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パンドラの箱……ノ巻《師の教えと狼少年外伝録・手帳残記03》

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 パンドラの箱……それは謎の箱・Xである。

登場人物・語り
 仙身 一馬(せみ かずま)

 ただその箱は、案外、皆の近くに存在し、見えていて、少しの勇気を持って手を伸ばせば、手にする事はできるらしい。ただし、その箱を開けると様々な禍が飛び出し、そして、その底には、幸せが残っていると言う……
僕もかつて勇気を持って獲得した綺麗なパンドラの箱を開けた。
その中には、無限の宇宙の様な快楽が広がり、最後に希望も残った……
そう……どうも僕が開けたパンドラ箱はおかしい? パンドラの最大の問題である禍は一つも感じなかった……
僕は、そのパンドラの箱の核であり、今の嫁さんでもあり、高校時代の担任だった先生にその話をすると、目を細められた。
「なるほど、へー パンドラの箱の禍ね、そう思ってたんだ……開けて見せてあげた先生の心を」

「『!』いえ、物のたとえで、けして!」

「物? 先生の心を物と思ってたの?」

「……すみません」

……こうして僕は自爆していった……。

 その週末も駅前の大型スーパーマーケットまで食料の買い出しに行く……
ただその日は先生が独身時代から所有している、スピードが四百キロも出る、Xを超えたZと呼ばれる赤いスポーツカーを久しぶりに車庫から出し、その車が苦手な僕を横に乗せた、いや、乗せくれた……
その車は、いくらスピードを出しても車内は静まり返っていて体感的に安定している……いわゆる高性能なのかもしれないけど、それが僕には反対に不気味で少し怖く不安に成り、途中で車を停めてもらい降りてしまった。
その時の僕の気分を察してか、先生もそれからは、その車にカバーをし、車庫奥に封印するかの様にしてくれていた。
……のに、その日は、その車を僕に事前に何も言わず引っ張り起こし、有無を問わずに、『ほらほら乗って』と僕をその車内に押し込んだ。
そう……皆も知っての通り、勝手にサクサクと物事を進める先生は過去の経験からしても何か怖い……
そして、その帰り道はいつもと違った……
僕は不安に成り聞く。
「あれ、何処行くの?」
先生は視線を遠くに見て、横顔で言う。
「落とし物拾いにかな~」
走ってゆく、その道は、思いでに残っていた。
思い出の通り、その先には岬の、あの高層ラブホテルが見えて来た……
「あの……先生」
「今度は、全部やるから」
『全部』……僕は、その言葉で、あの先生の用意した禍々しい道具達を思い出した……
あの鞭の様な指揮棒だけは、今も先生の部屋の壁にかけてあるので、微かにその存在が頭にチラッつき残ってはいた……
戸惑う僕を見て先生は言った。
「今度は取り残し無く、可愛がってあげるわ」
僕は……パンドラの箱の一番キツい部分は今だに封印されている事を知った、そう、僕の開けたパンドラの箱は、二層式だったんだ……
そして、真のその箱の底を観るには、この今、目の前に見せられた層を突破しなければいけないのかも知れない、そう思った……
「最近マンネリ化してたもんね、あなた……一馬君はM気あるもんねー、だから先生に近づいたんでしょ」
「……」(少しあるかも……いやかなり)
と僕が返答に迷っていると。
先生は車は一旦留め、スマホ取り出し、何かを確認していた。
「地下は満車か、さすが週末ね」
そう先生は呟くと。
先生が運転する、その戦闘機を思わせるフォルムの赤いスポーツカーは、ホテルの裏に周り、その裏門を潜り抜け、僕を乗せたまま、ホテル内部の何処かに通じる格納庫のエレベーターに入り、車内に『ガッチャン』と不気味に何かの器具に拘束固定された様な冷たい音が成り響き、車は暗い空閑を格納エレベーターで上に上がっていった……
僕は、このホテルは、どれだけ高いんだ? ひょっととしたら宇宙迄伸びているじゃないかとさえ思えた。

