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皇宮での邂逅

今更ですが、聞かれました。

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「殿下、、、」
確かに急いで来たみたい。
木々の間を掻き分けて芝生に足を踏み入れると、辺りをサッと見回してから、膝に手をついて息を整えている。
後ろに執事がいないのは、追いついてないのか、連れて来なかったのか。

息が落ち着くと、もう一度辺りをゆっくりと見回し、、、少し不安げな顔になった。
父さまが結界を解いてないから、誰もいないように見えるよね。
「・・・まだ、来てないだけか?それとも・・・」
溜め息と共に小さく呟いたのが聞こえる。
私は父さまのお腹を肘でツンツンした。
「ね、いいでしょう?」
見上げると、こちらも溜め息を一つ吐いて、、、周りの空気がわずかに揺れた。

「っ、、、!」
息を呑むのが聞こえて。
振り返ると殿下が、目を見開いて突っ立っていた。
バッチリ目が合ってしまう。
「あ、」
「えっと、、、」
お互いに意味の無い声を発して、そのまま口籠ってしまった。
会うって決めたとは言え、顔を合わせるのは以来だから、結構気まずい。
父さまをチラッと見たけど、黙って殿下を見ている、、、沈黙がちょっと痛い。
困ったな、と思っていると。
殿下が、思い切ったように近づいて来た。私と父さまから、三歩くらい空けて立ち止まる。

剣の間合いだ。

「魔導師団長アルフレート殿、私の求めに応じてくれてありがとう。」
そして、視線を父さまに向けると、そのまま話しかけてきた。
父さまは黙ったままかすかに頷く。
うーん、何でこんなに偉そうなんだろう。相手は皇太子だって言うのに。
本来はこちらから頭を下げるんじゃないの?
思わずハラハラするけど、意外にも殿下は気にした風もなく、話を続けた。
「貴方と話したいが、先ず、貴方の連れと話がしたい。貴方に聞かれても構わないが、出来れば見守るだけにして、二人だけで話したい。良いだろうか?」

え?先ず私?二人だけで?
父さまを見上げると、私の顔を見下ろして、良い?と聞いてくる。

、、、うん。だって私が会うって言ったんだものね。
謝罪に口を出されたくないよね。
私が頷くのを確認すると、父さまは殿下に向かって軽く頷き、私の背後に一歩下がった。

「えーっと・・・」
戸惑いつつも殿下を見ると、話したいと言ったのに、さっきより難しい顔をして、私をジッと見つめてくる。
謝りたいって言ってたよね、、、でも、皇太子って謝ったりしなさそう。やっぱり言いにくいのかな?
取り敢えず私から、挨拶しておく?
「殿下」
頭を下げようとすると。
「待て。顔を上げてくれ。」
殿下に止められた。

「??」
顔を上げると、やっぱり難しい顔をしたままの殿下と目が合う。
そしてまた、ジッと見つめられて、沈黙。

どうしろと?

困り果てていると、やっと、殿下が口を開いた。
「きちんと君の名前を聞いた事は無かったね。君は、現在いまの君は、何者?」

「何者、と言われましても」
バーベンベルクの侍従見習いって、知ってるよね?
小首を傾げると、殿下は再び口を開いた。
「バーベンベルク城から来たライムンドが魔導師団の臨時侍従見習いになったことは知っている・・・会った事もある。」

「・・・」
ですよね。お会いした時の件で謝りたいんですよね?なら、それ以外なんて答えれば?

私の困惑を理解したらしい。
殿下は、ひどく真剣な表情で、私の目を真っ直ぐ見ながら続けた。

「だが、或る筋から、ライムンドはバーベンベルクの或るご令嬢の仮の姿だと言う話を聞いた。」
「!」
「もしそれが本当なら、私は、いや・・・」
殿下が何か言ってるけど、頭の中を素通りしていく。
殿下に知られてる?どこまで?或る筋って?もしや伯父さま?それともオリヴィエ兄さま?

「おい。聞いてるのか?えーっと、君?」
ちょっと放心していたみたい。
気付くと距離を詰められて、心配そうに覗き込まれていた。
殿下の珍しい碧蒼の瞳に、困惑したライムンドが映っているのが分かるくらい近い。
「君の周りから聞いた訳じゃないし、騙した、と怒ったりもしない。むしろ、もし、私の聞いた話が本当だとしたら、私は言葉遣いから態度から、全てを変えるべきなのかも知れないから。」
「でも、それを君が望んでるとは限らないだろう?私は、君の気持ちを尊重して話したいし・・・謝りたいんだ。」
「気持ち・・・」
思わず繰り返すと、殿下は頷いた。
「そう、君の気持ち。」
だから、敢えてもう一度聞くよ。
殿下は、ゆっくりと私の目を見て問いかけた。
「今、私と対峙している君は、何者なんだ、とね。」
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