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皇宮での邂逅
友だちはなるのも会うのも一苦労
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騎士団への道を、二日ぶりに歩いてる。
あの昼食の後、父さまが大変で、大変で。
伯父さまとオリヴィエ兄さまは、ジキスムント君の話をした瞬間は驚いたけど。
その後はむしろ興味深げに、何処が良かったの?性格?じゃあ顔や体型は関係ないの?などと、友だちを選ぶのにそこ気にするの?と言うところを聞いてきて。
爵位は、仕事は、とますます??なことを聞いてくるから、そう言えば、まだ正式に名乗りあって無いんです、と答えた。
「あ、そこまだなのね。」オリヴィエ兄さまがホッとした顔をして。
「そうか、ではまだ分からないな。令嬢とは、とかくより高位の貴族を、そして皇子を好むものだろう?」と伯父さまが分かったような顔で頷く。
私はムッとした。
友だちを爵位で選ぶなんて最低だわ!
「お言葉ですが、宰相閣下、補佐官殿。」
私は一歩下がって侍従の礼をした。
「私は今、しがない魔導師団の侍従見習いに過ぎません。おそらくは高位貴族であるあの少年たちに、なんのご挨拶が出来ましょう。」
「それでも、名乗りをせずに、友になりたいと言って下さった方に好意を持つのは、当然ではありませんか?」
つん、としながら言うと。
二人は虚を突かれたように黙った。
「美味しいお昼をありがとうございます。午後はまたお互いお仕事があるのですから、帰りましょう。」
さあ、さあ、とさっさと片付けをして荷物をオリヴィエ兄さまに押し付けると、お別れの挨拶をする。
振り向いて相変わらず固まったままの父さまに声をかけようとすると、オリヴィエ兄さまがスッと耳元に口を寄せた。
「ゴメンね、変なこと言って。ジキスムント・・・君はいい子だ。ディーちゃんはいい眼をしている。」
謝罪はきちんと受けるもの。私はにっこりした。
「ありがとう。」
「お詫びに一ついいことを教えてあげる。ここ、明け方に来て、この木に登ってごらん。木立に囲まれてて分かりづらいけど、此処は東向きに突き出た場所なんだ。日の出が最高に綺麗だよ。」
叔父さんの抱き枕だと無理かもしれないけどね。ウインクするオリヴィエ兄さま。
うん、顔はうちの兄上たちに張るけど、軽いね!
「機会があれば行ってみます。それではまた。」
まずは父さまをなんとかしなきゃ、そもそも帰れない。
私は一礼すると、父さまの腕を掴んで揺すぶった。
そこからはもう、父さまが離れてくれなくて。
執務中も、出来た書類を配りに行くのも(勿論姿を隠して)、ついでの魔術師団内お散歩も、お茶も、簡単な夕食も、、、流石にお風呂は断ったけど、姿を隠して付いてきていても、不思議じゃないくらいのくっつきっぷりで。
流石にまた一晩中これをやられたら、昨日までに逆戻りだ。
私は眠いのを堪えて父さまの執務に付き合うと、抱っこしてベッドに連れて行く父さまに、断固として言った。
「父さま、夜はちゃんと寝かせてね?」
「ディーが何処へも行かないよう、抱いている。でも、話しかけないよう我慢するから、それでいいだろう?」
渋々と言った父さまの声。
「それに、明日は休みだから、絶対、一日ディーといる。」
あ、断言した。でも、いいだろう?と縋るように抱き締められては、、、断れない。
どうせなら、と私はうんと明るく言った。
「じゃあ、一緒に帝都にお出かけしたいな。いいでしょう?」
「ディー・・・ありがとう。」
父さまがなぜか泣いてるような声で答えたので、不思議に思ったけど。
今日のお休みのキスには眠りの魔術が組まれてたみたいで。
私はあっという間に夢の世界だった。
次の日は一日、本当にべったり父さまと過ごした。
ちょっと色々覚悟して出かけたんだけど。
父さまは意外と街に詳しくって、思った以上に楽しかったの。
父さまもそうだったみたいで。
夜、寝室で並んで横になりながら、ポツポツ話してくれた。
「君に友だちが出来るのは、とってもいいことなのは、分かってる。」
「ただ、男と聞いたらもう、腹が立って仕方なくて。」
「取られそうで、不安で。」
「でも、友だちが出来ても、父さまと一緒の時間を過ごしてくれるなら、父さまも、受け入れないとね。」
「嫌だけど、本当は消してしまいたいくらいだけど。」
「消しちゃダメなんだろう?」
暗闇の中、私の目を覗き込んでくる父さま。
それ、私がイイよ、て言ったら、消しちゃうの?
