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クマ、出発する その1
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シャルロッタにキスしてもらっている僕。
柔らかい感触が口に当たっていて、同時にすごくいい匂いが僕を包みこんでいきます。
……あぁ、なんかもう、このまま死んでもいいかも
そんな事を考えている僕なのですが……このシチュエーションに興奮してしまった僕の体の一部が過剰反応してしまって……はい、あの……か、下半身が……
「……ちょ、く、クマ殿……」
唇を離したシャルロッタも、僕の異常に気が付いたみたいでして……どこか上ずった声を漏らしています……って……そ、そういえば、以前、同じようなシチュエーションになった時って、この後激怒したシャルロッタに、おもいっきり踏んづけられて……
あの時の出来事を思い出した僕は思わず身構えてしまったのですが……
シャルロッタはというと、頬を赤くしたままうつむいているだけです。
「そ、その……こ、こういう事はじゃな……」
そんな上ずった声を漏らしたシャルロッタ。
その時でした。
コンコン。
「シャルロッタ様、お茶をお持ちしましたよ~」
部屋をノックする音と共に、ピリが執務室の中に入ってきました。
紅茶の乗ったトレーを片手に、元気な笑顔のピリ。
「う、うむ!? ぴぴぴピリ、いいいいつもすまぬのじゃ」
途端に、大慌てしながら僕の前から飛び退いていくシャルロッタ。
僕は僕で、
「お、お邪魔しましたぁ」
思いっきり裏返った声をあげながら、慌てて部屋を後にしたわけです、はい。
思いっきり前屈姿勢だったのは言うまでもありません。
「あ、クマ様もいたんだ。せっかくだしみんなでお茶を……」
ってピリが言っていたのですが……あんな事があった直後ですし、シャルロッタの顔をまともに見ることが出来るとは思いません。
自室へ駆け戻った僕は、ベッドへ飛び込みました。
……シャルロッタにキスしてもらえた。
……その感触を思い出しながら、僕はベッドの中でニヘラァっと笑ってしまうのを押さえることが出来ませんでした
* * *
翌朝。
僕は、シャルロッタの執務室へ呼ばれました。
なんでも、近隣の村の村長さんから書簡が届いたそうで、その相談をしたいそうなのですが……
「山賊退治?」
「うむ、そうなのじゃ。この村の山向こうにあるリットの街に山賊が出没しておるそうでな、その討伐を手伝ってほしいとの書簡が届いたのじゃ」
シャルロッタは僕へ視線を向けると、
「……それで、もし良かったらなのじゃが……クマ殿、妾と一緒に山賊退治に出向いてはくれぬか?」
そう言いました。
昨夜の今朝だけに、僕は若干気恥ずかしくて、頬が赤くなっていた気がするのですが……目の前のシャルロッタは、いつもの執務をこなしている時の彼女そのものでして、冷静沈着かつ知的な表情のままでした。
うん、そうだ。
この村で、シャルロッタのために頑張ると決めたんだし、公私の区別はしっかりつけないと……
シャルロッタの様子を見て、僕は改めて気合いを入れ直しました。
一度小さく咳払いをすると、
「シャルロッタのお願いなら、当然同行させてもらうよ」
当然ですが、そう返事を返しました。
そんな僕に、シャルロッタはにっこり微笑みました。
「ありがとうクマ殿。そう言ってもらえると本当に心強いのじゃ」
……いい
この笑顔のためならば、僕は魔王でも倒せるかもしれない……い、いや、魔王は無理だと思うけど……。
僕は、思わず顔がデレッとなってしいそうになるのを必死に堪(こら)えていた僕なのですが……そんな僕の眼前で、シャルロッタがクスッと笑いました。
「いや、クマ殿……倒すのは山賊であって、魔王ではないのじゃ」
「え? あ、あれ? い、今、僕、言葉にしてました!?」
クスクス笑っているシャルロッタ。
そんなシャルロッタの前で、僕は慌てて口を押さえました。
……ピリの時もだけど……この悪い癖はどうにかしないといけないな
改めて、強く思った僕でした。
* * *
……しかし、山賊退治に出かけるとなると少し困ったことがあります。
先日から僕自身の能力をあれこれ実際に試しながら調べているのですが……その中にひとつだけ、上手く使えなくなっている能力があるんです……
