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帝都のひと夏
四阿にて
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なぜか今、四阿で薫り高いお茶を頂いています。
「ご令嬢のお口に合いますかどうか。」
「とても美味しいです。えーっと・・・」
「彼はマルティンと言う。皇太子宮の執事だ。」
白髪もダンディな執事さんに穏やかに笑まれて、何て呼びかけようと悩んでいたら、向かいに座った殿下がボソッと教えてくれた。
「マルティンさま。殿下はいつもこのように美味しいお茶を頂けるんですね。素敵ですわ。」
にっこり笑んで返すと、執事さんは、どうぞマルティンと呼んで下さい、と答えて下がってしまった。
殿下と二人、四阿の中に取り残される。
「「・・・」」
気まずい。
必死な形相の殿下に引っ張られて、思わずついてきてしまったけれど。
着いたらマルティンさんにさあさあ、と席に座らされてしまったけれど。
向かいの席に座った殿下はさっきからそわそわしながら小径の方をチラチラ見るばかりで、こっちをまともに向きもしない。
取り敢えず周りを見回してみる。
小ぢんまりとした円形の庭の中に、屋根付き壁なしの四阿が立っている。
周りは背の高い常緑樹で視界を隠され、中は四季の草花が彩りよく配置され、芝生もある。風も適度にあって気持ちいい。
座っているベンチには素敵なクッションがいくつも置かれ、お昼寝も出来そうな気持よさだし、目の前のテーブル上には色とりどりの小さくてきれいなお菓子と一口大のサンドウィッチ。
会場の方は騎士さまがメインだからか、前菜以外は大皿のものが多かったけど、このテーブルにあるものは、始めから指でつまめるような小ぶりのものばかり。貴婦人の茶会用に作られたと一目でわかる。
しかも、果物一つとっても、種類が多くて手が込んでいる。
ブドウも皮がむかれているだけでなく、飴がけになっていたり、ジェルが絡ませてあったり、、、。マカロンも種類が多く、向こうのより一回り小さい。それに、艶々のプラリーヌ、、、。
「・・・君の為に作らせたんだ。好きなものがあれば良いんだが・・・」
食べ物をじっと見ていたのを気付かれたみたい。殿下がまたボソッと話しかけてきた。
もう、本当に社交と素が違いすぎて調子が狂うわ。
「ありがとうございます・・・先ほど少し頂いて来たんですが・・・」
「そうか。」
がっかりしたようにまた黙り込んだ。もう、もう!そんな顔されたら、私が悪いみたいじゃない。
「・・・プラリーヌ、頂きます。」
目の前に置かれた皿から一粒摘まむと、ようやく殿下はこちらを見た。え、食べるの見られるの、恥ずかしいんだけどな。
そう思いながらも、まさか見るなとも言えず、なるべく上品に見える様に口に入れる。
「・・・あ、美味しい」
甘味といい香りといい舌触りといい、今まで食べた中で一番美味しい。
思わずもう一粒口に入れる。
「んー、とろける!」
美味しくて自然と口元に笑みが浮かぶ。
「美味いか?」
「ええ、さいこー・・・」
言いながら視線を上げると、殿下と目が合ってしまった。ちょっと顔が赤い。
え、今の全部見ていたの?
今度は私の方が気まずくなってお茶に逃げていると。
「口に合って良かった。そのまま好きなものを食べながら聞いてくれ。実は、これから話す事は内密なんだが・・・」
殿下が漸く話し始めた。
「ご令嬢のお口に合いますかどうか。」
「とても美味しいです。えーっと・・・」
「彼はマルティンと言う。皇太子宮の執事だ。」
白髪もダンディな執事さんに穏やかに笑まれて、何て呼びかけようと悩んでいたら、向かいに座った殿下がボソッと教えてくれた。
「マルティンさま。殿下はいつもこのように美味しいお茶を頂けるんですね。素敵ですわ。」
にっこり笑んで返すと、執事さんは、どうぞマルティンと呼んで下さい、と答えて下がってしまった。
殿下と二人、四阿の中に取り残される。
「「・・・」」
気まずい。
必死な形相の殿下に引っ張られて、思わずついてきてしまったけれど。
着いたらマルティンさんにさあさあ、と席に座らされてしまったけれど。
向かいの席に座った殿下はさっきからそわそわしながら小径の方をチラチラ見るばかりで、こっちをまともに向きもしない。
取り敢えず周りを見回してみる。
小ぢんまりとした円形の庭の中に、屋根付き壁なしの四阿が立っている。
周りは背の高い常緑樹で視界を隠され、中は四季の草花が彩りよく配置され、芝生もある。風も適度にあって気持ちいい。
座っているベンチには素敵なクッションがいくつも置かれ、お昼寝も出来そうな気持よさだし、目の前のテーブル上には色とりどりの小さくてきれいなお菓子と一口大のサンドウィッチ。
会場の方は騎士さまがメインだからか、前菜以外は大皿のものが多かったけど、このテーブルにあるものは、始めから指でつまめるような小ぶりのものばかり。貴婦人の茶会用に作られたと一目でわかる。
しかも、果物一つとっても、種類が多くて手が込んでいる。
ブドウも皮がむかれているだけでなく、飴がけになっていたり、ジェルが絡ませてあったり、、、。マカロンも種類が多く、向こうのより一回り小さい。それに、艶々のプラリーヌ、、、。
「・・・君の為に作らせたんだ。好きなものがあれば良いんだが・・・」
食べ物をじっと見ていたのを気付かれたみたい。殿下がまたボソッと話しかけてきた。
もう、本当に社交と素が違いすぎて調子が狂うわ。
「ありがとうございます・・・先ほど少し頂いて来たんですが・・・」
「そうか。」
がっかりしたようにまた黙り込んだ。もう、もう!そんな顔されたら、私が悪いみたいじゃない。
「・・・プラリーヌ、頂きます。」
目の前に置かれた皿から一粒摘まむと、ようやく殿下はこちらを見た。え、食べるの見られるの、恥ずかしいんだけどな。
そう思いながらも、まさか見るなとも言えず、なるべく上品に見える様に口に入れる。
「・・・あ、美味しい」
甘味といい香りといい舌触りといい、今まで食べた中で一番美味しい。
思わずもう一粒口に入れる。
「んー、とろける!」
美味しくて自然と口元に笑みが浮かぶ。
「美味いか?」
「ええ、さいこー・・・」
言いながら視線を上げると、殿下と目が合ってしまった。ちょっと顔が赤い。
え、今の全部見ていたの?
今度は私の方が気まずくなってお茶に逃げていると。
「口に合って良かった。そのまま好きなものを食べながら聞いてくれ。実は、これから話す事は内密なんだが・・・」
殿下が漸く話し始めた。
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