「ダメ、父さま。だってそんなの、犯罪だよ。」
「見つからなければいいんなら、やりようはいくらでも・・・」
「ダメ!絶対!」
なんてこと言うんだ、この人は。
言い募ろうとすると、フゥッと溜め息をつかれた。
「君はそう言うところ、私に似なくて良かったね。エレオノーレの、人としての常識をきちんと持ってる。」
ここに来てから、父さまは時々こう言う、自分が人じゃないみたいな言い方をする。
「変なの。」
私が笑うと、父さまはちょっと寂しそうに、
「君は眠れるんだから、寝なさい。」
とお休みのキスをくれた。昨日と違って、ただのキスだったけど。
笑いながら抱きついて、私はそのまま朝までぐっすりだった。
二日空いたけど。
ジキスムント君は今日も訓練してるかな?
意外にも父さまが普通に送り出してくれたので、一昨日よりゆったりとした気持ちで歩く。
しばらく行くと、また、あの子たちの声が聞こえてきた。
慣れてきた私も、そっと茂みの中に潜り込み、隠れながらよく見える位置を探す。
やってる。
今日は年配の騎士さんと、一人一人試合をしているみたい。
今は白金長髪君がやってる。
あの子は型通りでつまらない剣なんだよな。
真面目なのは分かるんだけど。
次は白金短髪君だ。
この子はやる気が無い。でも、要領良さそうだから、強さはさっきの長髪君と張るけど。剣だけじゃなく、なんでも要領よくやってるんだろうな。
こう言う人、バーベンベルクの騎士団訓練生にもたまに居たけど、最後には真面目な人に抜かされるんだよね、、、。
あ、次はあのエラそうな金髪君がやるみたい。また文句言ったりするのかな?
早くジキスムント君の剣が見たいね、とローちゃんに何となく声を掛けながら手のひらに誘う。
指で頭を撫でながら試合を見ると、、、
一昨日とは全然違う彼がいた。
金髪君どうしちゃったんだろう?
思わず見つめてしまう。
意気込みが全然違う。
打ち込みも返しもまだまだ甘いけど、一振り一振り考えてるのがよく分かる。
騎士さんと試合だから?ううん、そうでもなさそう。
終わった彼は、そのまま列に戻らず、今注意を受けたらしい打ち込みを何度か繰り返していた。
どんな心境の変化が?
気になったけど。
ジキスムント君の剣を見たいしね。
今日のジキスムント君は気合が入ってた。見ていて気持ちいい。
うん、騎士団最高!魔力持ちだから将来は魔導師、と言われてるけど、やっぱり私も騎士になりたいな。
そんなことを思っていると。
訓練が終わり、またジキスムント君だけが残った。
私はもう、呼ばれなくても顔を出す。
「おーい!」
軽く叫んで、答えも待たず訓練場に飛び降りたその時。
「お前、何者だ!」
門のところに、いつの間にか、帰ったはずの少年三人が、佇んでいた。
あの昼食の後、父さまが大変で、大変で。
伯父さまとオリヴィエ兄さまは、ジキスムント君の話をした瞬間は驚いたけど。
その後はむしろ興味深げに、何処が良かったの?性格?じゃあ顔や体型は関係ないの?などと、友だちを選ぶのにそこ気にするの?と言うところを聞いてきて。
爵位は、仕事は、とますます??なことを聞いてくるから、そう言えば、まだ正式に名乗りあって無いんです、と答えた。
「あ、そこまだなのね。」オリヴィエ兄さまがホッとした顔をして。
「そうか、ではまだ分からないな。令嬢とは、とかくより高位の貴族を、そして皇子を好むものだろう?」と伯父さまが分かったような顔で頷く。
私はムッとした。
友だちを爵位で選ぶなんて最低だわ!
「お言葉ですが、宰相閣下、補佐官殿。」
私は一歩下がって侍従の礼をした。
「私は今、しがない魔導師団の侍従見習いに過ぎません。おそらくは高位貴族であるあの少年たちに、なんのご挨拶が出来ましょう。」
「それでも、名乗りをせずに、友になりたいと言って下さった方に好意を持つのは、当然ではありませんか?」
つん、としながら言うと。
二人は虚を突かれたように黙った。
「美味しいお昼をありがとうございます。午後はまたお互いお仕事があるのですから、帰りましょう。」
さあ、さあ、とさっさと片付けをして荷物をオリヴィエ兄さまに押し付けると、お別れの挨拶をする。
振り向いて相変わらず固まったままの父さまに声をかけようとすると、オリヴィエ兄さまがスッと耳元に口を寄せた。
「ゴメンね、変なこと言って。ジキスムント・・・君はいい子だ。ディーちゃんはいい眼をしている。」
謝罪はきちんと受けるもの。私はにっこりした。
「ありがとう。」
「お詫びに一ついいことを教えてあげる。ここ、明け方に来て、この木に登ってごらん。木立に囲まれてて分かりづらいけど、此処は東向きに突き出た場所なんだ。日の出が最高に綺麗だよ。」
叔父さんの抱き枕だと無理かもしれないけどね。ウインクするオリヴィエ兄さま。
うん、顔はうちの兄上たちに張るけど、軽いね!
