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クマさんと、ドラコフレンドシップ その1
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「いやぁ……ホントに美味しかった……」
部屋に戻った僕は、無意識のうちにそんな言葉を口にしていました。
以前からピリの料理は口にしていたし、それが美味しいっていうのもわかってはいたんだけど……こうして大好物の肉を、しかもすっごく美味しく料理してもらった肉を、お腹いっぱい食べさせてもらえたもんですら、僕はいつも以上に満足感に包まれていたのかもしれません。
ビーフシチューに使用されている流血狼の肉だけど、それなりに大ぶりにカットされてはいるものの、今日口にした分厚いステーキとは比べようがありません……なんというか、不戦勝という言葉しか浮かんできません。
やっぱり肉料理はこうでないと。
さらに感動したのは、ステーキに使用されていたピリ特製のソースです。
ピリは以前からいろんな調味料を独自に研究していて、それを様様な料理に使用していたそうです。
なんでも、魔法使いだったピリのおばあさんが調味料の研究もしていたそうで、ピリはそれを引き継いで研究を重ねているそうなんですけど、その味が本当に素晴らしかったんです。
サラダに使用されているドレッシングとでも言うべき調味料もすごかった。
毎朝食卓にあがっているサラダなんだけど、毎日それに使用されている調味料が違っています。
そして、そのどれもがとても美味しいんです。
シャルロッタによると、
「サラダの味付けにまでだわっておる料理人なぞ、このパルマ世界広しといえども、このピリくらいなものじゃ」
ということらしいのです。
シャルロッタは、そのことをすごく嬉しそうに語ってくれていたいた。
これはシャルロッタのすごくいいところだと思っています。
シャルロッタは、自分がすごいと思ったことは、素直にそのまま伝えてくれます。
そこに、妬みやひがみとか、そんな感情は一切含まれていません。
「ピリはすごいのじゃ」
「クマ殿はすごいのじゃ」
「村のみんなはすごいのじゃ」
いつも満面の笑みでそう語ってくれるシャルロッタ。
……元の世界で僕が努めていた会社の……僕に首を告げたあの上司は全然こんなんじゃなかったです。
バリバリ仕事をこなす部下がいると、その部下の事を褒めるのが普通だと思うんだけど、その上司はそんな部下を絶対に褒めないばかりか、
「あいつは報告書に誤字が多い」
とか
「あいつは出勤してくるのが遅い」
とか、
いつも重箱の隅をつつきまくっては、悪口のネタを探してきてそれを口にしていたもんです。
ちなみに、
「誤字が多い」
といっても、句読点の打ち方が気に入らないのを誇張したり
「出勤が遅い」
といっても、始業時間の5分前には出勤しているので問題はないはずなのに、自分が10分前に出勤しているから「俺より遅い」という理由で遅いと断定していただけであって……
本来であれば悪く言われるはずがないものばかりを、手を変え品を変えして、グチグチ言っていたんです。
そんな上司の下でしか働いた事が無かったもんだから、
上司なんてそんなもん。
上に立つ人なんてそんなもん。
そんな考えに囚われていただけに、人の事を素直に褒める事が出来るシャルロッタの事を、僕は心の底から素敵な人だと感じていたんです。
……さすがはシャルロッタだよなぁ
僕はベッドに腰掛けたままウンウンと頷いていました。
そんなシャルロッタのために頑張ると決めたんだし、僕ももっともっと頑張らないと……そう思った僕は、早速狩りに出かけよう……と、しかけたところで、その足を止めました。
「……そうだった……今日たくさん狩ったから、次の狩りは一週間後にすることにしたんだった」
その事を、すでにドラコさんにも神の耳魔法で伝えてあるわけだし、今から森に出向いていっても、流血狼達を呼び寄せる魔法を使用出来るドラコさんがいないんだから、どうにもなりません。
ドラコさんのことですから、
「ドラコさん、すまないんだけど……」
そうお願いすれば、
『はいはいお任せください~』
そう言って駆けつけてくれると思うけど……だからこそ気軽にお願いするわけにはいかないと思っています。
すでに約束を交わしているわけだし、それを僕の気分で勝手に変えるわけには……
