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帝都のひと夏
カレンブルクのお茶会へようこそ(双子君の事情Ⅰ)
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巡回している侍女を呼んでお茶を淹れ直してもらう間に、私は殿下の言付けをこっそり開けた。
無駄に厚くて開けにくい封筒には、走り書きのメモが一枚入っているだけだった。
『悪いが俺は行けない。あいつにはまだ何も話してないからこれを見せるな。あと、こいつらも入ってるからな。』
なにこれ?
裏返してみるが、これ以上は何も書かれていない。
まあ、宛名も差出人も書かれていないとはいえ、万が一のことを考えているんだろうけど。これを解読しろって、殿下、、、。
遠い目をした私を見て、兄さまが眉を顰める。
「どうした?何か問題が?」
「ううん、そんなこと無い・・・と思う・・・。」
「なんだよそれ。俺が読んでいいなら・・・」
「ううん、大丈夫。ちょっと考えてみる。」
いつもなら、貸せよ、の一言で取り上げられそうだけど、流石にカーティスさまの前でそれは出来ないものね。
私は淹れ直された紅茶に口を付けてから、もう一度読み返してみた。
『俺は行けない』って言うのは、殿下がこの茶会に来れない、ってことよね。あんなに偉そうに来いって指示しておいて、、、ああ、まあそれは置いといて。
『あいつにはまだ何も話していないからこれを見せるな』って言うのは、、、あいつ、はやっぱりジキスムント君だよね?何も話してない、って言うのは、殿下と二人でしたお茶会の時に話してた事情かな?そうすると、ジキスムント君は、まだ殿下と私が婚約前提で親交を深めると思っているから、殿下からの手紙なんて誤解を招きやすいものは見せるなと、、、ふむふむ、分かって来たじゃない。
私は機嫌よく最後の文を読み返し、首を傾げた。
『こいつらも入っているから』って言われても。こいつら?誰?
この手紙に関係する人、、、若しかしてこの双子君たちのこと?
じゃあ、入ってるって言うのは、、、双子君たちも私の婚約者候補に入っているってこと?
思わず顔を上げてカーティスさまを見つめると、、、緊張気味にこちらを見ていた彼と眼が合った。
「な、なにか・・・」
びくびくしながら言われてもね。
「・・・いいえ。何でもありませんわ。もし、この後殿下にご連絡頂けるなら、確かに承りました、とお伝えくださいませ。」
にっこりしながら言えば、あからさまにホッとされる。
「承知しました。では、僕はこれで・・・」
「お待ちになって。」
机に手を突いてすぐさま立ち上がろうとしたカーティスさまの、その手をそっと押さえて、私は笑みを深めながら続けた。
「初めてお会いできた年の近い従兄なんですもの。もう少しお話ししたいですわ。お茶も来たばかりですし、一杯くらいお付き合いくださいませ?ね。」
「ディアナ嬢?でも、僕は特に・・・」
立ち上がるに立ち上がれず、でも私たちと話すのは避けたいらしいカーティスさまは、明後日の方を向きながら逃げを打とうとする。
そんなに嫌がられると、却って気になるじゃない?
「大したことは伺いませんわ。先ほどのヘイリーさまのお話しで、すこーし気になったことを教えて頂きたいだけなんですの。ほら、何て仰ったかしら?兄さまは気になりませんでした?」
そう言って小首を傾げると、委細承知したと言わんばかりに、兄さまが後を続けてくれた。
「ああ、『突然現れた態度のでかい田舎者の従兄弟や瞳の色だけが取り柄の田舎娘に、これ以上僕の人生をかき回されてたまるもんか』、てやつだろう?」
「ヒッ」
「俺達は同じコンラート一門じゃないか。しかも爵位や何かを巡って争っている訳でも無い。なのになんで人生をかき回されたなんて言うんだろうって、不思議だったんだよ、な?」
「ええ、もし何か誤解があるのなら、今解いてしまいたいんです。訳をお聞かせくださいな、カーティスさま。さもないと私、心配でお二人の父上である伯父さまに泣きついてしまいそうですわ・・・」
「それは止めて下さい!」
逃げ腰だったカーティスさまは、お父さまに話すと言った瞬間、すとん、と椅子に腰を下ろした。
無駄に厚くて開けにくい封筒には、走り書きのメモが一枚入っているだけだった。
『悪いが俺は行けない。あいつにはまだ何も話してないからこれを見せるな。あと、こいつらも入ってるからな。』
なにこれ?
