9 / 17
第一章
『第七話』
しおりを挟む
その日の夕方、午後五時。僕は一旦自宅へ戻り斐都の迎えに行く準備をしていた。
途中で買い物もしたいからエコバック持って行こうかな。晩ご飯どうしようかな、斐都に聞こうかな。また雑炊って言われたら却下しないとな。
そんなことを考えながら支度をして、家を出た。マンションから出ると丁度帰宅してきた三日月さんに遭遇した。
「心広さん……!」
「三日月さん、こんにちは」
「こんにちは、斐都くんのお迎えですか?」
「そうですけど」
「一緒に行っても構いませんか?」
「はい?」
「俺、心広さんともっと仲良くなりたいんです」
「僕はなりたくありません。あなただって嫌でしょう、子持ちのオメガなんて面倒で」
「そんなことありませんよ。心広さんはとても頑張り屋な人です」
なんか、昔姉さんも同じこと言ってたな。『心広は頑張り屋さんだから心配』的なことを。
そんなことを思い出していると斐都の迎えに行かなければならないことを思い出した。
「来てもいいですけど、その代わりあなたのこと詳しく教えて下さい」
「! はい!」
三日月さんはそう言うと嬉しそうに、はにかむように微笑んだ。
○○○
斐都の保育園に向かっている間に色々話を聞けた。
三日月悠音さん、職業は会社員で実家は母子家庭。大学まではなんとか卒業して今に至る。ちなみに金髪なのも深い緑色の瞳も外国人の母親譲りなんだそうだ。
そんなことを教えてもらっている間に斐都の保育園に着いた。
「三日月さんはここで待っていて下さい」
「えっ、どうしてですか?」
「その、三日月さんは身長が高いので子どもたちに『巨人だー』とか言って悪戯されるかもですし、怖がる子もいるかもなので」
僕がそう言うと三日月さんはあからさまにがっかりしたような表情を浮かべた。
「大人しく待っていて下さいね」
「分かりました……」
三日月さんにそう言い、僕は保育園の敷地内に入った。
「斐都、迎えに来たよ」
「ママ……!」
僕を見つけた斐都は嬉しそうに笑みを浮かべると僕の方へ近寄ってきた。その姿を見た僕は嬉しくなり斐都をぎゅっと抱き締めた。
「おかえり。今日もいっぱい遊んだ?」
「うん、きょうね、ゆりちゃんと一緒におままごとして、ゆきくんといっしょにえほんよんだの」
「そっか、楽しかった?」
「うん!」
僕の問い掛けに嬉しそうに教えてくれる斐都を見てクスッと笑みをこぼした。
「斐都、今日の晩ご飯何がいい?」
「ぞーすい」
「……雑炊以外でお願い」
「えぇ~……」
案の定雑炊がいいと言った斐都に却下を出すと拗ねてしまった。
そのまま斐都を抱っこして保育園の外に出ると三日月さんがしょんぼりとした様子でしゃがみこんでいた。そういえば忘れてたな。
「三日月さん、お待たせ致しました」
しゃがみこんでいる三日月さんに声を掛けると三日月さんは目線を僕の方へ向けて嬉しそうに微笑んだ。
「いえ、待ってません!」
「でもしょんぼりされてましたよね?」
「見てたんですか!?」
「まあ、はい」
「格好悪いところ見られてしまいました」
三日月さんはそう言うと照れたように己の頬を掻いた。
斐都は土曜日にあった人だと分かったらしく、警戒していた。警戒している斐都に気付いた三日月さんは抱っこしている斐都に近付いた。
「斐都くん、だよね? この間はごめんね、君の大事なお母さんを怖がらせてしまって」
「……つぎしたらげんこつするからね」
なかなか物騒だな。
そんなことを思いながら二人のやり取りを見ていた。斐都が物騒なことを言うのでこれはどう反応したらいいのかと思ったらしい三日月さんは目線で『どういう意味ですか?』と聞いてきた。
「今回は許すけど次やったら拳骨するからね、だそうです」
「一応お許しは出た感じですかね」
「まあ一応は」
「よかった~……」
斐都に許してもらてたのが余程嬉しかったのかホッと安堵したように深く息を吐いた。
「そうだ。心広さん、今日の夕飯ご一緒しませんか? 美味しいお店知ってるんです」
三日月さんは突然そう言った。まるで名案だと言いたげな表情を浮かべて。
「でも……」
「この前の償いです。怖い思いさせてしまったので」
彼はそう言うと心の底から申し訳ないと言いたげな表情を浮かべた。
正直、どうしていいのか分からない。斐都に聞いてみよう。
「斐都、お兄さんと一緒にご飯食べる?」
「ママのごはんたべたい」
即答だった。
「だそうですので、今回はすみません」
僕はそう言って頭を下げ謝罪すると三日月さんは「大丈夫です。斐都くんにお許しをもらえるようにします」とちょっと頓珍漢なことを言った。
内心、面白い人だな、と思いながら彼と別れた。
途中で買い物もしたいからエコバック持って行こうかな。晩ご飯どうしようかな、斐都に聞こうかな。また雑炊って言われたら却下しないとな。
そんなことを考えながら支度をして、家を出た。マンションから出ると丁度帰宅してきた三日月さんに遭遇した。
「心広さん……!」
「三日月さん、こんにちは」
「こんにちは、斐都くんのお迎えですか?」
「そうですけど」
「一緒に行っても構いませんか?」
「はい?」
「俺、心広さんともっと仲良くなりたいんです」
「僕はなりたくありません。あなただって嫌でしょう、子持ちのオメガなんて面倒で」
「そんなことありませんよ。心広さんはとても頑張り屋な人です」
なんか、昔姉さんも同じこと言ってたな。『心広は頑張り屋さんだから心配』的なことを。
そんなことを思い出していると斐都の迎えに行かなければならないことを思い出した。
「来てもいいですけど、その代わりあなたのこと詳しく教えて下さい」
「! はい!」
三日月さんはそう言うと嬉しそうに、はにかむように微笑んだ。
○○○
斐都の保育園に向かっている間に色々話を聞けた。
三日月悠音さん、職業は会社員で実家は母子家庭。大学まではなんとか卒業して今に至る。ちなみに金髪なのも深い緑色の瞳も外国人の母親譲りなんだそうだ。
そんなことを教えてもらっている間に斐都の保育園に着いた。
「三日月さんはここで待っていて下さい」
「えっ、どうしてですか?」
「その、三日月さんは身長が高いので子どもたちに『巨人だー』とか言って悪戯されるかもですし、怖がる子もいるかもなので」
僕がそう言うと三日月さんはあからさまにがっかりしたような表情を浮かべた。
「大人しく待っていて下さいね」
「分かりました……」
三日月さんにそう言い、僕は保育園の敷地内に入った。
「斐都、迎えに来たよ」
「ママ……!」
僕を見つけた斐都は嬉しそうに笑みを浮かべると僕の方へ近寄ってきた。その姿を見た僕は嬉しくなり斐都をぎゅっと抱き締めた。
「おかえり。今日もいっぱい遊んだ?」
「うん、きょうね、ゆりちゃんと一緒におままごとして、ゆきくんといっしょにえほんよんだの」
「そっか、楽しかった?」
「うん!」
僕の問い掛けに嬉しそうに教えてくれる斐都を見てクスッと笑みをこぼした。
「斐都、今日の晩ご飯何がいい?」
「ぞーすい」
「……雑炊以外でお願い」
「えぇ~……」
案の定雑炊がいいと言った斐都に却下を出すと拗ねてしまった。
そのまま斐都を抱っこして保育園の外に出ると三日月さんがしょんぼりとした様子でしゃがみこんでいた。そういえば忘れてたな。
「三日月さん、お待たせ致しました」
しゃがみこんでいる三日月さんに声を掛けると三日月さんは目線を僕の方へ向けて嬉しそうに微笑んだ。
「いえ、待ってません!」
「でもしょんぼりされてましたよね?」
「見てたんですか!?」
「まあ、はい」
「格好悪いところ見られてしまいました」
三日月さんはそう言うと照れたように己の頬を掻いた。
斐都は土曜日にあった人だと分かったらしく、警戒していた。警戒している斐都に気付いた三日月さんは抱っこしている斐都に近付いた。
「斐都くん、だよね? この間はごめんね、君の大事なお母さんを怖がらせてしまって」
「……つぎしたらげんこつするからね」
なかなか物騒だな。
そんなことを思いながら二人のやり取りを見ていた。斐都が物騒なことを言うのでこれはどう反応したらいいのかと思ったらしい三日月さんは目線で『どういう意味ですか?』と聞いてきた。
「今回は許すけど次やったら拳骨するからね、だそうです」
「一応お許しは出た感じですかね」
「まあ一応は」
「よかった~……」
斐都に許してもらてたのが余程嬉しかったのかホッと安堵したように深く息を吐いた。
