79 / 241
皇宮での邂逅
ディアナVSアルフレート 攻防中なのです(II)
しおりを挟む
父さまは今日も執務室にいない。
ううん。
正確に言うと、私のいない時に来て、着替えやらシャワーやら、ついでに仕事も済ませているらしい。
「お嬢も、もうちょっと歩み寄ってくれても・・・まあ、たまにとは言え、団長が顔を見せて仕事してればもういいです。」
顔色の戻ったエルンストさんに言われると、申し訳なさが募る。
でも、その一方で、イラっともするんだよね。
私は話す気になったのに、父さまが顔を見せてくれないから、仲直りしようにも出来ない。
エルンストさんはいい人だけど、そう言うの気がつく人じゃないから、だんだん私だけがワガママを通している雰囲気になってる。
もしバーベンベルクでこんなことになったら、母さまが仲を取り持ってくれるんだけどな。
まあ、今母さまに会ったら、私の気持ちより、父さまを一人にしたって責められそうだけどね。
周りに、ちょっと頼れて、話が分かる大人が何人かいるって、大切なことなんだな。
そんなことをぼんやり考えながら、午前中の書類を配り終える。
フィン兄さまと大学に行った日こそ仕事を放棄していたけど、次の日からは、父さまは仕事もキチンとしてる。
今朝も、昨日の夕方回ってきた書類が、キチンと処理されて机に乗っていた。
ローちゃんが言うには、夜中は大体執務室にいて、たまには寝室にも入って来て、私のこと見ているみたい。でも、魔力封印以外は、一切触れてないらしい。
「ふーん。」
冷たく返してしまったのは、ローちゃんのせいではなく、父さまがヘタレのせいで。
『主、我は役立たずか?』
それなのにローちゃんに気遣われてしまうと、益々自分がわがまま娘みたいでイヤになる。
「違うって。ローちゃんのこと怒ってないよ。」
そう言いながら、魔導師団の敷地内をフラフラ歩く。
昨日、一昨日は、父さまと話がしたくて直ぐに執務室に戻っていたんだけど、、、私がいない時にしか来ないんだもの。
私がいない方が、父さまもエルンストさんも助かるでしょ!
うん、分かってる。ちょっと拗ねてるよね、私。
でもさ、こう言う、自分以外はみんな敵って気分の時も、あるものよ、、、。
そんなことを思いながら、ふと、顔を上げると。
いつの間にか正門のところまで来ていた。
ここは、普段から人の行き来は有るけど、馬車があまり通らないので騒々しくない。
魔導師団はお役所の中でも一番奥にあるから、この門の前を通る道は皇宮の最奥、つまり皇帝陛下の家族が住まう宮殿に用がある人だけが使うのだ。
でも、今日はちょこちょこ通るのね、、、。
私は何の気なしに門に近づくと、門番の魔導師さんに声を掛けた。
「今日は割に馬車が通りますね。」
しかも、立派な、と言うより小綺麗な馬車が多い。
門番の魔導師さんは、、、一昨日のお昼に食堂で一緒になり、話をしたおじさんだった、、、私を認めると微かに笑みを浮かべた。
「やあ、ライムンド君。今日は何処かでお茶会があるみたいだよ。それより・・・団長のお使いは終わったのかい?」
「ええ、暇なのでちょっとフラフラしてます。」
「そうか。君が来てから、団長が真面目だと専らのウワサだ。バーベンベルクの皆さんに、団長が良いところを見せるチャンスだからかな。」
笑ってごまかしておく。
話しているとまた一台通った。
今度は立派な馬車の方。
何となく見つめていると、少し先で突然止まった。
「「?」」
門番さんと顔を見合わせると、馬車の扉が開き、中から転がるように人が出て来た。そのまま魔導師団の門に向かって走ってくる。
お手洗い?
あの慌てっぷり。案内した方がいいかな?
私が一歩踏み出した時。
「駄目だ!」
門番さんの顔が厳しくなり、私を中に押し戻そうとした。
「早く敷地内に戻って!ライムンド君!」
背中をぐいぐい押される。
え、危険な人なの?
と、思った途端。
「待ってくれ、ライムンド!」
直ぐ後ろで叫ぶような声がして。
思わず振り返ると。
門番さんに制止されているジキスムント君と、目が合った。
でも、門番さんが通用口を閉めた途端。
ジキスムント君の声も姿も私の前から消えて、時折馬車の通る、いつも通りの道が見えるだけで。
私はあっけに取られて立ち尽くしてしまったの。
ううん。
正確に言うと、私のいない時に来て、着替えやらシャワーやら、ついでに仕事も済ませているらしい。
「お嬢も、もうちょっと歩み寄ってくれても・・・まあ、たまにとは言え、団長が顔を見せて仕事してればもういいです。」
顔色の戻ったエルンストさんに言われると、申し訳なさが募る。
でも、その一方で、イラっともするんだよね。
私は話す気になったのに、父さまが顔を見せてくれないから、仲直りしようにも出来ない。
エルンストさんはいい人だけど、そう言うの気がつく人じゃないから、だんだん私だけがワガママを通している雰囲気になってる。
もしバーベンベルクでこんなことになったら、母さまが仲を取り持ってくれるんだけどな。
まあ、今母さまに会ったら、私の気持ちより、父さまを一人にしたって責められそうだけどね。
周りに、ちょっと頼れて、話が分かる大人が何人かいるって、大切なことなんだな。
そんなことをぼんやり考えながら、午前中の書類を配り終える。
フィン兄さまと大学に行った日こそ仕事を放棄していたけど、次の日からは、父さまは仕事もキチンとしてる。
今朝も、昨日の夕方回ってきた書類が、キチンと処理されて机に乗っていた。
ローちゃんが言うには、夜中は大体執務室にいて、たまには寝室にも入って来て、私のこと見ているみたい。でも、魔力封印以外は、一切触れてないらしい。
「ふーん。」
冷たく返してしまったのは、ローちゃんのせいではなく、父さまがヘタレのせいで。
『主、我は役立たずか?』
それなのにローちゃんに気遣われてしまうと、益々自分がわがまま娘みたいでイヤになる。
「違うって。ローちゃんのこと怒ってないよ。」
そう言いながら、魔導師団の敷地内をフラフラ歩く。
昨日、一昨日は、父さまと話がしたくて直ぐに執務室に戻っていたんだけど、、、私がいない時にしか来ないんだもの。
私がいない方が、父さまもエルンストさんも助かるでしょ!
うん、分かってる。ちょっと拗ねてるよね、私。
でもさ、こう言う、自分以外はみんな敵って気分の時も、あるものよ、、、。
そんなことを思いながら、ふと、顔を上げると。
いつの間にか正門のところまで来ていた。
ここは、普段から人の行き来は有るけど、馬車があまり通らないので騒々しくない。
魔導師団はお役所の中でも一番奥にあるから、この門の前を通る道は皇宮の最奥、つまり皇帝陛下の家族が住まう宮殿に用がある人だけが使うのだ。
でも、今日はちょこちょこ通るのね、、、。
私は何の気なしに門に近づくと、門番の魔導師さんに声を掛けた。
「今日は割に馬車が通りますね。」
しかも、立派な、と言うより小綺麗な馬車が多い。
門番の魔導師さんは、、、一昨日のお昼に食堂で一緒になり、話をしたおじさんだった、、、私を認めると微かに笑みを浮かべた。
「やあ、ライムンド君。今日は何処かでお茶会があるみたいだよ。それより・・・団長のお使いは終わったのかい?」
「ええ、暇なのでちょっとフラフラしてます。」
「そうか。君が来てから、団長が真面目だと専らのウワサだ。バーベンベルクの皆さんに、団長が良いところを見せるチャンスだからかな。」
笑ってごまかしておく。
話しているとまた一台通った。
今度は立派な馬車の方。
何となく見つめていると、少し先で突然止まった。
「「?」」
門番さんと顔を見合わせると、馬車の扉が開き、中から転がるように人が出て来た。そのまま魔導師団の門に向かって走ってくる。
お手洗い?
あの慌てっぷり。案内した方がいいかな?
私が一歩踏み出した時。
「駄目だ!」
門番さんの顔が厳しくなり、私を中に押し戻そうとした。
「早く敷地内に戻って!ライムンド君!」
背中をぐいぐい押される。
え、危険な人なの?
と、思った途端。
「待ってくれ、ライムンド!」
直ぐ後ろで叫ぶような声がして。
思わず振り返ると。
門番さんに制止されているジキスムント君と、目が合った。
でも、門番さんが通用口を閉めた途端。
ジキスムント君の声も姿も私の前から消えて、時折馬車の通る、いつも通りの道が見えるだけで。
私はあっけに取られて立ち尽くしてしまったの。
0
お気に入りに追加
2,166
あなたにおすすめの小説
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない
かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が
シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。
女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。
設定ゆるいです。
出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。
ちょいR18には※を付けます。
本番R18には☆つけます。
※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。
苦手な方はお戻りください。
基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる