上 下
57 / 60

クマさんと、ミリュウトルネード

しおりを挟む
 張り切って街中を駆け回っていると、

「ダ~リ~ン!」

 ミリュウが笑顔で駆け寄って来ました。

 ラミアのミリュウですので駆け寄って来たという表現が正確なのかちょっと首をひねってしまうのですが、その嬉しそうな笑顔を見ると僕も自然と笑顔になってしまいます。

 元の世界にいた頃の僕が好きだったマンガの1つに、ラミアと同棲している彼氏のお話があったんだけど……あの主人公もこんな気持ちだったのかな……なんてついつい思ってしまいます。
 作者のオルカヤド先生にそのあたりをぜひお聞きしてみたかった気がしないでもないんだけど、1ファンでしかなかった僕にそんなことが出来るはずもありませんし……

「やぁ、ミリュウ。どうかしたのかい?」

 僕が立ち止まって笑顔を向けると、ミリュウも嬉しそうに笑いながら僕の腕に抱きついてきました。
 
 そんなミリュウの様子を、周囲の村のみんなが笑顔で見つめているのがわかります。
 ちょっと前までは、ミリュウのことを、

『凶暴な魔獣』
『言葉が通じないから怖い』

 そんな感じで、あからさまに避けていた感じの皆さんだったのですが……まぁ、実際に言葉も通じないですし、ある意味それは仕方がなかったのかもしれないのですが……今のミリュウは、相変わらず村のみんなと話は出来ないものの、

 いつも僕と仲良くしている
 いつも笑顔
 いつもみんなのお手伝いをしてくれる

 そんなミリュウの姿を毎日のように見続けているうちに、村のみんなの認識も変わってきたってことなのかもしれません。
 うん、僕もすごくうれしいな、それは。

 そんな事を考えている僕の腕に抱きついているミリュウ。

『ダーリンにちょっと手伝ってほしいことがあるの』
「手伝う?」
『うん、ちょっとダーリン以外にはお願い出来ないというか……お願い、手伝ってほしいの』

 そう言いながら、僕に頬ずりしてくるミリュウ。

 こういう仕草を見ていると、ミリュウは女性というよりも女の子……おっさんの僕の年齢から考えれば娘のような、といった感じに思えてしまいます。

 そんな、どこか娘を見守る父親モードでミリュウを見つめていた僕は、

「わかった、僕でよければ手伝うよ」

 力強く頷きました。

『よかった!ありがとうダーリン!』

 ミリュウは、僕の腕を引っ張って邸宅の中にあるミリュウの部屋へと連れていきました。

 その部屋は、元はシャルロッタの家の応接室の1つで、その中にあった机や椅子をすべて片付けて、替わりに大きな布団がおかれています。

 毎晩ここでミリュウは寝ているんだけど、最近はアジョイもここで一緒に寝ているそうです。

 そのアジョイは、今は湖に遊びに行っているとのことでした。
 多分、ドラコさんのところに遊びに行ったんだと思います。

 アジョイは、ラミアのミリュウと、ドラゴンのドラコさんと凄く仲良しになっています。
 これは、アジョイ自身も古代怪獣族という異形に分類されている亜人だからというのがあるのかもしれません。

 ……とまぁ、……そんな事を考えている僕だったのですが……

 そんな僕の前で、ミリュウはその長い尻尾を伸ばしていてですね、

『ダーリン……脱皮を手伝ってほしいの……一人だとうまく出来ないの』

 そう言っているんです。

 ……気のせい……いや、きのせいじゃなく、その顔が赤くなっているミリュウ。

 ……うん……そうだ。

 僕が元の世界で好きだったマンガにも、ヒロインのラミアと主人公の間でこんなイベントがあった気がします。

 その時のラミアって、皮を剥がされる度に、その感触で快感を感じちゃってどんどんその気になっていって……って、なんかそんなシチュエーションだった気が……

 で、今の僕の眼前にいるミリュウ……

 ……目が気持ち潤んでいる
 ……頬が赤い
 ……気持ち息がはずんでいる

 ……これ、発情してるようにしか見えないんだけど?
 
