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五話
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次の日の午前七時三十分、上半身を起こして背伸びをしてから希緒を見てみると顔を真っ赤にさせて息を荒くしていた。
「希緒!?」
驚いた俺は慌てて希緒を抱きかかえ、額に手を当てた。額は熱かった。
「わぁ、風邪ひいちゃったか」
俺は自身の手を額に当てて天井を見上げた。今日授業が終わった後、先輩に会う約束してたんだけど、希緒が最優先。
「希緒、きーお。大丈夫?」
俺はベッドから降りて希緒をブランケットに包んで抱き上げてリビングのソファに寝かせた。
「近くの病院は、と」
スマホを手に取り近くにある小児科の病院やクリニックを探す。あ、丁度車で行ける距離の所にあるな。小児科クリニックが開くのは午前九時。それまでどうしようかな。
スマホを片手にそんな事を考えていると希緒が呻き声をあげながら小さな声で泣き始めた。
「希緒?」
ソファに近付いて希緒を抱き上げると希緒は小さな声で「にぃに……」と縋りつくような声で俺を呼んでいた。
「キツいね、もう少しだけ我慢してね。喉痛い?」
「うぅ……」
顔を赤くして涙をぽろぽろと流す希緒を見ていると代わってあげたくなる。
幼い頃、風邪をひいた時、母さんはずっと近くにいてくれた。家事もしなくちゃいけなかったはずなのに、俺が泣いてしまうからずっと近くにいてくれた。笑顔で、大丈夫、大丈夫、と言ってくれた。
母さんみたいになりたいと思う。特に、希緒が風邪をひいたり病気になった時にそう思う事がある。
きっとこの熱なら昨日から微熱あったかもしれない。だから昨日甘えん坊だったのかも。
「気付いてあげられなくて、ごめんね。希緒」
小さな声で泣きじゃくる希緒の頭を優しく撫でながら謝罪の言葉を言う。
希緒を抱っこしたままソファに座る。先輩にどうやって連絡しようかな。連絡先知らないし。
「昨日のうちに聞いておけば良かったなぁ」
今更ながらそんな事を思ってしまう。まあ、タラレバの話でしかないのだけど。
……………
クリニックでの診察を終えて一旦希緒を家に連れて帰り、希緒のアイスを買いに行く事にした。一人にする事になるけどすぐ帰れば大丈夫、だよね。
家を出てすぐ近くのコンビニに行くと希緒の好きなアイスだけが無くなっていた。
「あれ、マジか」
こういう時に限ってないのか。
深く溜息を吐いて別のコンビニに行く事にした。
大学の近くにあるコンビニならあったよね。
そんな事を思いながら向かうと財布を片手に走ろうとした瞬間、後ろから肩をとんとんとつつかれてしまった。背後を振り向くと其処にいたのは俺よりも身長の高い複数の男子高校生たちだった。
「何か?」
「おにーさん、オメガだよね? 甘い匂いする」
ひゅっ、と息が止まったような錯覚を覚えた。多分いま俺の顔は『図星』だと言いたげな表情をしている事だろう。
逃げようと思って後ろを振り向いて走り出そうとすると一番身長の高い高校生に腕を掴まれ、路地裏の方へ連れて行かれてしまった。
「希緒!?」
驚いた俺は慌てて希緒を抱きかかえ、額に手を当てた。額は熱かった。
「わぁ、風邪ひいちゃったか」
俺は自身の手を額に当てて天井を見上げた。今日授業が終わった後、先輩に会う約束してたんだけど、希緒が最優先。
「希緒、きーお。大丈夫?」
俺はベッドから降りて希緒をブランケットに包んで抱き上げてリビングのソファに寝かせた。
「近くの病院は、と」
スマホを手に取り近くにある小児科の病院やクリニックを探す。あ、丁度車で行ける距離の所にあるな。小児科クリニックが開くのは午前九時。それまでどうしようかな。
スマホを片手にそんな事を考えていると希緒が呻き声をあげながら小さな声で泣き始めた。
「希緒?」
ソファに近付いて希緒を抱き上げると希緒は小さな声で「にぃに……」と縋りつくような声で俺を呼んでいた。
「キツいね、もう少しだけ我慢してね。喉痛い?」
「うぅ……」
顔を赤くして涙をぽろぽろと流す希緒を見ていると代わってあげたくなる。
幼い頃、風邪をひいた時、母さんはずっと近くにいてくれた。家事もしなくちゃいけなかったはずなのに、俺が泣いてしまうからずっと近くにいてくれた。笑顔で、大丈夫、大丈夫、と言ってくれた。
母さんみたいになりたいと思う。特に、希緒が風邪をひいたり病気になった時にそう思う事がある。
きっとこの熱なら昨日から微熱あったかもしれない。だから昨日甘えん坊だったのかも。
「気付いてあげられなくて、ごめんね。希緒」
小さな声で泣きじゃくる希緒の頭を優しく撫でながら謝罪の言葉を言う。
希緒を抱っこしたままソファに座る。先輩にどうやって連絡しようかな。連絡先知らないし。
「昨日のうちに聞いておけば良かったなぁ」
今更ながらそんな事を思ってしまう。まあ、タラレバの話でしかないのだけど。
……………
クリニックでの診察を終えて一旦希緒を家に連れて帰り、希緒のアイスを買いに行く事にした。一人にする事になるけどすぐ帰れば大丈夫、だよね。
家を出てすぐ近くのコンビニに行くと希緒の好きなアイスだけが無くなっていた。
「あれ、マジか」
こういう時に限ってないのか。
深く溜息を吐いて別のコンビニに行く事にした。
大学の近くにあるコンビニならあったよね。
そんな事を思いながら向かうと財布を片手に走ろうとした瞬間、後ろから肩をとんとんとつつかれてしまった。背後を振り向くと其処にいたのは俺よりも身長の高い複数の男子高校生たちだった。
「何か?」
「おにーさん、オメガだよね? 甘い匂いする」
ひゅっ、と息が止まったような錯覚を覚えた。多分いま俺の顔は『図星』だと言いたげな表情をしている事だろう。
逃げようと思って後ろを振り向いて走り出そうとすると一番身長の高い高校生に腕を掴まれ、路地裏の方へ連れて行かれてしまった。
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