「機会があれば行ってみます。それではまた。」
まずは父さまをなんとかしなきゃ、そもそも帰れない。
私は一礼すると、父さまの腕を掴んで揺すぶった。
そこからはもう、父さまが離れてくれなくて。
執務中も、出来た書類を配りに行くのも(勿論姿を隠して)、ついでの魔術師団内お散歩も、お茶も、簡単な夕食も、、、流石にお風呂は断ったけど、姿を隠して付いてきていても、不思議じゃないくらいのくっつきっぷりで。
流石にまた一晩中これをやられたら、昨日までに逆戻りだ。
私は眠いのを堪えて父さまの執務に付き合うと、抱っこしてベッドに連れて行く父さまに、断固として言った。
「父さま、夜はちゃんと寝かせてね?」
「ディーが何処へも行かないよう、抱いている。でも、話しかけないよう我慢するから、それでいいだろう?」
渋々と言った父さまの声。
「それに、明日は休みだから、絶対、一日ディーといる。」
あ、断言した。でも、いいだろう?と縋るように抱き締められては、、、断れない。
どうせなら、と私はうんと明るく言った。
「じゃあ、一緒に帝都にお出かけしたいな。いいでしょう?」
「ディー・・・ありがとう。」
父さまがなぜか泣いてるような声で答えたので、不思議に思ったけど。
今日のお休みのキスには眠りの魔術が組まれてたみたいで。
私はあっという間に夢の世界だった。
次の日は一日、本当にべったり父さまと過ごした。
ちょっと色々覚悟して出かけたんだけど。
父さまは意外と街に詳しくって、思った以上に楽しかったの。
父さまもそうだったみたいで。
夜、寝室で並んで横になりながら、ポツポツ話してくれた。
「君に友だちが出来るのは、とってもいいことなのは、分かってる。」
「ただ、男と聞いたらもう、腹が立って仕方なくて。」
「取られそうで、不安で。」
「でも、友だちが出来ても、父さまと一緒の時間を過ごしてくれるなら、父さまも、受け入れないとね。」
「嫌だけど、本当は消してしまいたいくらいだけど。」
「消しちゃダメなんだろう?」
暗闇の中、私の目を覗き込んでくる父さま。
それ、私がイイよ、て言ったら、消しちゃうの?
「ダメ、父さま。だってそんなの、犯罪だよ。」
「見つからなければいいんなら、やりようはいくらでも・・・」
「ダメ!絶対!」
なんてこと言うんだ、この人は。
言い募ろうとすると、フゥッと溜め息をつかれた。
「君はそう言うところ、私に似なくて良かったね。エレオノーレの、人としての常識をきちんと持ってる。」
ここに来てから、父さまは時々こう言う、自分が人じゃないみたいな言い方をする。
「変なの。」
私が笑うと、父さまはちょっと寂しそうに、
「君は眠れるんだから、寝なさい。」
とお休みのキスをくれた。昨日と違って、ただのキスだったけど。
笑いながら抱きついて、私はそのまま朝までぐっすりだった。
二日空いたけど。
ジキスムント君は今日も訓練してるかな?
意外にも父さまが普通に送り出してくれたので、一昨日よりゆったりとした気持ちで歩く。
しばらく行くと、また、あの子たちの声が聞こえてきた。
慣れてきた私も、そっと茂みの中に潜り込み、隠れながらよく見える位置を探す。
やってる。
今日は年配の騎士さんと、一人一人試合をしているみたい。
今は白金長髪君がやってる。
あの子は型通りでつまらない剣なんだよな。
真面目なのは分かるんだけど。
次は白金短髪君だ。
この子はやる気が無い。でも、要領良さそうだから、強さはさっきの長髪君と張るけど。剣だけじゃなく、なんでも要領よくやってるんだろうな。
こう言う人、バーベンベルクの騎士団訓練生にもたまに居たけど、最後には真面目な人に抜かされるんだよね、、、。
あ、次はあのエラそうな金髪君がやるみたい。また文句言ったりするのかな?
早くジキスムント君の剣が見たいね、とローちゃんに何となく声を掛けながら手のひらに誘う。
指で頭を撫でながら試合を見ると、、、
一昨日とは全然違う彼がいた。
金髪君どうしちゃったんだろう?
思わず見つめてしまう。
意気込みが全然違う。
打ち込みも返しもまだまだ甘いけど、一振り一振り考えてるのがよく分かる。
騎士さんと試合だから?ううん、そうでもなさそう。
終わった彼は、そのまま列に戻らず、今注意を受けたらしい打ち込みを何度か繰り返していた。
どんな心境の変化が?
気になったけど。
ジキスムント君の剣を見たいしね。
今日のジキスムント君は気合が入ってた。見ていて気持ちいい。
うん、騎士団最高!魔力持ちだから将来は魔導師、と言われてるけど、やっぱり私も騎士になりたいな。
そんなことを思っていると。
訓練が終わり、またジキスムント君だけが残った。
私はもう、呼ばれなくても顔を出す。
「おーい!」
軽く叫んで、答えも待たず訓練場に飛び降りたその時。
「お前、何者だ!」
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