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皇宮での邂逅
エピソードⅣ オリヴィエ兄さまは葛藤中Ⅹ(終)
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随分と待たされてるから、つい昔のことをあれこれ思い出してしまった。
よっぽど嫌だったのか、結局あれから叔父は一度もディアナ嬢を帝都に連れて来なかったから、バーベンベルクに野暮用で行った時に、チラッと見ることしかできなかった。
あれから十年。
バーベンベルク辺境伯家の街屋敷で、本来の姿に戻ったディアナ嬢に、公式には初の面会をしようとしている。
今朝別れたディアナ嬢は男物のシャツを着ていたからか、とびっきりの美少年と言った感じだった。
その姿での可愛い仕草にグッときてしまったけど、、、まあ、それも倒錯的な格好に惑わされたに違いない。
社交界で十年、一通りの秘め事は嗜みとして経験した貴族の男としては、少し恥ずべきだな。
まあ、本来の姿になれば思春期前の女の子だ。
余裕を持って少しからかって男慣れさせてあげよう。
などと考えていると、隣の父が声をかけてきた。
「何を考えている?そろそろお出ましの様だぞ?」
確かに廊下の方から足音が聞こえてくる。
さあ、どんな姿かな?
僕は、盛大に褒めるべく気合を入れると、居住まいを正した。
そして、、、。
「いや、可愛かったな!ディーちゃん!」
バーベンベルク辺境伯の街屋敷を出て馬車が動き出すなり、父は上機嫌で話し出した。
「帝都でも滅多に見ない美少女じゃないか。一見エレオノーレそっくりだが、線の細さや顔立ちの柔らかさは、アルの血のなせる技なんだろうな。」
もちろん、あの一族は元々北の美形で有名だったけど、とか、これはデビューが楽しみだとか、父は呑気に話してるけど。
不味い。
非常に不味い。
僕は衝撃を和らげようと唇を噛みしめる。
ディアナ嬢は可愛かった。
美しかった。
マナーも立ち姿も完璧だった。
そして。
僕は再びグッと来てしまったのだ。
十歳の子どもに。
「どうしよう。」
思わずこぼれた呟きに、あっと思う間もなく父の眉がグイッと上がった。
「あれ、もしかしてオリヴィエ君、落ちちゃったの?」
「父上!」
「ふーん、そうか。帝都社交界の夜の帝王とか、一夜の夢を求めてご婦人方は列をなすとか言われてる君が、ねえ・・・」
「・・・息子をからかうのは面白いですか?」
恨みがましく睨んでやると。
父はおお怖い、と大げさに言ってから、、、ふと真面目な顔をした。
「それ、多分血のせいだから、気に病まない方がいいよ。」
「は?」
「コンラートの当主はね、代々報われない恋をする。その相手が、まあ、簡単に言うとアルフの母方の家系だ。」
「?!」
「女を好む君は、男のアルフしか見てないから発動しなかったんだな、、、。アルフの血の濃い女の子を見て、発動した。それだけだ。幼女趣味じゃないから安心しなさい。」
安心しなさいって、父上、、、。
「そ、その話をもっと詳しく・・・」
父にすがると、この悪党はニヤリといい笑顔を浮かべた。
「まあ、良い機会だから話しておくか。じゃあ、後の予定をキャンセルして、黒の森に行こう。」
馬車をコンラート公爵家の私有地である帝都郊外の狩場の森へ向けながら、父は何気なく言った。
「でも、知っても詮無いよ。いったん発動したら死ぬまで消えないし。」
「!」
「もう頑張って手に入れちゃえば?ディーちゃん。なんなら応援するけど?」
ディアナ嬢に強制的な政略結婚はさせられない。
と言うことは。
二十五歳の僕が。
社交界の帝王の僕が。
十歳の女の子を巡ってガキとガチ勝負をするってことか?
居た堪れない。でも、衝撃が消えない。
僕は深い葛藤に身を苛まれながら、馬車に揺られていた。
よっぽど嫌だったのか、結局あれから叔父は一度もディアナ嬢を帝都に連れて来なかったから、バーベンベルクに野暮用で行った時に、チラッと見ることしかできなかった。
あれから十年。
バーベンベルク辺境伯家の街屋敷で、本来の姿に戻ったディアナ嬢に、公式には初の面会をしようとしている。
今朝別れたディアナ嬢は男物のシャツを着ていたからか、とびっきりの美少年と言った感じだった。
その姿での可愛い仕草にグッときてしまったけど、、、まあ、それも倒錯的な格好に惑わされたに違いない。
社交界で十年、一通りの秘め事は嗜みとして経験した貴族の男としては、少し恥ずべきだな。
まあ、本来の姿になれば思春期前の女の子だ。
余裕を持って少しからかって男慣れさせてあげよう。
などと考えていると、隣の父が声をかけてきた。
「何を考えている?そろそろお出ましの様だぞ?」
確かに廊下の方から足音が聞こえてくる。
さあ、どんな姿かな?
僕は、盛大に褒めるべく気合を入れると、居住まいを正した。
そして、、、。
「いや、可愛かったな!ディーちゃん!」
バーベンベルク辺境伯の街屋敷を出て馬車が動き出すなり、父は上機嫌で話し出した。
「帝都でも滅多に見ない美少女じゃないか。一見エレオノーレそっくりだが、線の細さや顔立ちの柔らかさは、アルの血のなせる技なんだろうな。」
もちろん、あの一族は元々北の美形で有名だったけど、とか、これはデビューが楽しみだとか、父は呑気に話してるけど。
不味い。
非常に不味い。
僕は衝撃を和らげようと唇を噛みしめる。
ディアナ嬢は可愛かった。
美しかった。
マナーも立ち姿も完璧だった。
そして。
僕は再びグッと来てしまったのだ。
十歳の子どもに。
「どうしよう。」
思わずこぼれた呟きに、あっと思う間もなく父の眉がグイッと上がった。
「あれ、もしかしてオリヴィエ君、落ちちゃったの?」
「父上!」
「ふーん、そうか。帝都社交界の夜の帝王とか、一夜の夢を求めてご婦人方は列をなすとか言われてる君が、ねえ・・・」
「・・・息子をからかうのは面白いですか?」
恨みがましく睨んでやると。
父はおお怖い、と大げさに言ってから、、、ふと真面目な顔をした。
「それ、多分血のせいだから、気に病まない方がいいよ。」
「は?」
「コンラートの当主はね、代々報われない恋をする。その相手が、まあ、簡単に言うとアルフの母方の家系だ。」
「?!」
「女を好む君は、男のアルフしか見てないから発動しなかったんだな、、、。アルフの血の濃い女の子を見て、発動した。それだけだ。幼女趣味じゃないから安心しなさい。」
安心しなさいって、父上、、、。
「そ、その話をもっと詳しく・・・」
父にすがると、この悪党はニヤリといい笑顔を浮かべた。
「まあ、良い機会だから話しておくか。じゃあ、後の予定をキャンセルして、黒の森に行こう。」
馬車をコンラート公爵家の私有地である帝都郊外の狩場の森へ向けながら、父は何気なく言った。
「でも、知っても詮無いよ。いったん発動したら死ぬまで消えないし。」
「!」
「もう頑張って手に入れちゃえば?ディーちゃん。なんなら応援するけど?」
ディアナ嬢に強制的な政略結婚はさせられない。
と言うことは。
二十五歳の僕が。
社交界の帝王の僕が。
十歳の女の子を巡ってガキとガチ勝負をするってことか?
居た堪れない。でも、衝撃が消えない。
僕は深い葛藤に身を苛まれながら、馬車に揺られていた。
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