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帝都のひと夏
男子部屋にてⅥ(ルー視点)
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ふん、つい長い回想をしてしまったが。
そうしてバーベンベルクの野郎三人が一晩掛けて作ったのが、マクシミリアン殿下に付けた特製の腕輪だ。
夜明けと共に持ち込んだ完成品を見て、効能を聞いた、自称下ネタに強い現役騎士団長殿は絶句し、、、反省していたら使わないで済むよう、発動は二段階に分けろと指示したが、、、ご慈悲も無駄だったな。
俺は一しきり笑うと涙をぬぐいながら声を掛けた。
「ほんとに反省しない馬鹿だな、殿下は。」
「あ?なんだと?」
流石に気になったのか、腕輪を取ろうと奮闘している姿を見ながら、俺はニンマリする。
「お優しい辺境伯閣下に、効能はきちんと伝えろと念を押されていますので。」
よく、聞いてくださいね。殿下。俺は笑いをかみ殺すと、ことさら丁寧に言った。
「先ず。それ、無理に取ろうとすると、抵抗を封じるために魔力を際限なく吸います。」
通常の魔力封印の腕輪は、生きるのに必要な魔力まで封じないが、これはその制御機能を外してある。腕輪の機能に抵抗すれば、際限なく魔力を吸い続ける。
「最後には魔力切れで昏倒、下手したら心臓が止まりますよ。」
早く受け入れたほうが良いですよ?
そう言うと、殿下は取り敢えず腕輪から手を離した。
多分魔力を吸われている自覚症状もあったんだろうな。
「それから・・・ディアナに近付くと運動機能が停止することは話しましたよね。殿下の神経を順番に麻痺させるから、これも無理しないで腕輪に従ってくださいね?」
「くっ。」
忌々しそうに腕輪を見る殿下。
「あ、ちなみに監視機能については、貴方の動きが、父上と母上の使い魔に筒抜けになりますから。」
忘れず付け加えねば。
ここまではフィン兄様の細工だ。
「そして・・・」
「なんだよ!まだあるのか!」
殿下はイライラをぶつけてくるが。
「いやですね、殿下。この腕輪の真の性能はここからですよ。」
俺はにっこり微笑んで続けた。
「殿下がディアナを・・・そして他の者も・・・欲情の対象として見る、若しくは思い浮かべるだけで、殿下の男性機能が退化し、女性化します。」
「・・・は?」
ライの顔で思い切り間抜け顔をさらすなよ。なんか情が移りそうになるだろ。
俺は視線を外して説明を続ける。
と言うか、ここからは父上の細工だから、説明も父上のメモ書きが頼りだ。
「つまり、貴方が、異性に欲情する。すると、その感情に刺激を受けて、本来は男性機能を刺激する物質が体内で作られるんです。しかし、この腕輪の機能はその刺激を逆に発することで、女性機能を刺激、発達させる物質が体内で作られるそうですよ。」
「?つまり、どういう事なんだ?」
殿下が首をかしげる。
うん、この説明、分からないだろうな。俺も分からなかった。
あのフィン兄様までが何度も父上の説明を聞き直していたからな。
だから、俺は、理解したフィン兄様が発した一言を説明の代用とする
「つまり、やりたいって思えば思うほど、勃たなくなるってこと、です。」
「は・・・あ?」
あんぐりと口を開ける殿下。ライの顔でやられると、ほんと気の毒になるからやめてくれ。
俺は手元のメモに視点を落として淡々と注意事項を説明することにした。
「あ、でも、初めはいけるらしいですね。ただ、結局強い欲情はそれだけ女性化を早めることになるので・・・そのうち退化してだんだん小さくなるらしいですよ。理論上は。」
何が、とは言わない。分かるだろ。
そして。
「最後には女性らしい曲線のある体に変化するとのことです。あ、お肌もすべすべになるそうですよ?」
「・・・・・・」
沈黙。
うん。俺達もこうなった。
半信半疑だよな。それも分かる。
「・・・ははっ。面白い冗談だな。」
強がって笑うのも想定内だ。
なぜなら、こいつは父上を良く知らない。
あの人はどうしようもない人だけど、嘘は吐かないんだ。あの人がこうなると言えば、こうなる。
俺たちはそれを知っているけど、こいつは知らないから。
だから、俺はまたにっこりした。
「信じる信じないは殿下のご自由に。俺は説明責任を果たしたまでの事。どうぞ後はご自分でご判断を。」
では俺は寝ますね。
立ち尽くす殿下を置いて、さっさと寝室に引き取ろうとすると、、、小さなノックの音がした。
そうしてバーベンベルクの野郎三人が一晩掛けて作ったのが、マクシミリアン殿下に付けた特製の腕輪だ。
夜明けと共に持ち込んだ完成品を見て、効能を聞いた、自称下ネタに強い現役騎士団長殿は絶句し、、、反省していたら使わないで済むよう、発動は二段階に分けろと指示したが、、、ご慈悲も無駄だったな。
俺は一しきり笑うと涙をぬぐいながら声を掛けた。
「ほんとに反省しない馬鹿だな、殿下は。」
「あ?なんだと?」
流石に気になったのか、腕輪を取ろうと奮闘している姿を見ながら、俺はニンマリする。
「お優しい辺境伯閣下に、効能はきちんと伝えろと念を押されていますので。」
よく、聞いてくださいね。殿下。俺は笑いをかみ殺すと、ことさら丁寧に言った。
「先ず。それ、無理に取ろうとすると、抵抗を封じるために魔力を際限なく吸います。」
通常の魔力封印の腕輪は、生きるのに必要な魔力まで封じないが、これはその制御機能を外してある。腕輪の機能に抵抗すれば、際限なく魔力を吸い続ける。
「最後には魔力切れで昏倒、下手したら心臓が止まりますよ。」
早く受け入れたほうが良いですよ?
そう言うと、殿下は取り敢えず腕輪から手を離した。
多分魔力を吸われている自覚症状もあったんだろうな。
「それから・・・ディアナに近付くと運動機能が停止することは話しましたよね。殿下の神経を順番に麻痺させるから、これも無理しないで腕輪に従ってくださいね?」
「くっ。」
忌々しそうに腕輪を見る殿下。
「あ、ちなみに監視機能については、貴方の動きが、父上と母上の使い魔に筒抜けになりますから。」
忘れず付け加えねば。
ここまではフィン兄様の細工だ。
「そして・・・」
「なんだよ!まだあるのか!」
殿下はイライラをぶつけてくるが。
「いやですね、殿下。この腕輪の真の性能はここからですよ。」
俺はにっこり微笑んで続けた。
「殿下がディアナを・・・そして他の者も・・・欲情の対象として見る、若しくは思い浮かべるだけで、殿下の男性機能が退化し、女性化します。」
「・・・は?」
ライの顔で思い切り間抜け顔をさらすなよ。なんか情が移りそうになるだろ。
俺は視線を外して説明を続ける。
と言うか、ここからは父上の細工だから、説明も父上のメモ書きが頼りだ。
「つまり、貴方が、異性に欲情する。すると、その感情に刺激を受けて、本来は男性機能を刺激する物質が体内で作られるんです。しかし、この腕輪の機能はその刺激を逆に発することで、女性機能を刺激、発達させる物質が体内で作られるそうですよ。」
「?つまり、どういう事なんだ?」
殿下が首をかしげる。
うん、この説明、分からないだろうな。俺も分からなかった。
あのフィン兄様までが何度も父上の説明を聞き直していたからな。
だから、俺は、理解したフィン兄様が発した一言を説明の代用とする
「つまり、やりたいって思えば思うほど、勃たなくなるってこと、です。」
「は・・・あ?」
あんぐりと口を開ける殿下。ライの顔でやられると、ほんと気の毒になるからやめてくれ。
俺は手元のメモに視点を落として淡々と注意事項を説明することにした。
「あ、でも、初めはいけるらしいですね。ただ、結局強い欲情はそれだけ女性化を早めることになるので・・・そのうち退化してだんだん小さくなるらしいですよ。理論上は。」
何が、とは言わない。分かるだろ。
そして。
「最後には女性らしい曲線のある体に変化するとのことです。あ、お肌もすべすべになるそうですよ?」
「・・・・・・」
沈黙。
うん。俺達もこうなった。
半信半疑だよな。それも分かる。
「・・・ははっ。面白い冗談だな。」
強がって笑うのも想定内だ。
なぜなら、こいつは父上を良く知らない。
あの人はどうしようもない人だけど、嘘は吐かないんだ。あの人がこうなると言えば、こうなる。
俺たちはそれを知っているけど、こいつは知らないから。
だから、俺はまたにっこりした。
「信じる信じないは殿下のご自由に。俺は説明責任を果たしたまでの事。どうぞ後はご自分でご判断を。」
では俺は寝ますね。
立ち尽くす殿下を置いて、さっさと寝室に引き取ろうとすると、、、小さなノックの音がした。
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