上 下
13 / 36
本編

6話 ギルヴェルトとの契約

しおりを挟む




「クリスティアに…私と同じ転生者がいるのですか…?」

まさか自分の他にも転生者がいるとはリリゼットは思ってもなかった。

「その転生者の名はなんというのですか…?」

「依頼人の名前はまだ言えない。そういう取り決めだったからな」

『聖天使アリシア』でのギルヴェルトは暗殺者だったが諜報員の場合でも依頼人の名前は簡単に明かさないようだ。

だが今までの彼の言葉から相手の性別が女性なのは確か。

「ところお前の中でクリスティアはどのような国だと思っている?」

「ガルヴァンから遠く離れた場所にあって未だに戦争の傷跡が残る国というイメージですね…」

クリスティアという国は『聖天使アリシア』の派生ゲーム『クリスティアの乙女』の舞台にもなった国。

リリゼットがこの世界に転生して分かったことだがこの世界にはガルヴァン、クリスティア、ユーフォニムの3国が大国として存在している。

その中でクリスティアは10年以上前に魔法石が採掘される鉱山を巡った戦争でどうにか鉱山は守りきったが国は疲弊し3国の中で一番発展が遅れている。

そして場所もガルヴァンの隣国ユーフォニムよりかなり離れた位置にある。

「そういわれているが異世界人の魂を持つ転生者がクリスティアに生まれてから国は文明が恐ろしいほど進んだ」

現在クリスティアの転生者が開発、発案した物の情報が他国に漏れていないだけで衛生面、医療、魔道具の種類、食文化すべての水準が強国ガルヴァンを恐ろしいほど上回っているのだという。

「今まで他の2国には知られぬよう対策がとられていたがそろそろクリスティアの力を見せつけるために1週間ほど前にガルヴァンとユーフォニムの国王夫妻を招き視察させた。その所為でバカ王子エドワードの暴走が加速してしまったがな…」

最後の一言だけリリゼットに辛い思いをさせてしまったという罪悪感だろうか、ギルヴェルトは申し訳なさそうに言った。

そして依頼人がギルヴェルトにリリゼットの保護を依頼したのはこの先リリゼットが転生者だと知られた後に利用するだけ利用して捨てられる可能性を危惧していたからだとも彼は説明した。

ギルヴェルトのその言葉でリリゼットは卒業パーティーに国王夫妻が不在だった理由を察した。

国王夫妻が視察に出かけた行き先はクリスティアだったのだ。

「ですがガルヴァンに従う理由が無くなったのでかえって良かったかもしれません」

ガルヴァンは長年強国として栄えプライドが高い国、今まで見下していた国が自国より発展しているのを見てしまったら帰国した後に国王は自国に転生者がいないか必死になって探し出すだろう。

そして探し出された転生者は…身分が貴族でも自国発展の道具として扱われることが予想できた。

仮にリリゼットがクリスティアへ渡った後にガルヴァンの者に彼女の生存、転生者だということが知られれば『祖国ガルヴァンに戻り国の為に尽くせ』とも言われかねない。

それを考えればエドワードの暴走で自害するまで追い込まれたのを理由にガルヴァンへの協力を突っぱねることができるのでは?ということをリリゼットはギルヴェルトに言う。

「確かに断る理由にはなる。だがガルヴァンにはお前にとって人質になりうる者達がいるのではないか?」

「!?」

ガルヴァンに残した異母弟のグレン、アルガリータ家の使用人達、フランシスとアレンなどの友人達、リリゼットにとって大事な者達が人質にされてしまったらガルヴァンに従わざる得ないことを彼女は失念していた。

リリゼットはまだ青白い肌から更に血の気が引いていくのを感じた。

「お前から依頼を受けているからな…。お前の命だけでなくお前の大事な者達をクリスティアに呼び寄せ身の安全の確保を上に進言するなどして俺が守ってやる」

「え?私の依頼??」

ギルヴェルトが言うリリゼットの依頼と思ってもみなかった彼からの提案、彼女はギルヴェルトに依頼をした記憶はない。

「お前が寝言で助けを求めた時に俺が言っただろ。と」

ーあれって幻聴じゃなかったの!?

リリゼットがこの馬車の中で目覚めた時に聞いた『聖天使アリシア』で彼女が一番好きなあの台詞は幻聴ではなくギルヴェルトが本当に言ったものだったようだ。

「依頼の追加はするか?」

アルガリータ家の使用人達とフランシス達は自分の身は自分で守れるかもしれないがグレンはまだ8才だ。

自分の身は守ることもできなければ友人達を頼ったとしても守りきるのは簡単ではない…。

「はい、お願いします…」

リリゼットは自分の命だけでなく親しい者達の身の安全の確保をギルヴェルトに依頼した。

「では早速報酬を貰おう。報酬は金よりお前の純潔が欲しい」

「ふぇっ!?」

確かに今のリリゼットは死を偽装し一度罪人墓地にそのまま埋められたので無一文であるがギルヴェルトから予想外な報酬を求められ思わず彼女はおかしな声が出てしまった。

「い、今からですか…?」

「俺は上流貴族程ではないが魔力がある。お前は自身と身内の命、魔力の補充ができるのだから安いものだろう」

確かに魔力の補充、男性の精液には魔力が含まれており相手が女性であれば魔力を分け与えることが可能だ。

「貴方は報酬をそんな安物で済ませて良いのですか?」

リリゼットが転生者だという理由で他国に誘拐、命を狙われることになれば彼女を守るギルヴェルトも無傷では済まない。

それならば貴族令嬢の純潔よりそれに見合った大金の方が良いはずだ。

「…未開通の元公爵令嬢を抱く機会は滅多に訪れるものではないからな。孕んだらどうするかはお前が選べ。どちらを選んでも責任は取る」

ギルヴェルトは上着を脱ぎ白いワイシャツ姿になる。

「わかりました…どうぞお好きなように…」

前世でも未経験だった彼女の声はこれから行われる未知の行為に怯え震えていた。

「…加減はするが途中で余裕がなくなるかもしれん。お前は美しい声をしているからな」

リリゼットはその身を全てギルヴェルトに委ね穢れを知らぬ体を彼の好きにさせ純潔を散らした…。






ほそく

1週間で遠くの国に短期間で行けるのか?と思われるでしょうが各国には国王または王妃が使用が許される瞬間移動の魔道具があり遠くの国にも一瞬で行くことが可能という設定でございます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

断罪イベント? よろしい、受けて立ちましょう!

寿司
恋愛
イリア=クリミアはある日突然前世の記憶を取り戻す。前世の自分は入江百合香(いりえ ゆりか)という日本人で、ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢で、そしてイリア=クリミアは1/1に起きる断罪イベントで死んでしまうということを! 記憶を取り戻すのが遅かったイリアに残された時間は2週間もない。 そんなイリアが生き残るための唯一の手段は、婚約者エドワードと、妹エミリアの浮気の証拠を掴み、逆断罪イベントを起こすこと!? ひょんなことから出会い、自分を手助けしてくれる謎の美青年ロキに振り回されたりドキドキさせられながらも死の運命を回避するため奔走する! ◆◆ 第12回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願い致します。 ◆◆ 本編はざまぁ:恋愛=7:3ぐらいになっています。 エンディング後は恋愛要素を増し増しにした物語を更新していきます。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

処理中です...