それが、あの超聴覚とでも言うべき能力なんです。
意識を集中するとかなり離れた場所の話し声なんかを、すぐ近くに感じることが出来るこの能力なのですが……この能力がどういうわけかほとんど使えなくなっているんです。
二度目にミリュウを助けた時にその能力を全開にして以降、その状態が続いています。
全く使えなくなっているというわけではなく、2,3日使用を控えてから試してみると、再びその能力を使用することが出来るようになることがあるのですが……ただ、その場合、その状態をあまり長い時間維持出来ない感じでして……しかも、その能力を使用しようとする度にすごい倦怠感に襲われるんです。
思い返して見ると、ミリュウを助けた後あんなことやこんなことがあって鼻血を吹き出しながら気絶してしまった僕なのですが……あの時もこんな状態だったような気がしないでもありません。
だからぶっ倒れて気絶し、その時同時に異常な倦怠感に襲われた結果、僕は当分の間目を覚ませなかったんじゃないか……そんな仮説をたてているのですが……さ、さすがに、シャルロッタにおでこ体温計をしてもらっただけでぶっ倒れたにしては度が過ぎていましたから。
だからといって、この異常な聴覚と、その能力を使用出来なくなると同時に襲ってくる異常な倦怠感の因果関係が証明されたわけでもなく、結局なぜこんなことになるかは未だに不明なままなんです……
この異常な聴力は、身体能力を強化出来る能力によって生み出されているものではなくて、全く別の何かが関与している能力……と、いうことになるんじゃないかってことはなんとなくわかった感じです。
考えようによっては、今回の山賊討伐では、この超聴覚が一番有効な能力といえなくもないだけに、とりあえず現地に向かうまでの間は、この能力を温存しておこうと思っています。
2,3日使わずにおけば多少回復しますので、そうすることでさらなる回復を期待出来るんじゃないかと思っているわけで……まぁ、何の確証もない憶測なのですが……なんというか、すごくしょぼい能力ですよね、ホント……
そんな事を考えながらシャルロッタの部屋を後にした僕は、自分の部屋へ入ろうとしたのですが、
「クマ様!」
そんな僕を呼び止める女性の声……
視線を向けると、そこにピリの姿がありました。
柔らかい感触が口に当たっていて、同時にすごくいい匂いが僕を包みこんでいきます。
……あぁ、なんかもう、このまま死んでもいいかも
そんな事を考えている僕なのですが……このシチュエーションに興奮してしまった僕の体の一部が過剰反応してしまって……はい、あの……か、下半身が……
「……ちょ、く、クマ殿……」
唇を離したシャルロッタも、僕の異常に気が付いたみたいでして……どこか上ずった声を漏らしています……って……そ、そういえば、以前、同じようなシチュエーションになった時って、この後激怒したシャルロッタに、おもいっきり踏んづけられて……
あの時の出来事を思い出した僕は思わず身構えてしまったのですが……
シャルロッタはというと、頬を赤くしたままうつむいているだけです。
「そ、その……こ、こういう事はじゃな……」
そんな上ずった声を漏らしたシャルロッタ。
その時でした。
コンコン。
「シャルロッタ様、お茶をお持ちしましたよ~」
部屋をノックする音と共に、ピリが執務室の中に入ってきました。
紅茶の乗ったトレーを片手に、元気な笑顔のピリ。
「う、うむ!? ぴぴぴピリ、いいいいつもすまぬのじゃ」
途端に、大慌てしながら僕の前から飛び退いていくシャルロッタ。
僕は僕で、
「お、お邪魔しましたぁ」
思いっきり裏返った声をあげながら、慌てて部屋を後にしたわけです、はい。
思いっきり前屈姿勢だったのは言うまでもありません。
「あ、クマ様もいたんだ。せっかくだしみんなでお茶を……」
ってピリが言っていたのですが……あんな事があった直後ですし、シャルロッタの顔をまともに見ることが出来るとは思いません。
自室へ駆け戻った僕は、ベッドへ飛び込みました。
……シャルロッタにキスしてもらえた。
……その感触を思い出しながら、僕はベッドの中でニヘラァっと笑ってしまうのを押さえることが出来ませんでした
* * *
翌朝。
僕は、シャルロッタの執務室へ呼ばれました。
なんでも、近隣の村の村長さんから書簡が届いたそうで、その相談をしたいそうなのですが……
「山賊退治?」