 『あのね、このあたりはうまく剥がせるの、でもね、こっちが難しいの……』

 そう言いながら、ミリュウは尻尾の裏側を指さしています。

 あ

 その時、僕はあることに気が付いきました。
 
 ミリュウは体をモジモジさせながら、その体を床に押しつけているんだけど……ひょっとしたらこれって発情というよりも、単純に『痒い』のかもしれません。

 ……痒すぎて目が気持ち潤んでいる
 ……痒すぎて頬が赤い
 ……痒すぎて息がはずんでいる

 ……そう、とれなくもないというか……とにもかくにも、ミリュウが辛そうなのは理解出来ました。

「じゃあ、ちゃちゃっと皮を剥がしちゃおうか」

 僕はそう言うとミリュウの尻尾に手を伸ばしていった。

* * *

 そして、およそ3時間後……

 浴室でシャワーを浴びてから、僕は自室に戻りました。

 ……いや、うん……ミリュウの脱皮は無事に済んだんです。
 ……ただ……すごかったというか……

『ダーリン、そこ……そこもう少し優しくしてほしいの』

 と言っては尻尾で締め上げられ、

『そこ、あはん! ちょっと気持ちいいの!』

 と言っては尻尾で締め上げられ、

『そこは、じっと見られると恥ずかしいの……』

 と言っては、尻尾でバシバシ叩かれ、

 とまぁ……ミリュウ的には照れ隠し的な意味合いがあったみたいなんだけど、脱皮作業の間中、その尻尾で散々攻撃されまくった僕。
 しかも、その尻尾ってば脱皮途中なもんですから、体液みたいなものでねっとりしていたんです。

 そんなわけで……

 ミリュウの脱皮が無事終了した頃には、僕はミリュウの体液でべっとべとになっていたわけです。
 
 無事脱皮が終わったミリュウは

『ダーリンありがと~、やっとすっきりしたの!』

 そう言うや否や眠り始めてしまいました。

 脱皮の最中に、

『尻尾がむずむずしちゃって、最近眠れてないの』

 とも言っていましたし、その影響があったのかもしれません。

 そんなミリュウを起こさないようにして部屋を後にした僕だったのですが、ミリュウの体液まみれのこの状態ではどこにもいけませんので、とにかくシャワーで洗い流してから自室に戻った次第なんです。

「……しかし、疲れた……」

 超身体能力を持っている僕だけど、ミリュウを傷つけないように気を遣い、なおかつ時折締め上げられたり殴られたりしながらの作業はやはり大変でした……

 精も根も尽き果てた僕は、ベッドに横になり、そのまま目を閉じました。

* * *

 ……それからどれくらい経っただろうか……

 僕が目を覚ますと……目の前にシャルロッタの顔があった。
 寝入っているらしく、シャルロッタは目を閉じて安らかな寝息をたてているではありませんか。

 横向きに寝ていた僕なんだけど……な、なぜここにシャルロッタの顔が!?

 唖然としている僕。
 すると、ここでシャルロッタが目を覚ましました。

「……あ、クマ殿……」

 そう言うと、シャルロッタはにっこり微笑みました。

「ミリュウの脱皮の手伝いお疲れさまだったのじゃ。
 慰労に来たのじゃが、クマ殿、お疲れで寝入っておられたのでな……寝顔を拝見させてもらっておったのじゃが……どうやら妾まで寝てしまったようじゃな」

 そう言って立ち上がろうとしたシャルロッタなんだけど……その視線が、僕のある一点に注がれていた。

 男性なら経験がないだろうか……

 体が心底疲れていると自分の意思とは関係なく、股間の息子がむっくり起き上がっちゃう現象……

 そう……

 ミリュウの脱皮の手伝いですっかり疲れ切っていた僕の息子がですね、不謹慎にもむっくり起き上がっていたわけ。

 で

 シャルロッタがそれに気付いちゃって……その一点を凝視しているわけ。

「あ、あの、これは……」
 思わず股間に手を伸ばす僕。
 すると、そんな僕にシャルロッタは

「……その……よ、よかったら……」

 恥ずかしそうにうつむきながら、シャルロッタは僕にそう言いました。

 顔を真っ赤にしながら、上目使いでボクを見上げているシャルロッタ。
 よく見ると、その胸元が露わになっていて……

 うん、もう、無理……
 大好きな相手に、目の前でそんな仕草をされて我慢出来る男がいるでしょうか……いや、いません。

 僕は、

「よよよ、よろしくお願いいたします」

 そう言いながらシャルロッタをベッドの上に押し倒してしまいました。
 シャルロッタは少し恥ずかしそう表情のまま目を閉じています。
 
 僕は、そんなシャルロッタの服をぎこちない仕草で脱がせていったのですが、焦っているせいで上手くいきません。
 その時でした。

 コンコン

『クマ様、起きた? 食事を持って来たんですけどぉ』

 扉の向こうから、ノックの音とともに、ピリの声が聞こえてきたんです。

 その言葉に、僕とシャルロッタは思わず飛び上がってしまいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...