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リットの村でのエピローグ その2

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 うん、これじゃ駄目だ……これじゃ元いた世界での繰り返しじゃないか……

 そう思い直した僕は、再度あれこれ思案した挙げ句……このことをドラコさんに相談してみることにした。

 ドラコさんとは神の耳魔法友達なわけだし、この魔法能力のことを心置きなく話せる相手です。
 だから、この山賊の件も説明しやすい上に、理解もしてもらいやすいだろうと思ったんです。
 それに、この山賊団の大半を壊滅させてくれたのはドラコさんですし、すでに事情もわかってくれていますし……と、まぁ、そんなことを考え合わせた結果なわけです。

 僕は早速神の耳魔法でドラコさんに相談しました。

「……と、いうわけなんですけど……ドラコさんはどうしたらいいと思います?」
 僕から一通り説明を聞いたドラコさんは、
『そうですね~……個人的には、ほっとけばいいと思いますよ~』
 いつもの、少しお気楽な声でそう言ってくれた。
「それでいいのですか?」
『はい~、問題ないでしょう~。山賊団が結成されたり解散することはよくあることですし~、それに今回は消えてなくなったわけですもの~。それに~、下手にそのことをジェナさんにお伝えしたらかえってめんどくさいことになるかもです~』
「え? めんどくさいこと?」
『はい~、ジェナさんってばかなり生真面目な性格なんですよね~、そんな彼女が山賊団が解散したってこのタイミングで知ってしまうと~』
「……あ、王都からの援軍!?」
『正解です~』
 ドラコさんの話を聞いていた僕は、そのことに思い当たりました。

 そうだ、ジェナさんは山賊退治のために王都に援軍要請をしているんだった。
 で、僕とシャルロッタは、その援軍が到着するまでの間の助っ人として呼ばれていたわけなんですけど……そんなジェナさんが、王都からの援軍が街に向かってきている最中というこの段階で、その山賊団が解散したことを知ってしまったら……

『生真面目なジェナさんですからね~、王都からやってきた援軍の前で『なんとお詫び申し上げていいのやら』とか言い出して~心を痛めまくりかねません~』
「そうか……確かにそうかもしれない」
『ですから~、彼女はあくまでも『何も知らなかった』って立場にしてあげておけば、みんな丸く収まるわけなのです~』
「そうか、確かにそうですね……」
 ドラコさんの言葉を聞いて、僕は安堵のため息をもらしていった。
 
 最初は悶々としていて、また胸の中に押し込もうとしていたこの案件だけど……勇気を出して理解してもらえそうな相手に相談してみたらことのほかあっさりと解決策にたどり着くことが出来てしまった。

 ……そっか……人に相談するのって、難しいようで案外簡単なことなんだな……

 僕は、そんなことを考えながら、何度も頷いていた……んだけど……

 ちなみに、この時の僕は神の耳魔法と同時に神の目魔法も使用していて、ドラコさんの上半身を確認しながら会話していたんだけど、

「……ところでドラコさん?」
『はい~、なんでしょうか~?』
「……その、頭の角が変な形になってませんか?…」
 ……そうなんだ……ドラコさんの頭の上……そこには角が生えていたはずなんだけど、その角がですね……縦に長くなっているというか……そう、まるで兎の耳のように変化していたわけです。
『どうですか~?似合ってます~?』
 僕に楽しそうな声でそういうドラコさん。
「に、似合っているとは思いますけど……」
『よかったぁ、クマさんってこういうお耳がお好きみたいでしたので~、ちょっとやってみたのですよ~』
 
 え?
 
 ドラコさんの言葉を前にして、僕は一瞬固まってしまった。
 兎の耳……た、確かに嫌いじゃないというか、むしろ大好物なわけですが……なんで、それがドラコさんにバレているんだ……
 そこまで考えて……僕は1つの事に思い当たった。

 そうだ……ミミーさん……

 ……そうです……見事な兎耳で黒眼鏡という、僕の性癖ど真ん中だったミミーさん。
 その姿に、思わずときめいてしまった僕だったわけですけど……ドラコさんってば、その光景を神の目魔法で見ていたんじゃ……