『クマさん~、私でしたら別にいいのですよ~、クマさんの気分に合わせて即参上しちゃいますので~』
そんな事を考えていた僕の脳内に、ドラコさんの声が聞こえてきた。
ひょっとして……神の耳魔法で僕の心の声を聞いていたんでしょうか……
普通なら、この神の耳魔法を使用出来る者同士であっても、気軽に相手の心の声を聞けるわけではないそうなんです。
相手に呼びかけ、それに相手が応じてくれた時だけこの神の耳魔法による会話はなりたつそうなのですが、ドラコさんはこの魔法をことのほか得意にしているそうで、相手に呼びかけなくても会話を始めることが出来るそうなんです。
……そのため、今のように僕が脳内であれこれ思っている内容まで、時々聞かれちゃってる気がするんだよな……
ドラコさんもそのことは気にしてくれていて、
『普段はなるべく使いませんから~』
そう約束してくれていたんだけど……
『あはは~、ごめんなさいクマさん~、なんか昨日の夜が楽しすぎたので~、ついつい神の耳魔法をつないじゃいました~』
ドラコさんは、一応謝罪してくれたものの、その声には反省よりも、僕と会話出来て楽しいといったニュアンスの方がたくさん含まれているような気がしました。
せっかくなので、僕はそんなドラコさんとしばらく会話を交わすことにしました。
ドラコさんとは神の耳魔法友達なわけだし、まぁ、これくらいなら問題ないかな。
会話の内容はたわいもないものばかりでした。
「今日食べたお肉がおいしかった」
とか、
「缶詰がたくさん売れたんだ」
とか、
……ドラゴンとはいえ、ドラコさんは女の子なわけだし、ここでもっと気の利いた言葉をかけてあげることが出来ればいいんだけど……彼女いない歴=年齢の僕は、今までデートどころか女の子とプライベートで電話で話したことすらないもんだから、こんな時にどんなことを話せば女の子が喜んでくれたり、楽しんでくれるかなんてさっぱりわかりません。
そんな僕だから、
「ごめんね、こんな話つまらないよね」
なんて自虐を時折口にしちゃうんだけど、
『いえいえ~、私とっても楽しいですよ~?』
ドラコさんはいつも楽しそうな声でそういってくれるんです。
ほんと、ドラコさんって素敵な女の子です。
そんな事を考えていた僕なんだけど……
「あ、そうだドラコさん」
『はい? なんでしょう~』
「ちょっと聞いてもいいかな?」
『はいはい~、クマさんのご質問ならなんでもお答えいたしますよ~』
「ドラコさんってさ、魔法を最初から使えたの? 誰かに教わったりしたの?」
僕は、先日から少し疑問に思っていたことを質問してみた。
ドラコさんは、人間じゃない。
ドラゴンなんだ。
あの巨体で空を飛べるドラゴンなんだ。
そして、そんなドラゴンでありながら、ドラコさんは様々な魔法を使用することが出来る。
僕が元の世界で読んでいたライトノベルなんかにも、魔法を使用出来るドラゴンが登場していることが結構あったんだけど、その魔法をそのドラゴンがどうやって使えるようになったかまで記載してあった作品はほとんどなかったような気がします。
そんなわけで……この世界のドラゴンであるドラコさんが、どうやってあの魔法を使えるようになったのか、ちょっと興味が沸いたんです。
『はい~、私は師匠に教えてもらいました~』
「師匠? ドラコさんには魔法のお師匠様がいるのかい?」
『はい~、そうなんですよ~、この世界の伝説の魔法使い様で~、ステルアム様っていうんです~』
ステルアム……そう聞いても、僕には思い当たる物は何もなかった。
そもそも論として、この世界に転移してきて日の浅い僕が、この世界の人の事を知っているわけがないといえなくもないわけで……
『ステルアム師匠はですね~、正式にはお弟子さんをとられてはいなかったのですが~、私は魔法をいっぱい教えてもらったので勝手に師匠とよばせてもらっています~』
「あ、そ、そうなんだ」
『はい~、他にもですね、同じようにステルアム様に魔法を教えていただいて~、ステルアム様を師匠としてあがめているお友達もいるんですよ~』
「そのお友達とは、連絡をとったりはしてないのかい?」
『はい~、このお友達はですね~神の耳魔法があまり得意じゃなくてですね~、かなり近くでないとお話出来ないみたいでして~』
「あぁ、そうなんだ」
『そうなんですよ~、特に仲良しのバテアちゃんは~かなり北の方に住んでいますし~』
ドラコさんのその言葉には、少し寂しさが混じっていた。
とはいえ、
『でもですね~、今はクマさんがいるから寂しくないのですよ~えへへ~』
