ゴーストスロッター

クランキー

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【第1章】

■第6話 : 復讐の狼煙

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藤田が立ち去った後も、しばらく優司はへたり込んだままその場から動けなかった。

あっさりと裏切られた情けなさと、怒りと、金が入った時の期待が空回りしたのとが入り混じり、今まで感じたことのないようなドン底の気分になっていたのだ。

(嘘だろ……。絶対に嘘だ……。ありえないって、こんなの……)

心の中で、この言葉をひたすら繰り返す。
当たり前だが、何も状況は変わらない。



へたり込んだ体勢のまま数十分が経過した頃、ようやく立ち上がりフラフラと歩き出す優司。
もちろん、行くあてなどない。

(どうすりゃいいんだ……。もう、何もする気が起きない……)

今まで、比較的平々凡々と、いや、どちらかと言うと裕福な家庭で育ってきた優司。
そんな優司には、大金が絡んだ時における人間の最も醜い部分までは読みきれなかった。

しばらくの間、茫然自失となり、あてもなく街を彷徨い歩くことしかできなくなっていた。



◇◇◇◇◇◇



藤田とのトラブルから2日が経過。
優司は、結局今までの生活に戻ってしまっていた。

ひたすらホールを回り、コソコソとコインを拾いまわり、打ちもしないのに細かくデータを取り続ける生活に。

しかし、一見今までと全く変わらない行動をしているが、実は違った。
藤田から受けた、あの屈辱的な仕打ちを忘れてはいなかったのだ。

恨みを晴らすために、優司が最初にとった行動は「藤田についてもっと深く知ること」だった。

(このままで済ますと思うなよ……
 俺を裏切ったこと、死ぬほど後悔させてやる……)

この思いだけを頼りに、心のダメージと、大金を逃した脱力感を相手に、なんとか耐えてきた。

そしてまた1日が終わり、財布の中身を確認しながら晩飯のことを考える。
残金982円。

(今日もおにぎり1個か……
 藤田の野郎……。必ず俺以上の苦しみを与えてやるからな……)

復讐心。
これだけが、今の優司を支える唯一のもの。



◇◇◇◇◇◇



いつもの生活に戻り、2週間が経った。

優司は、コイン拾いで集めた金でなんとか生活をしていた。
もちろん、いつ倒れてもおかしくないような食生活だが。

しかし、この2週間で収穫もあった。
その収穫とは、当然藤田のこと。

あまり人見知りをしないタイプの優司なので、ホールにいる常連たちに話しかけて情報を収集する作業は、さほど苦ではなかった。

しかも、強い復讐心がバックボーンとなっているので、苦どころかやりがいすら感じながら調査を進めていたのである。

優司の調べ上げた藤田に対するデータは以下のとおり。

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●年齢は19歳

●職を持たないスロニート

●下調べ通り、ヒキだけで打つ読みの効かない甘ちゃんスロッター

●だが、あるスログループに属しているため、なんとか喰えている

●属しているスログループのリーダーは日高という男

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普段はタラタラと一人で打っているが、週に何日かは、属しているグループのリーダーである日高の指示に従って打つことで分け前をもらい、なんとか生活できている模様。

(くそっ、なんだよそれ。
 こんなハンパな野郎に俺は……)

藤田のことを知るにつれて、怒りはより一層強いものとなった。

優司は、なんとかして藤田をやり込めるため、必死に作戦を練った。

(直接藤田に接触しようとしても、あれだけのことをした後だからどうやって接近しても警戒されるだろうな。
 俺がいろいろ嗅ぎまわってることも知ってるかもしれないし。
 まずは、藤田をグループから孤立させる方向で攻めるか。
 そうすればあんなダメ男、一発で破綻するはずだ。
 それが復讐の第一歩だ!)

時間だけは腐るほどある。
有り余りすぎて困るくらいなのだ。

藤田をやり込めるためのアイデアは次々と浮かんだ。

しかし、いろいろと考えは浮かぶものの、どれも決定的なものはなく、悶々と悩む日々が続いた。
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