142 / 241
帝都のひと夏
母さま!と??が到着した
しおりを挟む
母さまが来た。
通常の速さの半分の旅程を一日縮めての強行軍で、でも、私と父さまにとってはやっと、来てくれた。
朝から魔導師団と街屋敷を何度も行き来し、先ぶれが来てからは何も手に着かない父さまと、お行儀が悪いのは承知で玄関辺りでたむろする。
ここのメイドは普段お祖父さまお祖母さまとしか接してないからか、私たちの落ち着かない様子を、あっけに取られて見ている。いや、躾のいいメイドたちだから、あからさまには見てこないけどね。
転移したくてうずうずしている父さまを必死でなだめ、もう無理、勝手にして!と匙を投げかけた頃。
やっと、ロータリーの方から馬車と騎馬の音が聞こえてきた。
「母さまだ!」「エレオノーレ!」
執事が扉を開けるのももどかしく外に出る。
先頭に一騎、一台の馬車を守る形で二騎が脇に付いている。
私たちを見て、先頭を来る馬上の人がサッと手を上げた。
「やあ!」
母さまだ。出発時より少し日焼けしてるけど、元気そう。
「玄関まで出てくれるなんて大歓迎だな。」
近付くと愛馬から飛び降りて両手を広げてくれた。
「母さ「エレオノーレ!!」」
ガシっ。
音がしたかと思うくらいの勢いで母さまに抱きつく父さま。そのままぎゅうぎゅう抱きしめて離さない。
「えーッと、父さま。ディーも・・・」
勢いに負けてぼそぼそ呟くと。
「アル、ただいま。ディー、元気か?」
母さまは父さまの背中を片手で軽くたたきながら、もう片方の手を私に差し伸べてくれた。近づくと抱きしめてくれる。
「ふふ、色々あって大変だったみたいだね?」
大丈夫?
ちょっと心配そうに聞かれるだけで、ホッとしたのが分かった。
「うん、母さまが来てくれたからもう安心。」
ニコッとすると、頭をなでてくれる。
ほっこりしていると。
「母上。ここでそんなことしていると、後がつかえます。さっさと中に入ってください。」
変わらぬ冷静な声がして。
「ルー兄さま!」
やっぱり少し日焼けして逞しくなったルー兄さまが、馬から降りて従僕に手綱を渡していた。私を見ても表情も変えず、「お前も早く中に入れ。」
と命令してくる。
もう、相変わらずなんだから。
ムッとしながら戻ろうとして、、、ふと馬車に目が行く。
「あれ、そう言えばあの中にいるのって・・・」
ライだっけ?
首をかしげる私を無視して、ルー兄さまは今度は母さまを手伝って、父さまを引きはがそうとしだした。
「父上、ここはバーベンベルクでは無いんですから恥ずかしい真似は止めて下さい。それに・・・」
未だ開かない馬車の扉を見やる。
「早くあの方の見た目をディー以外に変えて下さい。」
そうしないと扉が開けられないでしょう?
いつもながら冷静なお兄ちゃんだわ。でも、あの方って?
引っかかる物言いに、つい様子を伺うと。
「あ」と言って父さまはやっと母さまから離れた。
「そう言えばあいつがいたんだ・・・」
一転して忌々しそうにつぶやくと、母さまに「ライで良いんですか?」と尋ねる。
ん?ライなんじゃないの?
疑問に思う間もなく父さまが一瞥すると、馬車の中で「ゲッ」と言う声がした。
「大丈夫そうですね。開けてくれ。」
扉脇で待機していた騎士にルー兄さまが声をかけると、心得た騎士、、、母さまの副官の一人だ、、、が、サッと扉を開く。
中から出てきたのは、、、ライだ。
でも、何かおかしい。副官さんもぎょっとしてる。まあ、あの人は、そもそもさっき私を見てびっくりしてたけど。
近付いてくる歩き方が、とっても偉そう。ライはあんな歩き方しないもんね。
「なんだよこの格好・・・従者か?」なんて呟いてる。
??
疑問を飛ばしながら見ていると。
こっちを見たライ?と目が合った。
その途端。
にっこりして早足で来たライ?は、いきなり私の手を握り。
「愛しい人。やっと会えましたね。僕はユラン王国のマクシミリアンです。お小さい頃に何度かお会いしていますが、僕を覚えていらっしゃいませんか?」と宣った。
??、、、誰?