途中周囲には機械の起動音のなのか? 
ブーンブーンとした音が鳴り響いていた……

 その窓から見える光景は宇宙の様に暗く、必要最低に抑えられた照明設備の光から垣間見る様にあちらこちらに十字に組んだ鉄の柱が時折見え、目にする格納されている車も町中では、けしてお目にかかれない、先生の車に劣らない凄い車、イコォール僕には怖い車が、多大格納されていた、その光景は未来に思えた、僕の鼓動は、その未知の光景に早まっていき、今乗っているスポーツカーが、宇宙ステーションから飛び立つ為、甲板へ上げられて行くいく宇宙戦闘機の様に思えた……
そしてこのまま行くと、先生が閉じてくれていた、あのパンドラの真の箱の中、即ち真の未知を体感する事になってしまう……
それは宇宙を飛び立ち、未知の敵の戦闘機との戦いへと人類の未来を背負って出撃する孤独なパイロットの気分と重なり、未知の文字が頭に浮かび、よくよく考えて見ると先生の身体は知っていても、その家柄も正体も深くは知らないままであり、この僕の住む島国では学校は国の機関であり、先生はその一員である……
僕は、そんな事も考え、横で平然としている先生に久しぶりにビビり……

「あの……その……ノーマルでお願いします」
僕がそう言うと。
「怖いの~、先生も初めてだから大丈夫よ~」
僕はその言葉に思った。
『同じ初めてでも、やられる方とやる方では先生! だいぶ違うと思いまっすー!』
とも言えないので……
「今度で」
僕がそう言うと先生はサラサラした、その髪は耳の上に描き上げ。
素っ気なく。
「そう」
と……そーっとその開きかけたパンドラの箱を閉じてくれた……。

 その後、その箱は閉じたままでいてくれたかどうかは、皆の想像に任るとしよう、仮に伸ばした足がぶつかり、事故の様に開いてしまったとしても、その内容を書く勇気は僕には、無いのだから……。




「まだ覚悟が」

「覚悟なんかいらないから!」

「……」

……



「えーっと、この後は、お尻を高く上げさせ、言葉で追い込む……ふむふむ」

パラパラパラ…パラ…パラパラ

 先生が片手に持っている黒い皮カバーを被せた参考書? のページをめくる音が、僕の背後と言うか、部屋全体に何処からか漏れた水滴が床へ規則的に、時には不規則に人の心を焦らしもて遊ぶかの様に鳴る……
その音の後に何をされるのかとか考えるといっても立っていられない……
先生が時たま挟んで来る独り言もドキドキする……例えば……
『えー  コレエグいー』
とか……考えている暇も無くなって来た……

「ほらほらーもうこんな大きくなってるよ」

ギュッー
 
「あ、ちょっと先生! もう少しソフトに」

「今は先生じゃなくて女王様でしょ! なんか言わせるのお前ー!」

パッシンー!

「ひっ! ひ、酷いですー」

「そろそろ、良いかな?、ほら」

と先生が何やらスマホを操作すると……

……パッ!と目の前の壁がガラスに変わり、その向こうはBARで知らない人達がお酒などを飲みなが僕の方を見て……
指を指したり!
コソコソ話しをしていたり!
笑っていたり!

「え! え? えっ、こ、この部屋、ガラス部屋だったのー!」

「そう皆んな見てるよ」

「ひー」

「ブップハッハハハ※先生のもの凄い~エロ言葉混じりの高笑い[自制]

「えっえー!」

「なわけないでしょ、相変わらずね、全部バーチャルのAI映像」

『……本当にエグ酷い』(涙)

…………

……




一通り終わった後、しばらく先生の顔を見れなかったです。
そんな僕なのに、先生は顔を横から覗き込んで来て「どうだったの?」と感想まで追尾する様に聞いて来た、当然、僕は答え無かった……

でも一応感想を義務として少し記しておくと……パンドラの禍はとても痛かったです……癖になる……ならないと思う……底も何も無かった……多分・はい!


[終]筆24.9.2

リンク作品
 本編・18 初体験の巻
    30 裁きの巻
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