裏返してみるが、これ以上は何も書かれていない。
まあ、宛名も差出人も書かれていないとはいえ、万が一のことを考えているんだろうけど。これを解読しろって、殿下、、、。
遠い目をした私を見て、兄さまが眉を顰める。
「どうした?何か問題が?」
「ううん、そんなこと無い・・・と思う・・・。」
「なんだよそれ。俺が読んでいいなら・・・」
「ううん、大丈夫。ちょっと考えてみる。」
いつもなら、貸せよ、の一言で取り上げられそうだけど、流石にカーティスさまの前でそれは出来ないものね。
私は淹れ直された紅茶に口を付けてから、もう一度読み返してみた。
『俺は行けない』って言うのは、殿下がこの茶会に来れない、ってことよね。あんなに偉そうに来いって指示しておいて、、、ああ、まあそれは置いといて。
『あいつにはまだ何も話していないからこれを見せるな』って言うのは、、、あいつ、はやっぱりジキスムント君だよね?何も話してない、って言うのは、殿下と二人でしたお茶会の時に話してた事情かな?そうすると、ジキスムント君は、まだ殿下と私が婚約前提で親交を深めると思っているから、殿下からの手紙なんて誤解を招きやすいものは見せるなと、、、ふむふむ、分かって来たじゃない。
私は機嫌よく最後の文を読み返し、首を傾げた。
『こいつらも入っているから』って言われても。こいつら?誰?
この手紙に関係する人、、、若しかしてこの双子君たちのこと?
じゃあ、入ってるって言うのは、、、双子君たちも私の婚約者候補に入っているってこと?
思わず顔を上げてカーティスさまを見つめると、、、緊張気味にこちらを見ていた彼と眼が合った。
「な、なにか・・・」
びくびくしながら言われてもね。
「・・・いいえ。何でもありませんわ。もし、この後殿下にご連絡頂けるなら、確かに承りました、とお伝えくださいませ。」
にっこりしながら言えば、あからさまにホッとされる。
「承知しました。では、僕はこれで・・・」
「お待ちになって。」
机に手を突いてすぐさま立ち上がろうとしたカーティスさまの、その手をそっと押さえて、私は笑みを深めながら続けた。
「初めてお会いできた年の近い従兄なんですもの。もう少しお話ししたいですわ。お茶も来たばかりですし、一杯くらいお付き合いくださいませ?ね。」
「ディアナ嬢?でも、僕は特に・・・」
立ち上がるに立ち上がれず、でも私たちと話すのは避けたいらしいカーティスさまは、明後日の方を向きながら逃げを打とうとする。
そんなに嫌がられると、却って気になるじゃない?
「大したことは伺いませんわ。先ほどのヘイリーさまのお話しで、すこーし気になったことを教えて頂きたいだけなんですの。ほら、何て仰ったかしら?兄さまは気になりませんでした?」
そう言って小首を傾げると、委細承知したと言わんばかりに、兄さまが後を続けてくれた。
「ああ、『突然現れた態度のでかい田舎者の従兄弟や瞳の色だけが取り柄の田舎娘に、これ以上僕の人生をかき回されてたまるもんか』、てやつだろう?」
「ヒッ」
「俺達は同じコンラート一門じゃないか。しかも爵位や何かを巡って争っている訳でも無い。なのになんで人生をかき回されたなんて言うんだろうって、不思議だったんだよ、な?」
「ええ、もし何か誤解があるのなら、今解いてしまいたいんです。訳をお聞かせくださいな、カーティスさま。さもないと私、心配でお二人の父上である伯父さまに泣きついてしまいそうですわ・・・」
「それは止めて下さい!」
逃げ腰だったカーティスさまは、お父さまに話すと言った瞬間、すとん、と椅子に腰を下ろした。
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