通常の速さの半分の旅程を一日縮めての強行軍で、でも、私と父さまにとってはやっと、来てくれた。
朝から魔導師団と街屋敷を何度も行き来し、先ぶれが来てからは何も手に着かない父さまと、お行儀が悪いのは承知で玄関辺りでたむろする。
ここのメイドは普段お祖父さまお祖母さまとしか接してないからか、私たちの落ち着かない様子を、あっけに取られて見ている。いや、躾のいいメイドたちだから、あからさまには見てこないけどね。
転移したくてうずうずしている父さまを必死でなだめ、もう無理、勝手にして!と匙を投げかけた頃。
やっと、ロータリーの方から馬車と騎馬の音が聞こえてきた。
「母さまだ!」「エレオノーレ!」
執事が扉を開けるのももどかしく外に出る。
先頭に一騎、一台の馬車を守る形で二騎が脇に付いている。
私たちを見て、先頭を来る馬上の人がサッと手を上げた。
「やあ!」
母さまだ。出発時より少し日焼けしてるけど、元気そう。
「玄関まで出てくれるなんて大歓迎だな。」
近付くと愛馬から飛び降りて両手を広げてくれた。
「母さ「エレオノーレ!!」」
ガシっ。
音がしたかと思うくらいの勢いで母さまに抱きつく父さま。そのままぎゅうぎゅう抱きしめて離さない。
「えーッと、父さま。ディーも・・・」
勢いに負けてぼそぼそ呟くと。
「アル、ただいま。ディー、元気か?」
母さまは父さまの背中を片手で軽くたたきながら、もう片方の手を私に差し伸べてくれた。近づくと抱きしめてくれる。
「ふふ、色々あって大変だったみたいだね?」
大丈夫?
ちょっと心配そうに聞かれるだけで、ホッとしたのが分かった。
「うん、母さまが来てくれたからもう安心。」
ニコッとすると、頭をなでてくれる。
ほっこりしていると。
「母上。ここでそんなことしていると、後がつかえます。さっさと中に入ってください。」
変わらぬ冷静な声がして。
「ルー兄さま!」
やっぱり少し日焼けして逞しくなったルー兄さまが、馬から降りて従僕に手綱を渡していた。私を見ても表情も変えず、「お前も早く中に入れ。」
と命令してくる。
もう、相変わらずなんだから。
ムッとしながら戻ろうとして、、、ふと馬車に目が行く。
「あれ、そう言えばあの中にいるのって・・・」
ライだっけ?
首をかしげる私を無視して、ルー兄さまは今度は母さまを手伝って、父さまを引きはがそうとしだした。
「父上、ここはバーベンベルクでは無いんですから恥ずかしい真似は止めて下さい。それに・・・」
未だ開かない馬車の扉を見やる。
「早くあの方の見た目をディー以外に変えて下さい。」
そうしないと扉が開けられないでしょう?
いつもながら冷静なお兄ちゃんだわ。でも、あの方って?
引っかかる物言いに、つい様子を伺うと。
「あ」と言って父さまはやっと母さまから離れた。
「そう言えばあいつがいたんだ・・・」
一転して忌々しそうにつぶやくと、母さまに「ライで良いんですか?」と尋ねる。
ん?ライなんじゃないの?
疑問に思う間もなく父さまが一瞥すると、馬車の中で「ゲッ」と言う声がした。
「大丈夫そうですね。開けてくれ。」
扉脇で待機していた騎士にルー兄さまが声をかけると、心得た騎士、、、母さまの副官の一人だ、、、が、サッと扉を開く。
中から出てきたのは、、、ライだ。
でも、何かおかしい。副官さんもぎょっとしてる。まあ、あの人は、そもそもさっき私を見てびっくりしてたけど。
近付いてくる歩き方が、とっても偉そう。ライはあんな歩き方しないもんね。
「なんだよこの格好・・・従者か?」なんて呟いてる。
??
疑問を飛ばしながら見ていると。
こっちを見たライ?と目が合った。
その途端。
にっこりして早足で来たライ?は、いきなり私の手を握り。
「愛しい人。やっと会えましたね。僕はユラン王国のマクシミリアンです。お小さい頃に何度かお会いしていますが、僕を覚えていらっしゃいませんか?」と宣った。
??、、、誰?
0
お気に入りに追加
2,162
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる