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帝都のひと夏

皇太子殿下に、ディアナとして挨拶しました

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伯父さまに続いてその場に居た一門全員が頭を垂れる。気になって一瞬視線を向けると、父さまもきちんと頭を下げていた。ホッとして素早く私もカーテシーをする。
「宰相も皆も、頭を上げてくれ。」
直ぐに陛下のお言葉があり、目線を落としたままゆるゆると頭を上げた。
「堅苦しい挨拶は無しでと言ったでは無いか。コンラート一門がこのように頭を下げてしまうと、後のものが余の元へ来にくくなろう?」
この後誰も来なかったらどうしてくれる?
文句を言ってるけれど、口調は柔らかで、怒っているようには聞こえない。そっと上目遣いで見てみると、にこにこ笑っていた。
「陛下のお気遣いに上手くお答えできず申し訳ございません。他の者が大勢伺うよう、挨拶が終わり次第御前を失礼致します故お許しを。」
こっちも嫌味を言ってるようで、笑みを含んだ口調で返している。
意外と仲良し?そう思って聞いていると。
「そうそう、そちはさっさと去って構わぬが・・・早く紹介してくれぬか。余はこの日をとても楽しみにしていたのだから。な、皇后?」
わくわくしたような声音で陛下が結構ひどいことを言った。びっくりしていると、苦笑した伯父さまが、ルー兄さまと私を紹介する。
「・・・バーベンベルク辺境伯家の第四子、ディアナ・グンダハールでございます。ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じます。」
ルー兄さまの後に口上を述べ、再びカーテシーをすると。
「良い良い。疾く顔を上げよ。遠慮せず。」
陛下相手に申し訳ないけど、ワクワクとしか表せない口調で顔を上げるよう催促された。
ちら、と伯父さまを見上げると、軽く頷いたので、思い切って真っすぐ陛下へ視線を向ける。
「おお!これは・・・!」

そこには、私の顔を、、、正確には『瞳』を、食い入るように見つめて目をキラキラさせているおじさんがいた。
え、ちょっと、流石に引くんですけど。目線落としちゃダメかなぁ、、、。

伯父さまに、女の子相手に不躾な視線は嫌われますよ、と注意された陛下は、ハッとして目線を外してくれたから、ホッとして皇后陛下へ挨拶を続ける。
そして。
最後は殿下だ。
さっきから無表情で皇帝ご夫妻のやり取りをただ見つめていた殿下は、私が殿下の方を向いても表情を変えない。
うん。
ここではさらっと挨拶を済ませよう、てことだよね?
心の中で、流石分かってる!などと思いつつ、私はまた、頭を下げた。
「・・・どうぞお見知りおきを。」
先の二人と同じようにカーテシーをする。頭を上げて、二言三言話せばご飯だわ!
そう思ったのに。
「ああ、ディアナ嬢、顔を上げて、良く見せて下さい。やっと、やっとに会えました。」
さっきまでの無表情は何よ!と言うくらいの満面の笑みで、何と殿下は席から立ち上がった。そのまま私の前に歩み寄り。

え?

驚いて固まった私の手を取って軽く口付けると。
そのまま指の先をそっと握り、キラキラとした皇子さまオーラ全開で、私に目を合わせ微笑みかけてきた。

後ろではキャーッと言う嬌声が聞こえる。これでお友達つくりのハードルが上がったのは確定ね。
前では「お、フェリクスやるな・・・」「この手の早さ。誰に似たんでしょうね。」と言う、皇帝夫妻の聞きたくも無い会話が聞こえ。
横では。ああ、横では。「今すぐ消してやる。」「いいですね、父上、お手伝いします。」「待て、深呼吸だ、アル。ちょっとフィンもか!?」父さまや兄さまの冷たい気と母さまの焦った声が聞こえた。

ああ、頭が痛い。
フェリクス殿下。分かってるくせに何やってくれたんですか。私のご飯、どうしてくれるんですか。
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