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もう婚約者チェンジでいいじゃないですかぁぁ ②

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え?

何故こんな事になってるんだ?

え?リリナ?

アレ?ライアンは?騎士たちはどこに行った?


急に力が入らなくなった僕を

リリナが押し倒してくる。

仰向けにされ、膝立ちのリリナに見下ろされる。


一体、華奢な腕のどこにこんな力があるんだ?


「暴れちゃダメですよぅウィリアム様。
魔力吸収すると見せかけて、ちょっと体が動かなくなる毒に近い魔力を注入ちぅにぅ♡しときましたから。
あ、ちなみに認識阻害と空間結界を張ってますから、周りにはアタシたちが認識できません、大きな声で助けを呼んでもムダですよ♡」

「なっ…!?えっ…!?
なんで、どうしてリリナにそんな魔法が使えるの!?」

認識阻害と空間結界を同時に施術出来るなんて、魔導師並みの魔力量だ。

術を組み込んだ魔道具があるなら話は別だけど、見たところそんな道具なんて見当たらない。

リリナにそんな事出来るはずはないのに…

僕はただ、思考さえも麻痺しそうな状態の中で必死に抵抗した。

「ふふふ♪どうしてアタシにそんな力があるのか不思議ですかぁ?
簡単ですよ、ウィリアム様から吸収した魔力を昇華せずにアタシが使わせてもらってるんです♪」

「え、えっ、えぇぇ!?」

「これまでも色々使わせてもらいましたよぅ。とりあえず、ウィリアム様の周りの人たちはみんなアタシが魅了をかけてまぁす」

「魅了」という言葉に
僕は目を見開いた。

禁術とされる
最悪最低の魔法だ。

人の心に触れる魔法で、倫理的な問題から術の管理は教会が行っているはずだが。

「……!」

「あら、バカだと思ってたら意外と頭は働くんですねぇ。そうか、座学は優秀だってウィリアム様の侍従の一人に聞いたっけ。そうですよ、教会がアタシに魅了魔法を授けてくれました♪」


「な…何故教会が…?そんな事を…?」


「さあ?教会の目的は知りませんが、アタシとの利害が一致したのは間違いないですね♪アタシはねウィリアム様、贅沢な暮らしがしたいんですよ。だからずーっとウィリアム様の側に居たいんです。でもなぜかウィリアム様には中途半端にしか魅了が掛からない。どうしてですか?やっぱりアレ?王家の魔術返しってヤツですか?」


混乱の真っ最中の僕の上に
リリナが馬乗りになった。


「っ……!」

そしてリリナは語り続ける。


「アタシは生まれた時から孤児で、すんごく苦労したんですよー。でも癒し系の魔力があったから、早いうちに教会に拾われて。もう色んな事を学びましたよ♪でもアタシはもう、利用されるのはゴメンなんです。これからは利用する側の人間になりたい」

そう言いながらリリナはゴソゴソ動き始めた。

「えぇ!?ちょっ…リリナ、待っ…!な、なんで僕のトラウザースの前を寛げるの!?」

「ふふふ♪」
リリナはなんだか楽しそうに笑う。

僕はもう、何がなんだかわからなくなって只々混乱するばかりだった。

動かない体でなんとか身をよじろうとするも全く上手くいかない。

僕はリリナに懇願した。

「リ、リリナ!こんな事はやめてくれっ…ダ、ダメだよっ!ちょっ…リリナ!」

リリナはお構いなしに僕のジュストコールのボタンを外していく。

僕は必死になってリリナを説得しようと試みた。

「リリナ!処女でなくなったら力がなくなるんじゃないの!?力が無くなったらここから追い出されるよ!?」

あ、どうせ追い出すんだった…

まずい、コレはまずい…


当のリリナは飄々として
僕の首もとのクラバットに手をかけながら言う。

「問題ありません、むしろおーるおっけーです!癒しの乙女じゃなくっても、ウィリアム様の子種をいただいちゃえば、正妃は無理でも側妃くらいにはしてもらえますよね♪あ、贅沢させてくれるなら愛妾でもいいですよ」

