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番外編②後編 - GOLEM / SHADOW編
番外編②-24 – "ゆづ"
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「こ……こいつは……」
DEED残党のリーダーとしてここ1ヶ月、中心的役割を果たしてきた許斐が拳銃を牧田に向けながら話そうとするのを花は面倒くさそうに手で制する。
「もう調べはついてるわ。そこの牧田佑都はPCパーツやPC周辺機器、特にVRヘッドギアを中心として海外との貿易を展開している牧田貿易株式会社の1人息子。あなたたちDEEDは資金確保のためにその子に薬物を混入し、その様子を両親に送り付けて脅迫、無理やり仲間にした。そうでしょう?」
許斐はギリッと歯を食いしばりながら黙って花の話を聞いている。
「だからどうした! それ以上は近付くな! こいつの頭を弾くぞ!」
許斐は持っている拳銃を牧田のこめかみに押し付けながら花に脅し文句を向ける。花は「はぁ」と溜め息をついた後に一瞬で許斐の背後を取り、強烈な手刀を首筋に見舞って許斐を気絶させる。
花は気絶した許斐に手錠と異不錠を取り付けた後に隣で怯えている牧田の方を向く。
「私は警察よ。安心して。もう大丈夫」
花はそう言って牧田の背中をさすりながら告げる。花はその間に牧田の傷付いた身体を観察する。
「(やはり自らDEEDに加入した訳ではないか……。許斐からの扱いを見ても暴力や脅迫を受けていたに違いないわね。親も保身に走ってしまった。可哀想に……)」
「牧田くん、あなたに聞きたいことがあるの」
花は静かに牧田に話しかける。牧田は「はい……」と聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で答える。花は端末からGOLEMの画像を牧田に見せながら尋ねる。
「このガタイの良い男……GOLEMを知ってる?」
「……はい」
牧田は震える声ながらもハッキリと肯定する。花は「それじゃ……」と今度は先ほど愛香から送られてきた内倉祥一郎の画像にスワイプして牧田に見せる。
「内倉祥一郎先生……あなたの4年前の第三地区高校での副担任、翌年にも生物の授業を習ってるはずよ。覚えているわね?」
"内倉祥一郎"という名を口にした瞬間、牧田の表情に緊張が走ったのを見て花は杉本の言っていた推論が限りなく正解に近いと考え始める。
「知っていること、正直に答えてもらえるわね?」
無言の牧田に対して花は念を押す。ここで牧田は一瞬目を閉じた後に意を決したかのように軽く頷き、話し始める。
「内倉先生のこと勿論、覚えてます。授業を担当してもらってましたし、男子バスケ部の顧問としてもお世話になってましたから」
花は静かに牧田の話を聞いている。花の敢えて牧田を焦らさずに自分のペースで話させるその姿勢が功を奏し、牧田は徐々に心にゆとりが生じ始めて明瞭に話すようになった。
「ディ……DEEDの麻薬のオークション、それが始まる数日前に仮面の男2人が現れたんです」
花は1ヶ月ほど前にあった横手の証言資料を思い返しながら牧田の言葉を聞く。
「彼ら2人が大体DEEDの悪事に対して協力をしてくれていたんです」
「血液を分けることを条件に?」
「はい」
花はここで初めて口を挟み、牧田はそれを肯定する。「続けて」という花の言葉に頷いて先を続ける。
「勿論、俺はそんな直接の交渉の場になんか居合わせたことはありません。それまで俺はチラッと姿を見たことがあるだけでした。2人とも不気味な仮面を着けていて、怖くて……」
牧田はGOLEMとSHADOWの姿、そして2人が纏う禍々しいサイクスを思い出したのか汗が吹き出る。
「それでその日、受け渡す血液量がいつもより足りなくて……というより自分や数人の一般の人たちやまだ学生の人たちがその採血をやり忘れていたんです。その……DEEDの人たちに無理やり薬を入れられていて……そのせいで意識が朦朧とすることが多くなってて……」
花は気絶している許斐の懐から2種類の首に装着するタイプの注射器が落ちているのを見つけて手に取る。
花はボディーバッグから簡易分析用の試験管を取り出して液体を移す。試験管には予め液体を簡易的に分析するナノマシンが付着しており、それによって得た情報をデータ化して自動的に警察手帳に送信される。
