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皇宮での邂逅

エピソードⅣ オリヴィエ兄さまは葛藤中Ⅶ

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どうやらエレオノーレ様は色んな意味で随分とお疲れだったらしい。
父の顔を見て、アルフから聞いてる、後は任せなさい、と言われると、安心したように気を失ってしまった。
父に抱えられたエレオノーレ様を見て、遠巻きに見ていた男たちが、触れても大丈夫だ!と驚愕している。
なんだそれ?何やってたんだよ、叔父は?
まあ、それは後で問いただすとして、、、。

叔父も僕の彼女も戻ってこないし、、、どうしよう?

戸惑う僕に、父はてきぱきと指示を出した。
取り敢えず、城の大広間から出たところで父と交代し、エレオノーレ様を横抱きにしてコンラート公爵家に転移する。
久しぶりに戻った実家では、当然のように叔父夫妻の部屋が用意されていた。
気を失ったままのエレオノーレ様をベッドに下ろすと、執事と侍女頭に後を託して、急いで城に舞い戻る。
何食わぬ顔をして大広間に戻ろうとすると、ちょうど父と叔父が連れ立って、急ぎ足で出てくるところだった。

「父上。」
僕が呼びかけると。
「お、ご苦労だったね、オリヴィエ。こっちは片付いたよ。」
父は相変わらず飄々としてるけど、、、何が片付いたんだか。僕は溜め息を付くと叔父に向かった。
「僕の彼女はどうしました?」
「・・・ロンヌに返した。」ふん、とそっぽを向く。
「・・・は?」
訳が分からず聞き返す僕の顔を見もせず、叔父は父に、先に公爵邸に行くと言い出した。
「叔父上、どういうことです!」
エスコート中の女性を勝手に飛ばされてたまるか。訳ありそうだったけど、今は僕の彼女なんだし。
憤る僕と、今にも転移しそうな叔父を見て、父は一つ頷くと。
「取り敢えずここではなんだから、うちに行こうか。」
アルフ、頼んだよ?
にこやかに言うと、僕と叔父の肩を抱いた。


屋敷に着くなりエレオノーレ様のいる寝室に行ってしまった叔父の代わりに、父が話してくれたところによると。
僕の彼女のシンシアは、元々学園で叔父狙いのたくさんの女の子の筆頭だったらしい。
まあ、分かるよ。とっても可愛かっただろうし、彼女なら当時から男受けする術をきっちり身に着けてたろうし。自信満々だったと思うよ。
でも、全然落ちない叔父に業を煮やしたシンシアは、今度はエレオノーレ様を攻撃しだし、叔父の逆鱗に触れて隣国に留学と言う態で追放されたそうだ。
「ほら、アルフの好き放題させると何するかわからないからさ。その辺は私がうまく手を回してね。」
当時宰相になりたての父の苦労が偲ばれる、、、と思っていると。
「お陰で、ヘルマン子爵の密貿易の摘発にアルフが手を貸してくれてね。私の基盤固めに役に立ってくれたよ。」
相変わらず良い笑顔です、父上。
「向こうでおとなしくしてる分には良かったんだけど、旦那も死んで、手詰まりだったんだろうな。実家の母の見舞いと言う名目で一時帰国してからは、社交界を足場に隣国の手先として活動していてね。」
君が彼女を落としたって聞いたときは、何かこっちに仕掛けてくるかと警戒しちゃったよ。
父はにやにやして言うけど、、、それって僕は彼女に上手く使われてたって言いたい訳?
ムッとした僕の表情を見て、父はますます良い笑顔で言った。
「いや、大丈夫。今回は君じゃなくて、もう一度アルフを狙うのが目的だったみたいだから。」
こっちの社交界で二年、もてはやされて自信がついたんだろうねぇ。君と言う伝手があれば、取り敢えずアルフに話しかけることは出来るし。ロンヌ王国も、アルフが手に入れば万々歳だし。
今日の舞踏会で仕掛けるって読みは当たったね。
嬉しそうな笑顔がうざい。

「でも、アルフはエレオノーレ一筋だからね。二度と視界に入るな、て追い出したのに、話しかけてきたことに怒って追い返しちゃったって訳。残念だったねオリヴィエ。」

つまり、僕が頑張ってものにしたつもりの彼女は、そもそも僕のことは眼中に無かったと。
王国の指示にせよ、昔の意趣返しのつもりにせよ、叔父が目的で、僕はその足掛かりだったと。

くっそー。僕の自尊心はズタボロだ。
笑顔の父に、さっさと居なくなってしまった叔父に、そんな理由で僕と深い付き合いが出来た彼女に。何より、全く気付かなかった自分に、腹が立って仕方ない。

忌々しさと自分の情けなさに歯噛みする僕に、父はさりげなく話を続けた。

「でも、この話は今日の本題ではなくてね。」
まだあるのか?
傷心の息子を一晩そっとしておこうという優しさは、貴方には無いのか、、、まあ、無いんだろうな。

ちょっと明後日の方を向いた僕を気にせず、父は楽しそうに言う。
「君次第だけど・・・アルフが君を気にせざるを得ないように持っていくことが出来るかもしれない話なんだけど・・・これから聞くかい?」

また、罠なんだろうって心の底から思うのに。
この言葉を聞いて、今の僕に頷く以外の選択肢があるだろうか?

僕は涙目になりながら、父に向って黙って首肯した。
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