その言葉と同時に、ドラコさんの言葉はすぐに明るく楽しそうなニュアンスになっていました。
そんなドラコさんと、僕はたわいもない会話を続けていきました。
部屋に戻った僕は、無意識のうちにそんな言葉を口にしていました。
以前からピリの料理は口にしていたし、それが美味しいっていうのもわかってはいたんだけど……こうして大好物の肉を、しかもすっごく美味しく料理してもらった肉を、お腹いっぱい食べさせてもらえたもんですら、僕はいつも以上に満足感に包まれていたのかもしれません。
ビーフシチューに使用されている流血狼の肉だけど、それなりに大ぶりにカットされてはいるものの、今日口にした分厚いステーキとは比べようがありません……なんというか、不戦勝という言葉しか浮かんできません。
やっぱり肉料理はこうでないと。
さらに感動したのは、ステーキに使用されていたピリ特製のソースです。
ピリは以前からいろんな調味料を独自に研究していて、それを様様な料理に使用していたそうです。
なんでも、魔法使いだったピリのおばあさんが調味料の研究もしていたそうで、ピリはそれを引き継いで研究を重ねているそうなんですけど、その味が本当に素晴らしかったんです。
サラダに使用されているドレッシングとでも言うべき調味料もすごかった。
毎朝食卓にあがっているサラダなんだけど、毎日それに使用されている調味料が違っています。
そして、そのどれもがとても美味しいんです。
シャルロッタによると、
「サラダの味付けにまでだわっておる料理人なぞ、このパルマ世界広しといえども、このピリくらいなものじゃ」
ということらしいのです。
シャルロッタは、そのことをすごく嬉しそうに語ってくれていたいた。
これはシャルロッタのすごくいいところだと思っています。
シャルロッタは、自分がすごいと思ったことは、素直にそのまま伝えてくれます。
そこに、妬みやひがみとか、そんな感情は一切含まれていません。
「ピリはすごいのじゃ」
「クマ殿はすごいのじゃ」
「村のみんなはすごいのじゃ」
いつも満面の笑みでそう語ってくれるシャルロッタ。
……元の世界で僕が努めていた会社の……僕に首を告げたあの上司は全然こんなんじゃなかったです。
バリバリ仕事をこなす部下がいると、その部下の事を褒めるのが普通だと思うんだけど、その上司はそんな部下を絶対に褒めないばかりか、
「あいつは報告書に誤字が多い」
とか
「あいつは出勤してくるのが遅い」
とか、
いつも重箱の隅をつつきまくっては、悪口のネタを探してきてそれを口にしていたもんです。
ちなみに、
「誤字が多い」
といっても、句読点の打ち方が気に入らないのを誇張したり
「出勤が遅い」
といっても、始業時間の5分前には出勤しているので問題はないはずなのに、自分が10分前に出勤しているから「俺より遅い」という理由で遅いと断定していただけであって……
本来であれば悪く言われるはずがないものばかりを、手を変え品を変えして、グチグチ言っていたんです。
そんな上司の下でしか働いた事が無かったもんだから、
上司なんてそんなもん。
上に立つ人なんてそんなもん。
そんな考えに囚われていただけに、人の事を素直に褒める事が出来るシャルロッタの事を、僕は心の底から素敵な人だと感じていたんです。
……さすがはシャルロッタだよなぁ
僕はベッドに腰掛けたままウンウンと頷いていました。
そんなシャルロッタのために頑張ると決めたんだし、僕ももっともっと頑張らないと……そう思った僕は、早速狩りに出かけよう……と、しかけたところで、その足を止めました。
「……そうだった……今日たくさん狩ったから、次の狩りは一週間後にすることにしたんだった」
その事を、すでにドラコさんにも神の耳魔法で伝えてあるわけだし、今から森に出向いていっても、流血狼達を呼び寄せる魔法を使用出来るドラコさんがいないんだから、どうにもなりません。
ドラコさんのことですから、
「ドラコさん、すまないんだけど……」
そうお願いすれば、
『はいはいお任せください~』
そう言って駆けつけてくれると思うけど……だからこそ気軽にお願いするわけにはいかないと思っています。
すでに約束を交わしているわけだし、それを僕の気分で勝手に変えるわけには……
『クマさん~、私でしたら別にいいのですよ~、クマさんの気分に合わせて即参上しちゃいますので~』
そんな事を考えていた僕の脳内に、ドラコさんの声が聞こえてきた。
