上 下
17 / 42

第17話 雷の暴君

しおりを挟む
「コイツァ上物だぜダルゼ兄貴」
「あぁドルゾ。こんだけ上玉なら高くで売れそうだ」
「ヒヒヒヒヒヒ、たっぷり可愛がってあげるぜ嬢ちゃん達ぃ」
「さっさと運ぶぞ」
「チッ荷物が邪魔クセェな。折れた剣なんか大事に持ちやがって」
「んなもの捨てとけ」
「へいへいっと」

 ハミールとレズを鮮やかな手腕で眠らせた彼らは、ドワーフの鍛冶場の裏世界で有名な人攫い”ダルドル兄弟”であった。
 観光者も多いこの都市で、裏路地に入って来た無知な娘を攫っては得意先に高値で売ることを生業にしているクズ共。 
 油断はあれど生半可な相手では触ることも難しいハミールをたやすく捕らえることから、2人の腕はA級冒険者と遜色ないことが伺える。

 しかし、彼らは悪魔の逆鱗に触れてしまったことを今はまだ知らないーーー

「もう集合時間だってのに遅いなアイツら」
「きっと時間を忘れて楽しんでおられるのでしょう」
「ハミールのことだしありえるな・・・ん?」
「いかがなさいました?主様?」
「いや、なんだか裏路地の方が騒がしいなって」
「なにかあったのでしょうか?」
「ちょっと見てくるよ、ラティーシャは待っててくれ」
「了解いたしました主様」

 俺は裏路地の少し奥に行ったところに、複数の男が血のついた鞘を眺めていた。その鞘を見た瞬間、俺は最悪の事態を想像した。見間違えるはずもない、あの鞘はハミールのものだ。確かに条件は揃っている、ハミール達は腕は立つが一流の人攫い相手では隙をつかれたら可能性はある・・・。

「おい!!貸してくれ!その鞘どこで拾った?」
「なんだ?この鞘の持ち主か?これはさっき奥で拾ったんだ」
「いや、俺の連れのもんだ。返してもらえるか」
「返すも何もそこで拾ったゴミだ。いくらでもお前さんにくれてやるよ」
「ありがとよ」

 俺はその男が拾った場所へ急いで向かう。その場所のすぐそばに折れた剣が落ちていた。俺の不安は的中したことを確信する。だが攫った相手が誰でどこへ向かったか・・・。悩んでる時間はねぇ!!!

「おいオヤジ!!そこで人攫いがあっただろ?この剣と鞘の持ち主だ!!誰が攫った?どこへ行った!?」

 俺は人攫いがあった目の前の店の男に問い詰める。裏では人攫いなど日常茶飯事だ。

「さぁ、知らな・・・・」
ドンッッ!!!!
「金ならある。さぁ答えろ」
「ふっ。わかってるじゃねぇか。連れてったのはダルダル兄弟。ここらへんじゃ腕の立つって評判のイカれた野郎どもさ。そこの角を入ってった奴らの巣に行ったんだろう」

 裏では金がものを言う。俺は迷わず金を差し出す。

「助かるぜオヤジ」
「単身で助けに行くなんてバカな真似だけは辞めとけよ、冒険者さんよ。奴らの巣だ、命がいくつあっても足りないぜ」
「警告感謝するぜ」

 俺はその店を後にして一直線で奴らの巣へ向かうーーー待ってろよレズ、ハミール・・・・

「ほどけって言ってんでしょうが!!!!」
「ぐへへへへ、元気な嬢ちゃんだぜ。元気な女冒険者はマニアがいるからな、元気なままでいてくれよ?まぁ俺ら全員の相手を全員済ませて元気でいられるかな」

 ガハハハハハと20名はいるであろう男共の汚い笑い声が響く。
 両手両足を縄で縛られ、どこかの廃墟の大広間に壁に繋がれているハミールとレズであった。レズのバフがあれば縄など簡単に切れるが脱出出来る保証がないため動けないでいた。

「こっちのデカパイの姉ちゃんはっと・・・おぉ怖えぇ怖えぇ。すげぇ睨んできやがる笑。いつまで反抗的な目が出来るかな」

 弟のドルゾはレズの胸を揉みながら、薄汚い笑みを浮かべ準備を始める。

「じゃあまずはこのクスリをっと・・・・」

 もうダメだと涙を流し目を瞑るレズとハミールそこにーーー

ドゴオオオオン!!!!

 騒音と共にアジトのドアが吹き飛ばされる。男達は一斉にドアの方を見る。そこには1人の男が立っていた。

「ハミール!レズ!ここにいたのか」
「なんだテメェ!?ここをどこかわかってやってんのか??」

 ドルゾが吠える。

「ヒーロー気取りのバカが現れたようだな。おめぇらそこの男を捕らえろ。臓器ぐらいは売れるだろ」

 ダルゼが合図をだし、バラけてた野郎共は俺を囲み始める。

「殺れ!お前r・・・・・!?」

 ダルゼが号令を出そうとした瞬間、ガオの蹴りが一閃。横に居たドルゾが壁に顔から突き刺さっていた。

「俺の仲間に手ぇ出したんだ。生きて帰れると思うなよ?」

”魔術兵装[雷轟斧]”

 ガオの身体に白い電気がほとばしる。

「おい!ドルゾ!!何やってんだバカやr・・・・」

 ダルゼが二言目を言おうとした瞬間、次は取り巻きの三人が壁へ、床へ、天井へと吹き飛ばされる。

「俺は悪夢でも見てるのか・・・・?まさかその強さ、その姿・・・噂の”雷の暴君”ビーコムズって野郎か!!?」
「なんだその二つ名。知らねぇよ」

 ダルゼもドルゾのすぐ横に殴り飛ばされ、壁に突き刺さる。そこから全員が沈むまで1分とかからなかった。俺は次関わったら、今度は全員が死ぬことをダルゼに擦り込み、巣を後にした。

「さぁ、帰るぞ」
「ガオ・・・・ガオ・・・・・ガオ・・・・うわああああん」
「ありがとうございます・・・師匠・・・・」
「俺も忠告するのを忘れて悪かった。すまないな怖い思いをさせて」

 泣き出した2人を連れて俺は帰りを待つラティーシャの元へ向かうのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる

KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。 城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

処理中です...