「そうだ。心広さん、今日の夕飯ご一緒しませんか? 美味しいお店知ってるんです」
三日月さんは突然そう言った。まるで名案だと言いたげな表情を浮かべて。
「でも……」
「この前の償いです。怖い思いさせてしまったので」
彼はそう言うと心の底から申し訳ないと言いたげな表情を浮かべた。
正直、どうしていいのか分からない。斐都に聞いてみよう。
「斐都、お兄さんと一緒にご飯食べる?」
「ママのごはんたべたい」
即答だった。
「だそうですので、今回はすみません」
僕はそう言って頭を下げ謝罪すると三日月さんは「大丈夫です。斐都くんにお許しをもらえるようにします」とちょっと頓珍漢なことを言った。
内心、面白い人だな、と思いながら彼と別れた。
24
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
婚約者は運命の番(笑)を見つけたらしいので俺も運命の番を見つけます
i
BL
俺の婚約者であるオリオ・オフニス侯爵令息は、浮気をしていた。しかもその相手は平民のオメガだった。俺はオリオに問い詰めようとしたが、偶然にも平民のオメガとオリオが関係を持っている現場を目撃してしまった。
翌日、俺は婚約破棄の手紙を受け取った。
俺はどうしても彼を許すことが出来ず、彼に小さな復讐をしてやろうと決意する──。
【完結】もう一度恋に落ちる運命
grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。
そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…?
【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】
※攻め視点で1話完結の短い話です。
※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。
【完結】攻略は余所でやってくれ!
オレンジペコ
BL
※4/18『断罪劇は突然に』でこのシリーズを終わらせて頂こうと思います(´∀`*)
遊びに来てくださった皆様、本当に有難うございました♪
俺の名前は有村 康太(ありむら こうた)。
あり得ないことに死んだら10年前に亡くなったはずの父さんの親友と再会?
え?これでやっと転生できるって?
どういうこと?
死神さん、100人集まってから転生させるって手抜きですか?
え?まさかのものぐさ?
まあチマチマやるより一気にやった方が確かにスカッとはするよね?
でも10年だよ?サボりすぎじゃね?
父さんの親友は享年25才。
15で死んだ俺からしたら年上ではあるんだけど…好みドンピシャでした!
小1の時遊んでもらった記憶もあるんだけど、性格もいい人なんだよね。
お互い死んじゃったのは残念だけど、転生先が一緒ならいいな────なんて思ってたらきましたよ!
転生後、赤ちゃんからスタートしてすくすく成長したら彼は騎士団長の息子、俺は公爵家の息子として再会!
やった~!今度も好みドンピシャ!
え?俺が悪役令息?
妹と一緒に悪役として仕事しろ?
そんなの知らねーよ!
俺は俺で騎士団長の息子攻略で忙しいんだよ!
ヒロインさんよ。攻略は余所でやってくれ!
これは美味しいお菓子を手に好きな人にアタックする、そんな俺の話。
【BL】声にできない恋
のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
嘘の日の言葉を信じてはいけない
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。
螺旋の中の欠片
琴葉
BL
※オメガバース設定注意!男性妊娠出産等出て来ます※親の借金から人買いに売られてしまったオメガの澪。売られた先は大きな屋敷で、しかも年下の子供アルファ。澪は彼の愛人か愛玩具になるために売られて来たのだが…。同じ時間を共有するにつれ、澪にはある感情が芽生えていく。★6月より毎週金曜更新予定(予定外更新有り)★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる