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皇宮での邂逅
ディアナVSアルフレート 攻防中なのです(Ⅳ)
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急ぎ足で歩きながら、チラッと横顔を見る。
そんなに知ってる訳じゃないけど、ちょっとやつれた気がする。
やっぱり父さまのせいで眠れないのかな。でも、そんなこと知ってるなんて言えないし、、、。
うだうだ考えていると、ジキスムント君もこっちを見た。目が合う。
「歩きながら話せと言われたな。今話しても構わないか?」
うん、言ったね。軽く頷く。
「と言って、何から話せばいいのか・・・あ、まずは、この機会を作ってくれて有難う。」
彼は律儀にペコリと頭を下げた。
「あれから毎日来ていたが、身分を出そうと、頭を下げようと、門番殿は団長の意向と言って、絶対に入れてくれなかったんだ。」
一度、無理やり入ろうとしたら、強制的に転移させられて、気付いたら城門の脇に転がってたよ。言いながら苦笑いしている。
「それは・・・」
絶句してしまうが、おかしな事でもない。
魔導師団の門番は上級魔導師以上が一月交代で勤めていて、地位も高ければ、手当もよい。
時には狼藉者を成敗という名目で好きな魔術を掛けられることから、密かな人気職で、あ、と驚く人が務めていたりする。
魔導師団に入団当初の父さまもよく務めてたというからね、、、。
「締め出して当然だ。あんな事の後だからな。自分の侍従を傷付けられて、団長殿はお怒りだったのだろう。もちろん君も。」
「冷静に考えて、俺だって君の立場なら腹が立って会いたくないと思った。友人になろうと言われた奴に、いきなり剣を向けられるんだからな。」
俺はお前の信頼を裏切ったんだよな。
苦い表情で言う。
「確かに、もう、友人になる資格は無いと思った。でも、せめて直接謝りたいと思って来ていて、拒否されて。ここ数日は、これも自己満足なのかも知れないと悩んでいた。」
「今日は予定を理由に来るのを止めて、でもそんな心弱い自分を責めて。馬車の中でボーッと窓の外を眺めてグルグル考えていたら、一瞬君の顔が見えたんだ。」
あんなに悩んでいたのに、あ、と思ったら夢中で、馬車を止めさせて飛び出してしまったよ。
苦笑している。
「でも、せっかく君が振り向いてくれたのに、通用口が閉まって、、、だけど、諦めきれなくて。」
「そしたら、君が出て来て、君の味方の大人たちに歯向かってまで、こうやって話す機会をくれた。」
ジキスムント君が立ち止まり、私も思わず止まる。
「やっぱり、ライムンド、君はいい漢だ。他人の気持ちを理解出来る。他人の為に、自分の利益を犠牲に出来る、貴重な人間だ。」
「君の信頼を裏切った事を本当に後悔している。済まなかった。許してくれとは言わないが、せめて謝罪を受け入れてくれると、有難い。」
深く頭を垂れるジキスムント君。
本当に反省しているんだろうな。
でも。
ちょっと違うというか、納得出来ないところがあるんだよね。
慎重に言葉を紡ぐ。
「君の言いたいことは分かった。そこまで買ってくれる程、僕は立派じゃないけど、そう思ってくれることは嬉しい。」
ジキスムント君はぱっと顔を上げた。顔が明るい。
「なら、謝罪を受け入れてくれるのか?」
いや、でもね。
「君は、皇家の盾なんじゃなかったのか?どんな理由があれ、皇太子に剣を向ける者は見過ごせないんだろう?信念があるなら、友人にだって謝るべきじゃない。」
切れ長の蒼い目が、わずかに動揺した。
やっぱり。
「ねえ、君。」
確信はないんだけど。
「あの後、初めて来た時も、僕に会ったら謝る気だった?自分の役割をもっと説明して、僕に理解を求め、もう一度友人として考えて、と言うつもりだったんじゃないの?」
目を見据えると、驚いたように見開いてから、サッと逸らされた。
けっこう当たってそう。
「あんな出来ごとくらいで信念を変える人は、僕は逆に信用出来ないな。変えたのは、なんで?」
「そ、それは・・・」
もう一歩踏み込むと、ジキスムントくんは目を逸らしたまま、口籠った。
しばらく待つも、口を開く様子はない。
まあ、そんな内面、話せって言われてすぐ話せるものじゃないよね。
時間も無いし、、、謝罪だけ受け取って、終わりにしよう。
「ごめんね、厳しいこと言って。君の謝罪は受け入れるよ。」
私がニッコリ言うと、ハッとこちらを見返した。蒼い目に喜色が浮かぶ。
「では、友人として・・・」
言いかけるのを手で制す。
「今ね、団長が張っている君を排除する結界の中に、もう一つ結界を張って移動してるんだ。気付かれる前に君を出したいから、話がそれだけなら、急ごう。」
「排除する結界・・・」
ジキスムント君の顔が歪む。そりゃ、恐ろしいよね。
私は笑顔を深めた。
「大丈夫。話が出来て、僕も良かった。君のことはなんとしても守って、皇太子宮に連れて行くから。」
夢のことは、話してもらえない以上、助けてあげられないけど。
行こう!
強く言って、再び早足で歩き始めると。
「お願いだ、もう一つ、聞いてくれ!」
ジキスムント君は同じく早足で歩きながら、思い切ったような顔で言い出した。
そんなに知ってる訳じゃないけど、ちょっとやつれた気がする。
やっぱり父さまのせいで眠れないのかな。でも、そんなこと知ってるなんて言えないし、、、。
うだうだ考えていると、ジキスムント君もこっちを見た。目が合う。
「歩きながら話せと言われたな。今話しても構わないか?」
うん、言ったね。軽く頷く。
「と言って、何から話せばいいのか・・・あ、まずは、この機会を作ってくれて有難う。」
彼は律儀にペコリと頭を下げた。
「あれから毎日来ていたが、身分を出そうと、頭を下げようと、門番殿は団長の意向と言って、絶対に入れてくれなかったんだ。」
一度、無理やり入ろうとしたら、強制的に転移させられて、気付いたら城門の脇に転がってたよ。言いながら苦笑いしている。
「それは・・・」
絶句してしまうが、おかしな事でもない。
魔導師団の門番は上級魔導師以上が一月交代で勤めていて、地位も高ければ、手当もよい。
時には狼藉者を成敗という名目で好きな魔術を掛けられることから、密かな人気職で、あ、と驚く人が務めていたりする。
魔導師団に入団当初の父さまもよく務めてたというからね、、、。
「締め出して当然だ。あんな事の後だからな。自分の侍従を傷付けられて、団長殿はお怒りだったのだろう。もちろん君も。」
「冷静に考えて、俺だって君の立場なら腹が立って会いたくないと思った。友人になろうと言われた奴に、いきなり剣を向けられるんだからな。」
俺はお前の信頼を裏切ったんだよな。
苦い表情で言う。
「確かに、もう、友人になる資格は無いと思った。でも、せめて直接謝りたいと思って来ていて、拒否されて。ここ数日は、これも自己満足なのかも知れないと悩んでいた。」
「今日は予定を理由に来るのを止めて、でもそんな心弱い自分を責めて。馬車の中でボーッと窓の外を眺めてグルグル考えていたら、一瞬君の顔が見えたんだ。」
あんなに悩んでいたのに、あ、と思ったら夢中で、馬車を止めさせて飛び出してしまったよ。
苦笑している。
「でも、せっかく君が振り向いてくれたのに、通用口が閉まって、、、だけど、諦めきれなくて。」
「そしたら、君が出て来て、君の味方の大人たちに歯向かってまで、こうやって話す機会をくれた。」
ジキスムント君が立ち止まり、私も思わず止まる。
「やっぱり、ライムンド、君はいい漢だ。他人の気持ちを理解出来る。他人の為に、自分の利益を犠牲に出来る、貴重な人間だ。」
「君の信頼を裏切った事を本当に後悔している。済まなかった。許してくれとは言わないが、せめて謝罪を受け入れてくれると、有難い。」
深く頭を垂れるジキスムント君。
本当に反省しているんだろうな。
でも。
ちょっと違うというか、納得出来ないところがあるんだよね。
慎重に言葉を紡ぐ。
「君の言いたいことは分かった。そこまで買ってくれる程、僕は立派じゃないけど、そう思ってくれることは嬉しい。」
ジキスムント君はぱっと顔を上げた。顔が明るい。
「なら、謝罪を受け入れてくれるのか?」
いや、でもね。
「君は、皇家の盾なんじゃなかったのか?どんな理由があれ、皇太子に剣を向ける者は見過ごせないんだろう?信念があるなら、友人にだって謝るべきじゃない。」
切れ長の蒼い目が、わずかに動揺した。
やっぱり。
「ねえ、君。」
確信はないんだけど。
「あの後、初めて来た時も、僕に会ったら謝る気だった?自分の役割をもっと説明して、僕に理解を求め、もう一度友人として考えて、と言うつもりだったんじゃないの?」
目を見据えると、驚いたように見開いてから、サッと逸らされた。
けっこう当たってそう。
「あんな出来ごとくらいで信念を変える人は、僕は逆に信用出来ないな。変えたのは、なんで?」
「そ、それは・・・」
もう一歩踏み込むと、ジキスムントくんは目を逸らしたまま、口籠った。
しばらく待つも、口を開く様子はない。
まあ、そんな内面、話せって言われてすぐ話せるものじゃないよね。
時間も無いし、、、謝罪だけ受け取って、終わりにしよう。
「ごめんね、厳しいこと言って。君の謝罪は受け入れるよ。」
私がニッコリ言うと、ハッとこちらを見返した。蒼い目に喜色が浮かぶ。
「では、友人として・・・」
言いかけるのを手で制す。
「今ね、団長が張っている君を排除する結界の中に、もう一つ結界を張って移動してるんだ。気付かれる前に君を出したいから、話がそれだけなら、急ごう。」
「排除する結界・・・」
ジキスムント君の顔が歪む。そりゃ、恐ろしいよね。
私は笑顔を深めた。
「大丈夫。話が出来て、僕も良かった。君のことはなんとしても守って、皇太子宮に連れて行くから。」
夢のことは、話してもらえない以上、助けてあげられないけど。
行こう!
強く言って、再び早足で歩き始めると。
「お願いだ、もう一つ、聞いてくれ!」
ジキスムント君は同じく早足で歩きながら、思い切ったような顔で言い出した。
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