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最悪、化け物扱いされるかと思ったけど、
二人とも案外冷静で、こっちがびっくり。
お父様いわく、オブライエン家はたまにそういった人が生まれるらしい。
そういった人は特殊な能力を持った人が多いので、
下手に中央にいるよりはとわざと辺境に領地を賜っているらしい。
お母様いわく、自分は子だくさん貧乏伯爵家の二女で、
下に8人も弟妹がいる。
赤ちゃんの世話は慣れていて、なんかこの子普通の赤ちゃんとは違うなー、
って感じてたから、どう違うのかがわかってスッキリしたわ、とのこと。
あっさりしすぎてびっくりしたよ。

それと、二人との話の中で私が鑑定眼を持っていることに気づいた。
普通、鑑定眼は持っている本人の知識量にかかわってくるらしいけど、
私の場合、前世の記憶があるから知識はそれも込みの鑑定であるってことも発覚。

それから、お父様はお母様が身重であることから、私に構うことができないって事を理由にして、領地を見回る際には必ず私を連れていった。
それは、スフェンが生まれてからもしばらくは続き、
スフェンが大きくなれば、一緒に行くようになった。

領地は広く、山もあれば海もあり、比較的暖かい地域もあれば冬には雪で覆われる地域もあった。
作っている作物を土地に合うものに少し変えたり、
今まで捨てていたようなものを活用していったり、
活用について色々調べていくうちに、
商会を一つ立ち上げることになった。
領としての改革に関してはお父様、
商会に関することは副会長を前面に押し出し、
私はできるだけ関わっていないように見せかけた。

オブライエン領は今までより豊かになり、
領としても商会としても少し落ち着いてきた時。
領内に流行病が襲った。
黒死病、と呼ばれていたが、
日本でのペストと同一ではないものらしかった。
治療法もこの時確認されていたが、
領内には病気の進行を遅らせるために必要な薬草は豊富にあったものの、
病気を治すための薬草がなく、
あるのは隣接する国家直領地か、隣国だった。
お父様は国王に連絡を取るため王都へ向かおうとしたものの、
王家はオブライエン領から最短で行けるルートにかかる橋を落とした。
病の拡大を防ぐため、という名目で。

他のルートを通って王都を目指す選択肢もあったものの、
隣国のリスダール国から援助の申し入れがあったため、
お父様はそちらへと向かった。
この時、私は10歳。スフェン、8歳。
そして、間が悪く、お母様は双子を妊娠中で、
安定期ではあったものの、双子。
スフェンの臨月間近、といったぐらいのお腹をしていた。
そのため、私はお母様とスフェンを別邸へ隔離し、
黒死病の治療の指揮を執った。

幸いなことに早くから病気や怪我に関する研究を進めていたため、
知識としては頭に入っていたし、
商会をフル活用して正確な情報や物資を届け、
お父様が戻るまで、病気の進行を遅らせる薬を感染者に飲ませ続けた。

お父様はリスダール国から薬草を山ほど持って帰ってきた。
見返りは、オブライエン領での薬学、医学の知識。
ここ数年で周囲の領はもとより、近隣諸国よりも進んでいたらしい。
黒死病終息後、リスダール国より国でも十指にはいるような薬師たちが派遣されてくるようになったらしい。

というのも、
私は話でしか聞いていないから。

黒死病が終息して、落ち着いた頃。
お父様がリスダール国へ薬草のお礼とともにこれからの話をしに出向いている最中。
王家からやってきた使者がいた。
第一王子ジルコン・カルセドニと私、ネージュ・オブライエンとの婚約。
この婚約を了承しない場合は反逆の意志ありとみなす。
簡単に言えばこういうことだった。

黒死病の今までの流行で最も死者を出さなかったためか、
寝る間を惜しんで走り回っていた私は
周囲から聖女だの女神だのと崇められていたようです。

その娘を王妃にするなら文句がないだろう、という王家の態度。
簡単に切り捨てようとしておきながら、
お父様が不在の時を狙って、早く答えを出せとせっついてきやがった。
腹が立ったので、追い返したよ。
ただ、その時点で黒死病が終息しただけの状態。
その状態では抵抗もなにもできない。
とりあえず、お父様には即連絡をしたけど・・・
まぁ、その時の周囲の殺気立った様子はさすがにいまでも鳥肌モノだね。

そして、私は11歳、カルセドニ国第一王子ジルコン・カルセドニ13歳の時
婚約が成立した。

そんな婚約。どう考えても歩み寄れません。

いやー、ほっとした。
肩の荷が降りた。

つらつらと考えてたら、
そりゃお父様も嬉々として飛竜でお迎えに来てくれるよね!
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