「うむ、そうなのじゃ。この村の山向こうにあるリットの街に山賊が出没しておるそうでな、その討伐を手伝ってほしいとの書簡が届いたのじゃ」
シャルロッタは僕へ視線を向けると、
「……それで、もし良かったらなのじゃが……クマ殿、妾と一緒に山賊退治に出向いてはくれぬか?」
そう言いました。
昨夜の今朝だけに、僕は若干気恥ずかしくて、頬が赤くなっていた気がするのですが……目の前のシャルロッタは、いつもの執務をこなしている時の彼女そのものでして、冷静沈着かつ知的な表情のままでした。
うん、そうだ。
この村で、シャルロッタのために頑張ると決めたんだし、公私の区別はしっかりつけないと……
シャルロッタの様子を見て、僕は改めて気合いを入れ直しました。
一度小さく咳払いをすると、
「シャルロッタのお願いなら、当然同行させてもらうよ」
当然ですが、そう返事を返しました。
そんな僕に、シャルロッタはにっこり微笑みました。
「ありがとうクマ殿。そう言ってもらえると本当に心強いのじゃ」
……いい
この笑顔のためならば、僕は魔王でも倒せるかもしれない……い、いや、魔王は無理だと思うけど……。
僕は、思わず顔がデレッとなってしいそうになるのを必死に堪(こら)えていた僕なのですが……そんな僕の眼前で、シャルロッタがクスッと笑いました。
「いや、クマ殿……倒すのは山賊であって、魔王ではないのじゃ」
「え? あ、あれ? い、今、僕、言葉にしてました!?」
クスクス笑っているシャルロッタ。
そんなシャルロッタの前で、僕は慌てて口を押さえました。
……ピリの時もだけど……この悪い癖はどうにかしないといけないな
改めて、強く思った僕でした。
* * *
……しかし、山賊退治に出かけるとなると少し困ったことがあります。
先日から僕自身の能力をあれこれ実際に試しながら調べているのですが……その中にひとつだけ、上手く使えなくなっている能力があるんです……
それが、あの超聴覚とでも言うべき能力なんです。
意識を集中するとかなり離れた場所の話し声なんかを、すぐ近くに感じることが出来るこの能力なのですが……この能力がどういうわけかほとんど使えなくなっているんです。
二度目にミリュウを助けた時にその能力を全開にして以降、その状態が続いています。
全く使えなくなっているというわけではなく、2,3日使用を控えてから試してみると、再びその能力を使用することが出来るようになることがあるのですが……ただ、その場合、その状態をあまり長い時間維持出来ない感じでして……しかも、その能力を使用しようとする度にすごい倦怠感に襲われるんです。
思い返して見ると、ミリュウを助けた後あんなことやこんなことがあって鼻血を吹き出しながら気絶してしまった僕なのですが……あの時もこんな状態だったような気がしないでもありません。
だからぶっ倒れて気絶し、その時同時に異常な倦怠感に襲われた結果、僕は当分の間目を覚ませなかったんじゃないか……そんな仮説をたてているのですが……さ、さすがに、シャルロッタにおでこ体温計をしてもらっただけでぶっ倒れたにしては度が過ぎていましたから。
だからといって、この異常な聴覚と、その能力を使用出来なくなると同時に襲ってくる異常な倦怠感の因果関係が証明されたわけでもなく、結局なぜこんなことになるかは未だに不明なままなんです……
この異常な聴力は、身体能力を強化出来る能力によって生み出されているものではなくて、全く別の何かが関与している能力……と、いうことになるんじゃないかってことはなんとなくわかった感じです。
考えようによっては、今回の山賊討伐では、この超聴覚が一番有効な能力といえなくもないだけに、とりあえず現地に向かうまでの間は、この能力を温存しておこうと思っています。
2,3日使わずにおけば多少回復しますので、そうすることでさらなる回復を期待出来るんじゃないかと思っているわけで……まぁ、何の確証もない憶測なのですが……なんというか、すごくしょぼい能力ですよね、ホント……
そんな事を考えながらシャルロッタの部屋を後にした僕は、自分の部屋へ入ろうとしたのですが、
「クマ様!」
そんな僕を呼び止める女性の声……
視線を向けると、そこにピリの姿がありました。
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