハイ、とあしらうアリア。

「マリファ様、このような男ですけど、本当によろしいのですか?
 私達、家同士の婚約でしたし、特別な男女の情などなかったのですけど・・・」

いきなり話を振られたマリファはポカン、とした後、アリアの真剣な目を見て、笑った。

「ボルトン伯爵令嬢、思ったよりもハッキリと物をおっしゃいますのね」

「ええ、マナーや所作を褒められるために勘違いされやすいみたいですけどね、
 この外見もどうやら一因らしいですけど。
 先程、エリクス様がおっしゃったように猫も被ることもありますので、余計でしょうね
 元々の性格は変えれないものでしてよ、幻滅されました?」

「いいえ、とても親しみやすくてうれしいですわ」

ニコニコと笑うマリファはフワフワとした感じがさらに強まる。

「・・・エリクス様、あなたがマリファ様に惚れたのが、わかったような気がします。
 マリファ様、私のことはアリアとお呼びになって」

「まぁ、よろしいのですか?」

「よろしくなければ言っておりませんわ。
 もしエリクス様がおいたをされた時には必ずおっしゃって。
 内容次第では両親も味方につけてしまいますので」

「君は私がなにかするとでも思っているのか?!」

「私と婚約中にしでかしたアレやコレを忘れたとは言わせなくってよ。
 ご自身の胸に手を当てて考えていただきたいものね。
 相手が私ではなくマリファ様であれば大丈夫でしょうけど」

何を言ってもアリアに言い負かされるエリクスは、不貞腐れる。

2人の様子にマリファはクスクスと笑う。

「伺ってはおりましたが、本当に仲がよろしいのですね」

「「腐れ縁(だよ)でしてよ」」

「どちらかといえば、兄弟のように育った感じだね」

「ええ、出来がいいのか悪いのかわからない弟みたいな感じですわね」

「俺の方が先に生まれてるんだけど?」

「あら、頼りがいがあるのかないのかはっきりしないのに兄貴面したがるなんて」

「サラリと俺の事こき下ろすよね?アリア嬢は」

「人聞きの悪い言い方ですこと。事実を申し上げただけですわ
 ・・・でも、安心しましたわ」

アリアは大きく息を吐いた。

「これで私も新しい相手を探すことに集中できそうですわ」

「アリア様、よろしければまた私とお話しをする機会を頂けませんか?」

ニコニコと話すマリファにアリアは驚く。

「・・・よろしいですけど、元婚約者とお話しして楽しいかしら?」

「アリア様とは色々な話をしてみたいのですわ。
 先程からお二人のやり取りを聞かせていただいたので、逆に安心しておりますの」

「では、また日を改めて、ということにしましょうか?」

話をしだした時にはまだ青かった空は、赤く染まりつつあった。

「はい、よろしくお願いいたします」



婚約破棄、お受けいたしますので、お幸せにね。
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