ひょっとして……神の耳魔法で僕の心の声を聞いていたんでしょうか……
普通なら、この神の耳魔法を使用出来る者同士であっても、気軽に相手の心の声を聞けるわけではないそうなんです。
相手に呼びかけ、それに相手が応じてくれた時だけこの神の耳魔法による会話はなりたつそうなのですが、ドラコさんはこの魔法をことのほか得意にしているそうで、相手に呼びかけなくても会話を始めることが出来るそうなんです。
……そのため、今のように僕が脳内であれこれ思っている内容まで、時々聞かれちゃってる気がするんだよな……
ドラコさんもそのことは気にしてくれていて、
『普段はなるべく使いませんから~』
そう約束してくれていたんだけど……
『あはは~、ごめんなさいクマさん~、なんか昨日の夜が楽しすぎたので~、ついつい神の耳魔法をつないじゃいました~』
ドラコさんは、一応謝罪してくれたものの、その声には反省よりも、僕と会話出来て楽しいといったニュアンスの方がたくさん含まれているような気がしました。
せっかくなので、僕はそんなドラコさんとしばらく会話を交わすことにしました。
ドラコさんとは神の耳魔法友達なわけだし、まぁ、これくらいなら問題ないかな。
会話の内容はたわいもないものばかりでした。
「今日食べたお肉がおいしかった」
とか、
「缶詰がたくさん売れたんだ」
とか、
……ドラゴンとはいえ、ドラコさんは女の子なわけだし、ここでもっと気の利いた言葉をかけてあげることが出来ればいいんだけど……彼女いない歴=年齢の僕は、今までデートどころか女の子とプライベートで電話で話したことすらないもんだから、こんな時にどんなことを話せば女の子が喜んでくれたり、楽しんでくれるかなんてさっぱりわかりません。
そんな僕だから、
「ごめんね、こんな話つまらないよね」
なんて自虐を時折口にしちゃうんだけど、
『いえいえ~、私とっても楽しいですよ~?』
ドラコさんはいつも楽しそうな声でそういってくれるんです。
ほんと、ドラコさんって素敵な女の子です。
そんな事を考えていた僕なんだけど……
「あ、そうだドラコさん」
『はい? なんでしょう~』
「ちょっと聞いてもいいかな?」
『はいはい~、クマさんのご質問ならなんでもお答えいたしますよ~』
「ドラコさんってさ、魔法を最初から使えたの? 誰かに教わったりしたの?」
僕は、先日から少し疑問に思っていたことを質問してみた。
ドラコさんは、人間じゃない。
ドラゴンなんだ。
あの巨体で空を飛べるドラゴンなんだ。
そして、そんなドラゴンでありながら、ドラコさんは様々な魔法を使用することが出来る。
僕が元の世界で読んでいたライトノベルなんかにも、魔法を使用出来るドラゴンが登場していることが結構あったんだけど、その魔法をそのドラゴンがどうやって使えるようになったかまで記載してあった作品はほとんどなかったような気がします。
そんなわけで……この世界のドラゴンであるドラコさんが、どうやってあの魔法を使えるようになったのか、ちょっと興味が沸いたんです。
『はい~、私は師匠に教えてもらいました~』
「師匠? ドラコさんには魔法のお師匠様がいるのかい?」
『はい~、そうなんですよ~、この世界の伝説の魔法使い様で~、ステルアム様っていうんです~』
ステルアム……そう聞いても、僕には思い当たる物は何もなかった。
そもそも論として、この世界に転移してきて日の浅い僕が、この世界の人の事を知っているわけがないといえなくもないわけで……
『ステルアム師匠はですね~、正式にはお弟子さんをとられてはいなかったのですが~、私は魔法をいっぱい教えてもらったので勝手に師匠とよばせてもらっています~』
「あ、そ、そうなんだ」
『はい~、他にもですね、同じようにステルアム様に魔法を教えていただいて~、ステルアム様を師匠としてあがめているお友達もいるんですよ~』
「そのお友達とは、連絡をとったりはしてないのかい?」
『はい~、このお友達はですね~神の耳魔法があまり得意じゃなくてですね~、かなり近くでないとお話出来ないみたいでして~』
「あぁ、そうなんだ」
『そうなんですよ~、特に仲良しのバテアちゃんは~かなり北の方に住んでいますし~』
ドラコさんのその言葉には、少し寂しさが混じっていた。
とはいえ、
『でもですね~、今はクマさんがいるから寂しくないのですよ~えへへ~』
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