ゴーストスロッター

クランキー

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【第5章(最終章)】

■第124話 : ヒントにならないヒント

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「よぉ、広瀬君。今日は悪いね、こんなこと頼んじゃって。
 もちろん、後でお礼はさせてもらうからさ」

到着した広瀬に、神崎がにこにこしながら感謝の言葉を述べた。

同じくにこやかに返す広瀬。

「そんなに気を使ってもらわなくてもいいよ。君ら二人の勝負には俺も個人的に興味あるし、関係者として関われるのは結構嬉しいからね。
 あ、ちなみにこいつは伊藤っていうんだ。俺がこの勝負の審判みたいなものでしょ? でも、俺も途中でトイレ行ったりメシに行ったりもするだろうから、その時に誰か代わりがいた方がいいかなぁと思って。副審みたいなもんだと思ってもらえればいいよ」

紹介された伊藤は、神崎たちに向かって無言のままペコリとお辞儀をした。

神崎が言う。

「なるほど、さすがは配慮が行き届いてるね! やっぱり君に頼んでよかった。それじゃ、今日はよろしく!」

互いに軽く会釈をし、最初の挨拶を終えた。

そして広瀬は、土屋や優司たちの方へ体を向けた。
表情は、変わらずにこにこしたまま。

「ってことで、そちらさんも今日はよろしく。言うまでもなく中立に判断するから、俺の判断にはそっちも必ず従うようにして欲しいんだ。それさえ守ってくれれば、最後までやり切るんで」

土屋側からは、誰も返事をしなかった。
優司も、気まずそうに伏し目がちになっている。

少し間が空いてから、仕方なく土屋が返事をする。

「……ああ、わかったよ。今日は頼むぜ。くれぐれも中立に、な」

「ああ、わかってる」

にこやかな表情から少し笑みが消え、広瀬はそう答えた。



神崎側は、神崎、伊達、サトル、ノブの4人。
土屋側は、土屋、丸島、吉田、柿崎、優司の5人。
審判として、広瀬と伊藤。

合計11人。
これで、今日の勝負の役者は全員が揃ったことになる。



「それじゃあ最後に、今日のルールについて、最終確認の意味で今から口頭で伝えるんで、どっちも聞いててください」

そう言って広瀬は、勝負前の最後のルール再確認を行なった。

内容を要約すると、以下のようになる。



■■■■■■■■■■■■

【勝利条件】
設定6を掴んだ方が勝ち。
二人とも6を掴んだ場合は、台に着席した時間が早い方を勝ちとする。
つまり、引き分け再勝負となるのはどちらも6をハズした場合のみ。


【台移動】
禁止。
一度台を選んだらもう移動はできない。
台を選ぶ時間に制限はなし。
ただし、設定発表までに台を選ばなければ失格。


【仲間同士の協力】
ほぼ全面的に禁止。
例えば、仲間内で稼動して設定6をあぶりだし、それをプレーヤーに渡すような行為。
ただし、設定予想のための相談程度ならばあり。
微妙な行為に対しては、その都度審判である広瀬が判断。
その判断には双方絶対に従うこと。


【勝負終了時間】
「設定発表を始めます」のマイク放送が始まったところで勝負終了。
このホールの場合、設定発表がランダムで、15:00~22:00のどこで行なわれるかわからない。
設定発表開始のマイク放送が始まった時点で台を選べていない場合は、当然その場で失格。


【戦利品】
負けた方は、この街のホールで二度と打たない。
勝った方は、そのままこの街に残り自由に稼動してよい。

■■■■■■■■■■■■



こういった内容だった。

黙って説明を聞きつつ、時折小さく頷く一同。
今日一日の運命を左右することだけに、皆真剣に聞き入っている。

そして優司は、説明中ずっと俯いたままだった。
とにかく気まずい、といった感じで。

広瀬も、特に優司の方を見ようとはしなかった。

優司は思う。

(俺に対して呆れてるのか、同じく気まずく感じてるのか、それとも中立を保とうと無理して無視をしているのか、それか全然違う理由か……。どうしたんだろう、広瀬君……)

広瀬の態度についていろいろ考えを巡らす優司。

しかし、今はそれどころではない、勝負に集中しなければ、と思いなおし、必死で邪念を追い払おうとした。

(今、余計なことを考えるのはやめよう。今やるべきことに集中するんだ。
 まずは朝一に出されるヒントだ。このヒントの解読から、今日一日が始まる。なんとしてでも、神崎より先にヒントに込められた意味を解読しないとっ……)

広瀬の説明が終わると、時間は開店2分前となっていた。



◇◇◇◇◇◇



「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ! 本日も当ホールへお越しいただき誠にありがとうございます!」

大音量の音楽とともに漏れ響くマイク放送。
『ミラクル』が開店したことを意味する。

と同時に、優司と神崎との勝負の火蓋が切って落とされた合図でもある。

優司たち以外の客は10人ほど。

朝一から6のありかを示唆するヒントが出されるとはいえ、そのヒントが「読み解くのが困難」ということが知れ渡っているため、ヒント目当てで並ぶ人間も少なかった。

優司と神崎を先頭に、外階段を使って皆やや早足で2階のパチスロフロアへ上がっていく。

そして二人は、軽く緊張した面持ちで景品カウンターの方へ向かった。

景品カウンターの横にある大きな掲示板。
そこにある貼り紙に、本日の設定6のありかを示すヒントが書かれているからだ。

土屋や伊達や広瀬たち、そしてその他の客も、皆ヒントを見ようと掲示板へ向かう。

そして、ほぼ同時に掲示板の前へ到着した優司と神崎。
二人とも、貼り出されているヒント文章を凝視した。

するとそこには、以下のような文章が書かれている紙が貼りだされていた。


=== 本日の6のありか ===
『吉宗以外、昨日の設定6がなんとそのまま! もちろん、追加された6もあり!』


二人は、思わず眉間にしわを寄せた。 
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