「こんな大罪を犯したキミを妃になんか迎えるわけないだろっ…!」

「そこも問題ありません、うふふ♪教会から記憶操作の魔法も教わってますから、いまのハナシはキレイさっぱり忘れてもらいます。素敵な思い出だけを上書きして差し上げてますよぅ♡」

「リっ…リ、リニャ…!」

あぁ上手く舌が動かない……

ていうか記憶操作の魔法まで!?


リ、リリナってもしかして
めちゃくちゃ優秀な魔術師なんじゃ……。


でもその魔法の発動に必要な魔力は
僕の魔力に払わせるんだろ!


あぁ!シャツのボタンに手をかけ始めた!!

や、やめてっ…!


「あ、ちなみにきっと次に送られてくる後任の乙女はアタシの妹分の子だと思います。そう言う手筈になってましたから♪でもとってもいい子だから安心してくださいね」

え、えぇぇー……。

手筈って……リリナは本当に最初からそういう目的で僕の側にいたのか。

何故今までわからなかったのか。

いやちゃんと考えればわかる事だよな?

でも、何もおかしいと思わなかった。

ただ毎日リリナと一緒にいて楽しいと思っていた。

愛してるのはフェリシアだから

友達みたいな感覚だと

疑う要因なんて何もなかった。

じゃあ周りの人間は
誰も変に思わなかったのか……?

あ、そうだった、僕の周りはみんな、リリナの味方だったんだな。


ライアンは?

あいつもリリナの魅了にやられてるのかな?

でも最側近と呼ばれる者には
王族と同じ魔術返しがかけられているはずなんだけど。


最初の方は
僕とリリナについて色々言ってきてうるさかったけど、突然何も言わなくなったんだよな。

あいつ、
この頃いなくなる事が多いけど、
それと関係してるのかな……


もう何がなんだかわからない……


どうして僕はこんな……


あっ!リリナ、乳首を摘ままないでっ…!

「さぁそろそろお楽しみの時間です。大丈夫ですよ、お互いハジメテですもん、下手くそでも恥ずかしくないですよ♡たっぷりご奉仕しますから、その代わりたっぷり子種を注いでくださいね!
あぁでもちょっと待ってください、アタシだけ痛いの嫌だから痛点を麻痺させる魔法を自分に施しますネ♡」


ちょっ…もうホント色々と限界…

だ、誰か助けてくれ……


フェリシア……には絶対こんなところ見られたくないな、

誰か、誰かっ…

もうホントに、誰かっ…!


リリナが僕の王子に触れようとした絶体絶命のその瞬間、


眩い閃光と共に地の底と天上が震撼するほどの轟音が轟いた。


「っ!!??」

「キャーーーーッ!!」

僕は咄嗟に結界を張るものの、

リリナはダイレクトに爆風に煽られて僕の上から吹き飛んだ。

激しい爆風と共に大量の瓦礫が僕たちに襲い掛かる。

張られた結界がしなるほど、凄まじまい衝撃だった。


何故、この国で一番堅牢に護られた城が襲われたのか。

敵襲か?

騎士団はどうした?

と、とにかくせめて体勢を整えないと…!

僕は情けない服装のまま、

動かない体を叱咤する。


そんな時、耳に届いたのは 

爆音でも轟音でもなく

涼やかな女性の声だった。



「ごめんあそばせ、ちょっと急いでいたものだから勝手に入り口を造らせて貰ったわ」


巻き上がる砂埃や魔法残滓の合間から

その人の姿が現れる。


「……っフェリシティ様……!?」


侯爵夫人にして
僕の叔母、
そして現役を退いたとはいえ未だ最強と謳われる伝説の魔術騎士。



フェリシアのお母上の
突然の入来だった。













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