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帝都のひと夏

とんでもない謁見が終わりました。

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そう思ったのも一瞬のことで。
頭で考えるより先に、隣から噴き出す魔力の攻撃性の激しさに、私の魔力が反応した。
あれは怖いから消したい!騒ぎになるのはいや!

私が思ったのは、それだけ。でも。

私の魔力はフェリクス殿下と父さまたちの間に見えない壁を作ると、あっという間に噴き出した魔力と溶けあって消えて行った。

「え?」私がきょろきょろすれば。
「消えたっ!?」フィン兄さまが押し殺した声で叫び。
「攻撃の無効化・・・ディーか。まずいな・・・」父さまが呟くと同時にさっと周囲に視線を走らせ、、、。

「深呼吸だ、アル!ちょっとフィンもか・・・あれ、二人とも落ち着いてる?」
拍子抜けしたような母さまの声が聞こえた。
ん?さっきの魔力攻撃、無かったことになってる?
伯父さまやオリヴィエ兄さまを伺うと、「よく堪えたな、アルフ。」「叔父さん、大人になりましたね!」などと小声で話している。
フェリクス殿下に目を向ければ、にこやかなまま、私の方を見つめて、、、まだ手を握ってた。この様子だと、父さまたちの攻撃に気付いて無いのは確実だわ。そして、、、この手、これどうやって外すの?
色々疑問で、最後に恐る恐る父さまを見上げると。
父さまは、私のことを一瞬見つめたあと、殿下の手を無遠慮にペッと外し、
「・・・挨拶は終わった。戻ろう。」
「え?ええ、ちょっとアル・・・!」
それだけ言って、母さまを強引にエスコートしながら、さっさと踵を返してしまった。

え?え?いいの、それ?
見送る私も他の家族もあっけに取られていると。
「うちの弟が相変わらずで申し訳ございません、陛下。殿下も、あれはいつもあんな風でして。どうぞお気になさいませんよう。」
気まずい雰囲気を一掃してくれたのは、伯父さまだった。
流石宰相閣下、と言うより、不出来な弟を長年世話してきたお兄ちゃんって感じ?
「いや、構わない。我等が魔導師団長はいつも通り、いや、よく耐えたと言うべきかな?」
陛下まで、とがめる気は全くないみたいで、ほんとびっくりよ。
そして。フェリクス殿下は。
いつの間にかまた私の手を握っていて。
「もう行ってしまうの、ディアナ嬢?名残惜しいな。私が願ったら、どうか断らずに会って?」
切なそうな眼差しで訴えてもう一度指先に口付けし、、、私の手に何かを握らせた。そのまますっと手を外す。
「約束だよ?」
ダメ押しのようににっこりして、席に戻る殿下。なんなの?役者なの?素と違いすぎて気持ち悪いんだけど!
わなわなしている私を見て、潮時だと思ったのかしら。
伯父さまは陛下と挨拶を交わし、私たちを下がらせてくれたの。

頭を下げながら考える。
これ、取り敢えずポケットに隠さなきゃ。
ついでに、この指、スカートで拭いたら怒られるかな?
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