妻と夫と元妻と

キムラましゅろう

文字の大きさ
上 下
7 / 24

気持ち悪っ

しおりを挟む
「メラニー…お前、わざと妻が経営する下宿に決めたんだろう」


最愛の妻であるアシュリからメラニー=オーウェンと契約を結んだ話を聞いた次の日、俺はさっそく離婚した元妻であるメラニーに抗議するべく話掛けた。

メラニーはそれには答えず、相変わらずこちらを小馬鹿にしたような口調で言った。

「アラ、同じチームになってからというもの、ワタシの事を空気として扱っていたアンタから話し掛けてくるなんてどういう風の吹き回しかしら?」

「本当ならこのプロジェクトが終わるまで極力話し掛けるつもりはなかった。だけどお前がコソコソと俺のテリトリーに土足で入ってくるなら話は別だ」

「まぁ~ワタシってば随分嫌われたものね?これでも一時は夫婦だったんだし、別れる時も円満離婚だったじゃない?」

少しも悪びれる様子もなく言うメラニー。
俺が自分の事を嫌う訳がないと気持ち悪い勘違いをし続けたままだという事が如実に伝わってくる。

「夫婦だったのは戸籍の上だけだ。それも一年間だけ。円満も何も全部お前の都合だけで決めた事だろう」

「でもアンタも喜んでたじゃない。わたしと離婚出来るのを」

「当たり前だ。少しの辛抱だけだと思ったら入籍したんだ。そうでなきゃ家出して姿を晦ましていた」

「まぁぁ、育てて貰ったくせに恩知らず~」

「……」

ダメだ。
子どもの頃からの慣い性ですぐコイツのペースに乗せられてしまう。

俺は端的に告げた。

「妻と交わした賃貸契約を解消しろ。他の下宿先を探せ」

「わ~偉そうに。特級魔術師になったからって上から目線でものを言わないでよね~。悪かったわね~こっちはまだ二級で」

「くだらない男にうつつを抜かしていたからだろ」

「アラやだヤキモチ?ワタシに相手にして貰えなくてホントは寂しかった?」

「……気持ち悪っ……」

俺は思わず虫ケラ魔獣を見るような目つきで言った。

「もう!とにかくワタシはあの下宿とアンタの今妻が気に入ったの。絶対にあそこに住むから。今妻サンすんごい美人よね~、アンタが面食いなんて知らなかったわ~」

「今妻なんて呼び方をするな。それに彼女の素晴らしさは外見だけじゃない」

「ふーん、ご馳走様?下宿の契約書はさっさと王宮の事務方に渡しちゃったらから今さら解約の手続きなんて無理よぅ。下宿側からの解消の要請なんて、評判にキズが付くんじゃな~い?」

「くそっ……!」

思わず歯噛みする俺を見て、メラニーは勝ち誇ったような顔をして微笑んだ。

「今晩からそっちに住むからヨロシクね~♪昔みたいに一緒に暮らせて嬉しいわ~」

そう言ってメラニーはご機嫌なステップを踏みながら去って行った。


どうしてアシュリの下宿を選んだんだろう。

親を欺いてまでも付き合っていた恋人はどうした。

知りたくは無いがそんな疑問ばかりが浮かんで来る。

メラニーアイツが何を考えているのは分からないが、とにかく絶対にアシュリとの幸せな暮らしを守らねばならない。

最悪、事故に見せかけてなんらかの魔術を掛けてやる……なんて仄昏い考えが浮かんだ事は、愛する妻には絶対に秘密だ。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?

ハリエニシダ・レン
恋愛
大好きな恋人に番が見つかった。 当然のごとく別れて、彼は私の事など綺麗さっぱり忘れて番といちゃいちゃ幸せに暮らし始める…… と思っていたのに…!?? 狼獣人×ウサギ獣人。 ※安心のR15仕様。 ----- 主人公サイドは切なくないのですが、番サイドがちょっと切なくなりました。予定外!

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

「君を愛することはない」の言葉通り、王子は生涯妻だけを愛し抜く。

長岡更紗
恋愛
子どもができない王子と王子妃に、側室が迎えられた話。 *1話目王子妃視点、2話目王子視点、3話目側室視点、4話王視点です。 *不妊の表現があります。許容できない方はブラウザバックをお願いします。 *他サイトにも投稿していまし。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

処理中です...