アルファなんて大嫌いだ

プロローグ

　世の中には、男と女の性別のほかに“バース性”と呼ばれる性が存在している。バース性は大きく分けて六つ。アルファの男と女、ベータの男と女、オメガの男と女。

　アルファは容姿端麗、頭脳明晰でエリートの資質を持つ者の事だ。人口の二パーセントしか存在せず、国や企業から優遇され社会的地位が高い。攻撃的な人格の者が多いのも特徴の一つだ。

　次にベータ。ベータは人口の九十七パーセントを占める、所謂『普通の人間』だ。平々凡々で、特に秀でた者はいない。

　最後にオメガ。オメガは男女ともに妊娠可能でヒートと呼ばれる発情期が存在している。小柄な者が多い。教育の機会に恵まれにくく、発情期の偏見もある為、社会的地位が低い。人口の一パーセントしか存在しない。
オメガにとって一番厄介なのがヒートと呼ばれる発情期。一定の周期でやってくるそれは、己の意思とは関係なく激しい性衝動に見舞われ、発せられるフェロモンで無差別に人を誘惑し興奮させてしまう。特に、アルファはオメガのフェロモンの影響を受けやすい。

　その為、オメガの男女には国から支給された『発情抑制剤はつじょうよくせいざい』を毎日飲む事が義務付けられている。日常生活や社会生活に支障が出ないよう、抑制剤を使用し発情を抑えている。

　俺は、オメガだ。

　名前、蘭あららぎ真琴まこと。性別、男。バース性、オメガ。