花は装着していた予備の度入りのスマートグラスのテンプル部分 (耳に掛かる部分) に軽く触れてXRモードをオン、注射器に入っている2つの液体の様子とデータを即座に科捜研へと送信する。
––––ピッ
少ししてから花のスマートグラス上に科捜研から受信したデータがARによって空間に表示される。花は1ヶ月前に採取されて分析された2種類の薬物と許斐が持っていた薬物が一致するものであるというデータを見ながら思考する。
「(なるほど。牧田くんが複数回に渡って薬物を無理やり投薬されている割に意識がはっきりしているのは、DEEDが海外から密輸した、薬物を中和させて幻覚や意識障害を抑え、薬物による快感のみを残す別の薬物も混入されたからか)」
花は牧田の身体にある打撲の他に自ら行ったであろう引っ掻き傷を見ながらそのもう1つの薬物は、逃走での煩わしさを減らすためにここ1ヶ月の間に牧田に積極的に投薬されたのだろうと推察する。
「それで、採血を忘れていたのをDEEDの連中に責められて暴力を振るわれていたんです」
牧田は花がMRを利用することによるハンドスワイプ操作を一通り終わらせたのを確認してから再び話し始める。
「そしたらその場にGOLEMとSHADOWの2人が居合わせて……。GOLEMが怒り始めたんです」
牧田はその後、また軽く目を閉じる。そして何かを考えた後にゆっくりと目を開いて花を真っ直ぐ見つめ、ゴクリと唾を飲み込んだ後に言葉を続ける。
「その時彼が小さな声で『どうして……ゆづ』って俺のことを呼んだのを聞きました」
花は「ゆづ?」と牧田に聞き返す。牧田は頷いた後に説明を始める。
「刑事さん、女優の植村 佑都ってご存知ですか?」
「えぇ」
植村佑都は5年ほど前にデビューして以来、演技派女優として知られ、その可愛らしいルックスも相まって老若男女問わず人気を博している国民的人気女優である。
「俺の名前は"ゆうと"って読み方だけど漢字は一緒で……このことがバスケ部の中で話題になってから部活の中では俺のことを皆んな『ゆづ』って呼ぶようになったんです。それは顧問の内倉先生も例外ではなく、授業以外では俺のことをそう呼んでいました」
ここで花は杉本の推論が正しかったと確信する。
「それであなたは……気付いたのね?」
牧田は少しの沈黙の後に頷く。
花はギリッと歯を噛み締めた後に牧田に向かって「ありがとう」と礼を告げた。
DEED残党のリーダーとしてここ1ヶ月、中心的役割を果たしてきた許斐が拳銃を牧田に向けながら話そうとするのを花は面倒くさそうに手で制する。
「もう調べはついてるわ。そこの牧田佑都はPCパーツやPC周辺機器、特にVRヘッドギアを中心として海外との貿易を展開している牧田貿易株式会社の1人息子。あなたたちDEEDは資金確保のためにその子に薬物を混入し、その様子を両親に送り付けて脅迫、無理やり仲間にした。そうでしょう?」
許斐はギリッと歯を食いしばりながら黙って花の話を聞いている。
「だからどうした! それ以上は近付くな! こいつの頭を弾くぞ!」
許斐は持っている拳銃を牧田のこめかみに押し付けながら花に脅し文句を向ける。花は「はぁ」と溜め息をついた後に一瞬で許斐の背後を取り、強烈な手刀を首筋に見舞って許斐を気絶させる。
花は気絶した許斐に手錠と異不錠を取り付けた後に隣で怯えている牧田の方を向く。
「私は警察よ。安心して。もう大丈夫」
花はそう言って牧田の背中をさすりながら告げる。花はその間に牧田の傷付いた身体を観察する。
「(やはり自らDEEDに加入した訳ではないか……。許斐からの扱いを見ても暴力や脅迫を受けていたに違いないわね。親も保身に走ってしまった。可哀想に……)」
「牧田くん、あなたに聞きたいことがあるの」
花は静かに牧田に話しかける。牧田は「はい……」と聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で答える。花は端末からGOLEMの画像を牧田に見せながら尋ねる。
「このガタイの良い男……GOLEMを知ってる?」
「……はい」
牧田は震える声ながらもハッキリと肯定する。花は「それじゃ……」と今度は先ほど愛香から送られてきた内倉祥一郎の画像にスワイプして牧田に見せる。
「内倉祥一郎先生……あなたの4年前の第三地区高校での副担任、翌年にも生物の授業を習ってるはずよ。覚えているわね?」
"内倉祥一郎"という名を口にした瞬間、牧田の表情に緊張が走ったのを見て花は杉本の言っていた推論が限りなく正解に近いと考え始める。
「知っていること、正直に答えてもらえるわね?」
無言の牧田に対して花は念を押す。ここで牧田は一瞬目を閉じた後に意を決したかのように軽く頷き、話し始める。
「内倉先生のこと勿論、覚えてます。授業を担当してもらってましたし、男子バスケ部の顧問としてもお世話になってましたから」
花は静かに牧田の話を聞いている。花の敢えて牧田を焦らさずに自分のペースで話させるその姿勢が功を奏し、牧田は徐々に心にゆとりが生じ始めて明瞭に話すようになった。
「ディ……DEEDの麻薬のオークション、それが始まる数日前に仮面の男2人が現れたんです」
花は1ヶ月ほど前にあった横手の証言資料を思い返しながら牧田の言葉を聞く。
「彼ら2人が大体DEEDの悪事に対して協力をしてくれていたんです」
「血液を分けることを条件に?」
「はい」
花はここで初めて口を挟み、牧田はそれを肯定する。「続けて」という花の言葉に頷いて先を続ける。
「勿論、俺はそんな直接の交渉の場になんか居合わせたことはありません。それまで俺はチラッと姿を見たことがあるだけでした。2人とも不気味な仮面を着けていて、怖くて……」
牧田はGOLEMとSHADOWの姿、そして2人が纏う禍々しいサイクスを思い出したのか汗が吹き出る。
「それでその日、受け渡す血液量がいつもより足りなくて……というより自分や数人の一般の人たちやまだ学生の人たちがその採血をやり忘れていたんです。その……DEEDの人たちに無理やり薬を入れられていて……そのせいで意識が朦朧とすることが多くなってて……」
花は気絶している許斐の懐から2種類の首に装着するタイプの注射器が落ちているのを見つけて手に取る。
花はボディーバッグから簡易分析用の試験管を取り出して液体を移す。試験管には予め液体を簡易的に分析するナノマシンが付着しており、それによって得た情報をデータ化して自動的に警察手帳に送信される。
花は装着していた予備の度入りのスマートグラスのテンプル部分 (耳に掛かる部分) に軽く触れてXRモードをオン、注射器に入っている2つの液体の様子とデータを即座に科捜研へと送信する。
––––ピッ
少ししてから花のスマートグラス上に科捜研から受信したデータがARによって空間に表示される。花は1ヶ月前に採取されて分析された2種類の薬物と許斐が持っていた薬物が一致するものであるというデータを見ながら思考する。
「(なるほど。牧田くんが複数回に渡って薬物を無理やり投薬されている割に意識がはっきりしているのは、DEEDが海外から密輸した、薬物を中和させて幻覚や意識障害を抑え、薬物による快感のみを残す別の薬物も混入されたからか)」
花は牧田の身体にある打撲の他に自ら行ったであろう引っ掻き傷を見ながらそのもう1つの薬物は、逃走での煩わしさを減らすためにここ1ヶ月の間に牧田に積極的に投薬されたのだろうと推察する。
「それで、採血を忘れていたのをDEEDの連中に責められて暴力を振るわれていたんです」
牧田は花がMRを利用することによるハンドスワイプ操作を一通り終わらせたのを確認してから再び話し始める。
「そしたらその場にGOLEMとSHADOWの2人が居合わせて……。GOLEMが怒り始めたんです」
牧田はその後、また軽く目を閉じる。そして何かを考えた後にゆっくりと目を開いて花を真っ直ぐ見つめ、ゴクリと唾を飲み込んだ後に言葉を続ける。
「その時彼が小さな声で『どうして……ゆづ』って俺のことを呼んだのを聞きました」
花は「ゆづ?」と牧田に聞き返す。牧田は頷いた後に説明を始める。
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ここで花は杉本の推論が正しかったと確信する。
「それであなたは……気付いたのね?」
牧田は少しの沈黙の後に頷く。
花はギリッと歯を噛み締めた後に牧田に向かって「ありがとう」と礼を告げた。
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