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帝都のひと夏

兄妹パジャマパーティⅥ帝都の夜の街歩き

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屋台の並ぶ細い道をぶらぶら歩く。
隣には珍しくオスカー兄上がぴったりくっついていて、手も握られてる。
フィン兄さまと違い、兄上にこんなにくっつかれるのは初めてなので戸惑うと、珍しいしかめ面で、これが街歩きの最低条件と言われてしまった。
フィン兄さまは、と見れば、これまた珍しくルー兄さまの肩を抱かんばかりにして、あの店は良いとかこの店は何とかとか、あれこれ教えてるみたい。
如何にも「魔導師」、な黒ローブの四人組で、しかも、上空と違って街の中は暑いからフードを取ってるのに、二人の美人が歩いていても誰も気に留めないから、術式はきちんと発動しているみたい。
私もフードを取って周りを見てみる。
真夜中近い時間だから帰る人も多いのか、さっき上空から見たよりもだいぶ人が減ってはいるけど、でも、お店に出入りする人も、ぶらぶら歩いたりしてる人もいる。
ただ、よく見ると、、、。
「男の人ばっかり。」
屋台でものを見てる人も、食べたり飲んだりしてる人も、歩いてる人も、、、。そう、見事に男しかいない。
「兄上、なんで男の人ばかりなの?」
「それは・・・時間が遅いからかな・・・?」
聞きながらも見回していると、歯切れの悪い答えが聞こえてきた。
まあ、確かに夜遅いからね。兄上達も危ないって言ってたし。男の人は気晴らしに出かけていても、女の人はお家だよね。
そう思いながら、ふと気になるお店を見つけて足を止めた。
「あ、あれ、可愛い。」
生花を使った小洒落た花束や可愛い髪飾りが売っている屋台を見つけ、ついつい近寄って行く。
「そろそろ店じまいするから安くしとくよ~。」
屋台のおじさんの声に釣られてか、私たちの他にも二~三人がふらふら寄ってきて物色を始めた。
顔が真っ赤な中年のおじさんが、このままだと奥さんが家に入れてくれないと呂律怪しく言いながら花束を買って行くのは、何だかちょっと微笑ましくて、つい他の人の話にも耳を澄ませてしまう。
ケンカした彼女に思い切って持って行くとか、狙ってるあの子に思い切って会いに行くとか、、、そう言いながら選ぶお客さんに、店主のおじさんは、あの子はこの花が好きだよとか、この花言葉は、とか言いながら売りつけている。随分顔が広いみたいで、お客さんの彼女さんのことまでよく知っているみたい。
この辺りは、この人たちのデートコースなのかな?でも、こんな時間に花持って行っても、相手は困らないのかしら?
「変なの、ね、兄上?」
そう言いながら、隣の兄上を見ると、、、何といつの間にか花束を買っていた、、、それも二つも!
「あ、兄上・・・」
思わず声を上げた私に構わず何食わぬ顔をしてお金を払い、手慣れた様子でローブの中に花束を仕舞うと、兄上はさっさと私の手を引っ張った。
「さあ、そろそろ行こうか?フィンもルーも先にあの角のお店に行ってるって。」
喉も乾いたし、知り合いのお店だから一杯飲んだら、帰ろうね?
爽やかな兄上の顔がとっても胡散臭く見えたのは、仕方ないと思うのよ、、、。
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