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帝都のひと夏

母さま!と??が到着した

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母さまが来た。
通常の速さの半分の旅程を一日縮めての強行軍で、でも、私と父さまにとってはやっと、来てくれた。

朝から魔導師団と街屋敷を何度も行き来し、先ぶれが来てからは何も手に着かない父さまと、お行儀が悪いのは承知で玄関辺りでたむろする。
ここのメイドは普段お祖父さまお祖母さまとしか接してないからか、私たちの落ち着かない様子を、あっけに取られて見ている。いや、躾のいいメイドたちだから、あからさまには見てこないけどね。

転移したくてうずうずしている父さまを必死でなだめ、もう無理、勝手にして!と匙を投げかけた頃。
やっと、ロータリーの方から馬車と騎馬の音が聞こえてきた。
「母さまだ!」「エレオノーレ!」
執事が扉を開けるのももどかしく外に出る。

先頭に一騎、一台の馬車を守る形で二騎が脇に付いている。
私たちを見て、先頭を来る馬上の人がサッと手を上げた。
「やあ!」
母さまだ。出発時より少し日焼けしてるけど、元気そう。
「玄関まで出てくれるなんて大歓迎だな。」
近付くと愛馬から飛び降りて両手を広げてくれた。

「母さ「エレオノーレ!!」」

ガシっ。

音がしたかと思うくらいの勢いで母さまに抱きつく父さま。そのままぎゅうぎゅう抱きしめて離さない。
「えーッと、父さま。ディーも・・・」
勢いに負けてぼそぼそ呟くと。
「アル、ただいま。ディー、元気か?」
母さまは父さまの背中を片手で軽くたたきながら、もう片方の手を私に差し伸べてくれた。近づくと抱きしめてくれる。
「ふふ、色々あって大変だったみたいだね?」
大丈夫?
ちょっと心配そうに聞かれるだけで、ホッとしたのが分かった。
「うん、母さまが来てくれたからもう安心。」
ニコッとすると、頭をなでてくれる。

ほっこりしていると。

「母上。ここでそんなことしていると、後がつかえます。さっさと中に入ってください。」
変わらぬ冷静な声がして。

「ルー兄さま!」
やっぱり少し日焼けして逞しくなったルー兄さまが、馬から降りて従僕に手綱を渡していた。私を見ても表情も変えず、「お前も早く中に入れ。」
と命令してくる。

もう、相変わらずなんだから。
ムッとしながら戻ろうとして、、、ふと馬車に目が行く。
「あれ、そう言えばあの中にいるのって・・・」
ライだっけ?

首をかしげる私を無視して、ルー兄さまは今度は母さまを手伝って、父さまを引きはがそうとしだした。
「父上、ここはバーベンベルクでは無いんですから恥ずかしい真似は止めて下さい。それに・・・」
未だ開かない馬車の扉を見やる。
「早くあの方の見た目をディー以外に変えて下さい。」
そうしないと扉が開けられないでしょう?

いつもながら冷静なお兄ちゃんだわ。でも、あの方って?
引っかかる物言いに、つい様子を伺うと。
「あ」と言って父さまはやっと母さまから離れた。
「そう言えばあいつがいたんだ・・・」
一転して忌々しそうにつぶやくと、母さまに「ライで良いんですか?」と尋ねる。

ん?ライなんじゃないの?
疑問に思う間もなく父さまが一瞥すると、馬車の中で「ゲッ」と言う声がした。

「大丈夫そうですね。開けてくれ。」
扉脇で待機していた騎士にルー兄さまが声をかけると、心得た騎士、、、母さまの副官の一人だ、、、が、サッと扉を開く。

中から出てきたのは、、、ライだ。
でも、何かおかしい。副官さんもぎょっとしてる。まあ、あの人は、そもそもさっき私を見てびっくりしてたけど。
近付いてくる歩き方が、とっても偉そう。ライはあんな歩き方しないもんね。
「なんだよこの格好・・・従者か?」なんて呟いてる。

??

疑問を飛ばしながら見ていると。
こっちを見たライ?と目が合った。
その途端。
にっこりして早足で来たライ?は、いきなり私の手を握り。

「愛しい人。やっと会えましたね。僕はユラン王国のマクシミリアンです。お小さい頃に何度かお会いしていますが、僕を覚えていらっしゃいませんか?」と宣った。


??、、、誰?
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