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帝都のひと夏

カレンブルクのお茶会へようこそ(ディアナは居心地が悪いⅣ個性の強い集団のフォロー役は大変)

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嵐のような一団が去って行き、テーブルの上に沈黙が落ちる。
私は取り敢えず冷めてしまった紅茶に口を付けてから、ふうっと息を吐いた。
「疲れた・・・」
思わずこぼせば、フフッと兄さまの含み笑いが聞こえた。
「すごかったな。非常に興味深くて思わぬ有意義な時間だったよ。色々な意味でね?」
意外にも機嫌のいい兄さまをテーブルセット越しに睨んだ。
「楽しそうで何よりですわね。私なんて、物珍しい動物扱いされた上に、突然現れたご令嬢にいきなり恋敵認定されて大変でしたのに。」
「確かに、お前はちょっと災難だったよ。だけど、ロイス侯夫人は基本的に俺が対応しただろう?それに、ロイス卿とも仲良く話していたじゃないか?おまけに、あの、ロイス卿が大好きですってご令嬢より、お前の方が、明らかに大事にされてたぞ?あいつ、お前と話したくて、きっと急いで戻ってくるだろうな?」
からかってくる兄さまにやさぐれて、皿に盛られたプラリーヌをポイっと口に放り込むと、今度はライの姿でジーッと様子を見ていたマックス殿下が口を挟んだ。
「あんなうるさい女どもはどうでもいい。問題はロイス卿とやらだ。ディアナ嬢はあいつと旧知なのか?先日の茶会で知り合ったにしては、随分と親しそうだったが?もしやもう体の関係が?」
「っ?」
まさかマックス殿下にこのタイミングでこんなことを話しかけられるとは思っていなかった私は、プラリーヌにむせそうになった。
「気になるのか?そう言えばお前、ディアナに求婚していたもんな。それなのに侍従に身をやつした挙句、他の男が寄ってきても、腕輪のせいで近付くことすらできないなんてな?まあ、あの悪事の代償だから、これでも軽いくらいだが・・・」
話せない私に代わり、兄さまが今度は真っ黒な笑みを浮かべてマックス殿下を攻撃する。
確かにデビュー前の令嬢に聞く話じゃないけれど。
それにしても、今日の兄さまは本当にどうしちゃったのかしら?ここはやっぱり私がフォローすべき?
紅茶を飲んで一息つくと、私はマックス殿下ににっこり微笑みかけた。
「父さまとこっちにいた時に、今の殿下の姿で何度か話しただけですわ。ふふ、ロイス卿が本当に戻っていらっしゃるなら、きっと本物のライに興味を持つと思います。お答えに気を付けて下さいませね。」
話しかけると、兄さまといがみ合っていたマックス殿下が微かに眉根を寄せた。
「困るな。なにを話せばいい?」
「人見知りする幼馴染の侍従として、当たり障りなくして頂ければ充分ですわ。元々ライは気のいい素直な、出しゃばらない子ですもの。」
兄さまとの険悪ムードが去ってホッとして言うと、「そうそう、お前と正反対の思考だと思えばいいんだ。」と、兄さまがまた余計な事を言う。
「もう、ルー兄さま、いい加減になさって。殿下もお困りでしょう?」
たまりかねた私が少し大きな声で窘めた時。

「殿下って聞こえたんだけど。もしかして、もう伝言は届いてるの?」
今度は。ツン、とした少年の声が聞こえた。
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