『うふふ~、どうでしょうかねぇ?』
 ドラコさんは、楽しそうな声でそう言うと、今度は大きな黒眼鏡を召喚して、顔にかけていった。

 ……間違いない……絶対にみられてた……

 楽しげに、その大きな尻尾を振っているドラコさんの姿を確認しながら、僕は体中から嫌な汗があふれ出してきたのを感じていました。

◇◇

 と、まぁ……そんなこともあったわけですが……

 その翌日、王都からの援軍がリットの村に到着しました。
 これを受けて、僕とシャルロッタは村へ帰ることになりました。

 それを受けて、お借りしていたバスターソードをお返ししようとしたんだけど、
「街にあっても誰にも使用出来ない飾りですからね。使用することが出来るあなたが持っている方が剣も喜ぶでしょう」
 ジェナさんはそう言って、このバスターソードを僕へと託してくれました。

「えぇ!? こ、これって、古代怪獣族の長しか使えないっていう伝説級のアイテムなんじゃないんですかぁ!?」

 思わずすっとんきょうな声をあげてしまった僕。
 そんな僕を、ジェナさんは目を丸くしながら見つめていました。

「え? クマさんってば、なんでその剣の伝承をご存じなんです? 古すぎて、この村の住人以外ではほとんど知っている人はいないと思っていたのですけど……」

 ……は!? し、しまった……

 この情報って、ラビランス山賊団の会話を盗み聞きした時に聞いたんだった。
「あ、いえ、その……これはですね」
 しどろもどろになってしまう僕。
 そんな僕を、怪訝そうに見つめているジェナさん。

 ……ま、まずい……このままじゃ疑われてしまう……

 焦れば焦るほど、どもりまくってしまう僕。
 すると、そんな僕とジェナさんの間に、シャルロッタが割り込んできました。

「ふふん、クマ殿はの、色々と博識なのじゃよ。その知識で、我が村の特産品を産みだしてくれた程じゃからの」

 ドヤ顔で胸を張っているシャルロッタ。

「……言われてみれば確かにそうね」

 シャルロッタの説明を聞いて、ジェナさんも妙に納得した表情で頷いているんだけど……いや、シャルロッタ……それは過大評価といいますか…… 

「ととと、とにかくですね、この剣のお礼といたしまして、この村でまた何かありましたら真っ先に駆けつけさせていただきますので」

 どもりまくりながら、僕はジェナさんに言いました。
 それを受けて、ジェナさんは、

「えぇ、期待しているわ。これからもよろしくねクマさん」

 そう言って、にっこり微笑んでくれました。
 その笑顔がすごく素敵だったものですから、僕の鼻の下がつい伸びてしまったのですが……

「……クマ殿?」

 即座に、シャルロッタにジト目で睨みつけられてしまいまして……慌ててその場で気を付けをしてしまいました。
 その仕草を前にして、周囲のみんなが一斉に笑い声をあげていきました。

 うぅ……すっごく恥ずかしい……

* * *

 しばらくジェナさん達と談笑した後、僕とシャルロッタは帰路につきました。

 僕達の荷馬車の後方には、ミミー商会の荷馬車が続いています。
 その荷馬車には、ミミーとその部下数名乗っていて、商会が雇っている冒険者達が護衛についていました。

 ……そして、同行者がもう1人……

 僕達が移動している上空を、ドラコさんが飛行していたんです。

 ドラコさんは姿形隠蔽魔法という魔法を使用しているため、神の目魔法を使用出来る僕以外の人々にその姿は確認出来ていない。

「うふふ~、お友達のクマさんの近くにいた方が、何かと楽しそうですから~」
 楽しそうな声でそう言うドラコさん。
 その角は、今も兎耳のままでした……黒縁眼鏡もかけたままです。
 
 ……なんでしょうかね……うさ耳眼鏡のドラゴンって……

 そんなドラコさんの姿に思わず苦笑してしまう僕。
 すると、そんな僕の隣に座っているシャルロッタが、
「……なんじゃろう……なにか邪な気配を感じるのじゃ……」
 ドラコさんの気配を、勘で察知しているのでしょうか……時折そんなことを言ったりしていたんですけど……とにもかくにも、こうして僕達はニアノ村への帰路を急いでいきました。
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