56 / 136
ミニ番外編
過去を振り返って…… るちあん、王都へ移り住む③
しおりを挟む
王都に移り住んだルシアンが、ワイズ侯爵家の面々へ雷に似た衝撃を与えた同じ日。
孫の愛くるしさに血圧が急上昇した為に寝室へとドナドナされたアルドンとアメリアだったが、
寝てばかりいては孫が帰ってしまうと早々に起き出した。
アメリアはお化粧や髪を結い直してから再びルシアンの元へ戻ったのだが、
既にそこに孫の姿はなくフェリックスとハノンが居るばかり。
「あら?ルシちゃんはどこに行ったの?そういえばアルドンも見かけないけれど……」
部屋の中を見渡すアメリアにハノンが答えた。
「お義父さまならルシアンに見せたいものがあるとか仰って、二人で別室に行かれましたよ」
「まぁそうなの?あの人ったらルシちゃんを一人占めしてズルいわ。でもいいの、ハノンさんともゆっくりお話をしたかったから。二人でティールームでお茶にしましょう」
「はい。喜んで」
どこかの世界の居酒屋のような返事をハノンが返したその時、廊下の方から大きな声で泣くルシアンの声が聞こえた。
「ルシーっ?」
それに反応し、いち早く部屋を飛び出したのは父親であるフェリックスだった。
ワイズ侯爵家の広く長い廊下の向こう、声がした方に視線を向けるとそこには泣きべそをかくルシアンを困り果てた様子で抱きながらこちらへ向かってくるアルドンの姿が見えた。
「父上?ルシーはどうしたのですか?」
ぱぱが来たのを見て、ルシアンは泣きながらフェリックスに手を伸ばす。
「ぱぱぁ……っ」
フェリックスはアルドンから息子を抱き直し、泣いているルシアンを優しく宥めた。
「ルシー?どうした?何をそんなに泣いているんだ?どこか痛いところでもあるのか?」
「うっ…ぐしゅ…ひっく…くましゃんのおばけっ…」
「クマのオバケ?」
「くましゃんおばけ、こわいよぅ……っ」
ルシアンはそう言ってフェリックスの肩に顔をぎゅうっとくっ付けてまた「ひーん」と泣き出した。
ルシアンの言葉だけでは要領を得ないフェリックスがアルドンに問いかける。
「父上、ルシーは一体どうしたんですか?何故こんなに怯えて?」
アルドンは気不味そうに頭をかきながらそれに答えた。
「いやその……ルシアンが大の熊好きだと聞いていたものだから、それならきっと本物が見たいだろうと私が猟で仕留めた超巨大なアデリオールエンシェントベアの剥製をだな……」
「見せたんですかっ?こんな小さな子に?あのどデカい熊の剥製をっ!?」
「だって喜ぶと思って……」
「そんなわけないでしょう。あんなの大人が見てもビビりますよ!」
「えーんっ、くましゃんおばけきらいっ……」
「す、すまんルシアン……」
孫を怖がらせてしまった事で、祖父はもうシオシオである。
体長三メートルは優に越すアデリオールエンシェントベアを一太刀で仕留めた男と同一人物とは思えない。
話を聞いていたアメリアが呆れ果てたようにこめかみを押さえていた。
「だからあれほど言ったのに……クマと熊は違うのです!……どうせご自分が仕留めた熊を見せてルシーちゃんに『おじぃたましゅごい!』と言って貰いたかっただけでしょうっ?」
「め、面目ない……」
その後、結局ハノンの腕の中に戻ってルシアンはようやく泣き止んだ。
3しゃいの孫に腕自慢をし、尊敬してもらいたいというアルドンの目論見は見事失敗に終わったのだった……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だからじーさん熊はやめろと言ったでしょーが。
るちあんはこの後、初対面したキースとバスターに思いっきり遊んで貰ってすぐにまたご機嫌になったそうな。
孫の愛くるしさに血圧が急上昇した為に寝室へとドナドナされたアルドンとアメリアだったが、
寝てばかりいては孫が帰ってしまうと早々に起き出した。
アメリアはお化粧や髪を結い直してから再びルシアンの元へ戻ったのだが、
既にそこに孫の姿はなくフェリックスとハノンが居るばかり。
「あら?ルシちゃんはどこに行ったの?そういえばアルドンも見かけないけれど……」
部屋の中を見渡すアメリアにハノンが答えた。
「お義父さまならルシアンに見せたいものがあるとか仰って、二人で別室に行かれましたよ」
「まぁそうなの?あの人ったらルシちゃんを一人占めしてズルいわ。でもいいの、ハノンさんともゆっくりお話をしたかったから。二人でティールームでお茶にしましょう」
「はい。喜んで」
どこかの世界の居酒屋のような返事をハノンが返したその時、廊下の方から大きな声で泣くルシアンの声が聞こえた。
「ルシーっ?」
それに反応し、いち早く部屋を飛び出したのは父親であるフェリックスだった。
ワイズ侯爵家の広く長い廊下の向こう、声がした方に視線を向けるとそこには泣きべそをかくルシアンを困り果てた様子で抱きながらこちらへ向かってくるアルドンの姿が見えた。
「父上?ルシーはどうしたのですか?」
ぱぱが来たのを見て、ルシアンは泣きながらフェリックスに手を伸ばす。
「ぱぱぁ……っ」
フェリックスはアルドンから息子を抱き直し、泣いているルシアンを優しく宥めた。
「ルシー?どうした?何をそんなに泣いているんだ?どこか痛いところでもあるのか?」
「うっ…ぐしゅ…ひっく…くましゃんのおばけっ…」
「クマのオバケ?」
「くましゃんおばけ、こわいよぅ……っ」
ルシアンはそう言ってフェリックスの肩に顔をぎゅうっとくっ付けてまた「ひーん」と泣き出した。
ルシアンの言葉だけでは要領を得ないフェリックスがアルドンに問いかける。
「父上、ルシーは一体どうしたんですか?何故こんなに怯えて?」
アルドンは気不味そうに頭をかきながらそれに答えた。
「いやその……ルシアンが大の熊好きだと聞いていたものだから、それならきっと本物が見たいだろうと私が猟で仕留めた超巨大なアデリオールエンシェントベアの剥製をだな……」
「見せたんですかっ?こんな小さな子に?あのどデカい熊の剥製をっ!?」
「だって喜ぶと思って……」
「そんなわけないでしょう。あんなの大人が見てもビビりますよ!」
「えーんっ、くましゃんおばけきらいっ……」
「す、すまんルシアン……」
孫を怖がらせてしまった事で、祖父はもうシオシオである。
体長三メートルは優に越すアデリオールエンシェントベアを一太刀で仕留めた男と同一人物とは思えない。
話を聞いていたアメリアが呆れ果てたようにこめかみを押さえていた。
「だからあれほど言ったのに……クマと熊は違うのです!……どうせご自分が仕留めた熊を見せてルシーちゃんに『おじぃたましゅごい!』と言って貰いたかっただけでしょうっ?」
「め、面目ない……」
その後、結局ハノンの腕の中に戻ってルシアンはようやく泣き止んだ。
3しゃいの孫に腕自慢をし、尊敬してもらいたいというアルドンの目論見は見事失敗に終わったのだった……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だからじーさん熊はやめろと言ったでしょーが。
るちあんはこの後、初対面したキースとバスターに思いっきり遊んで貰ってすぐにまたご機嫌になったそうな。
302
お気に入りに追加
9,689
あなたにおすすめの小説
【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。
気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。
私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。
母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。
父を断罪できるチャンスは今しかない。
「お父様は悪くないの!
お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!
だからお父様はお母様に毒をもったの!
お願いお父様を捕まえないで!」
私は声の限りに叫んでいた。
心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※タイトル変更しました。
旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
謝罪のあと
基本二度寝
恋愛
王太子の婚約破棄騒動は、男爵令嬢の魅了魔法の発覚で終わりを告げた。
王族は揃いも揃って魅了魔法に操られていた。
公にできる話ではない。
下手をすれば、国が乗っ取られていたかもしれない。
男爵令嬢が執着したのが、王族の地位でも、金でもなく王太子個人だったからまだよかった。
愚かな王太子の姿を目の当たりにしていた自国の貴族には、口外せぬように箝口令を敷いた。
他国には、魅了にかかった事実は知られていない。
大きな被害はなかった。
いや、大きな被害を受けた令嬢はいた。
王太子の元婚約者だった、公爵令嬢だ。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
(完結)私の夫を奪う姉
青空一夏
恋愛
私(ポージ)は爵位はないが、王宮に勤める文官(セオドア)の妻だ。姉(メイヴ)は老男爵に嫁ぎ最近、未亡人になったばかりだ。暇な姉は度々、私を呼び出すが、私の夫を一人で寄越すように言ったことから不倫が始まる。私は・・・・・・
すっきり?ざまぁあり。短いゆるふわ設定なお話のつもりです。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
かわいそうな旦那様‥
みるみる
恋愛
侯爵令嬢リリアのもとに、公爵家の長男テオから婚約の申し込みがありました。ですが、テオはある未亡人に惚れ込んでいて、まだ若くて性的魅力のかけらもないリリアには、本当は全く異性として興味を持っていなかったのです。
そんなテオに、リリアはある提案をしました。
「‥白い結婚のまま、三年後に私と離縁して下さい。」
テオはその提案を承諾しました。
そんな二人の結婚生活は‥‥。
※題名の「かわいそうな旦那様」については、客観的に見ていると、この旦那のどこが?となると思いますが、主人公の旦那に対する皮肉的な意味も込めて、あえてこの題名にしました。
※小説家になろうにも投稿中
※本編完結しましたが、補足したい話がある為番外編を少しだけ投稿しますm(_ _)m
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。