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皇宮での邂逅
父さまに叱られたので、小鳥に名前を付けました。
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あの後、昼食を挟んで、たーーっぷり父さまに叱られている。
ちょっと目を離したスキに知らない奴に会ってだの、危ない目に遭ってだのと父さまは言うけど、使い魔付けて何かと口出しするわ、突然来ちゃうわ、何処が目を離しているのか全く理解できない。
しかも。
執務室を出る前は殆ど機能して無かったのに、どうしてこんなに自信とやる気、、、主に私の監視に対して、、、に溢れてるの??
ついつい、側に控えるエルンストさんを恨めしく見つめると。
ちょっと気まずそうに種明かしをしてくれた。
なんと、父さまったら、私が出かけて一時間もしないうちに、使い魔を飛ばして母さまに謝ったらしい。
「すごい速さで仕事を終わらせて下さったので、まあご褒美ですね。」
エルンストさんに言われても、平然としている。
ご褒美って、、、。
なんだか父さまに抱いていた尊敬の念が段々と薄れていくわ。
まあ、とにかく。
母さまになんて言われるか、戦々恐々だった父さまは、なんと母さまから、早々に謝罪を引き出したらしい。
おまけに、(そこは教えてくれなかったけど、エルンストさんの表情から見るに)母さまから愛情溢れるお言葉を受け取ったようだ。
見違えるように自信に溢れた父さまに、母さまはダメ押しの一言として、くれぐれもディーを頼むと、困ったり悩んだら助けて欲しい、皇宮で頼めるのは貴方だけだ、と頼んだらしいのだ。
通常仕様で、父さまは母さまの頼みを120%叶える。
それが、貴方しか頼れないなんて言われた日には、どうなってしまうのか。
暇さえあれば、いや、一日中私について回るに決まっている。
さっきは結果的に助かったけど。
でも、父さまが急に話しかけてくるから、頭が真っ白になって不審がられただけで、あのまま一人だったら、後の三人の男の子が来ても、普通に迷子で押し通せたかもしれないじゃない。
もしかしたら、知り合いになったかも知れないのに。
もし、よ?
これから、父さまに、ずーっとついて回られたら、私の気ままな皇宮探検はユメマボロシとなってしまうじゃない。
それはイヤだ。
絶対にイヤ!
私はとりあえず共闘すべく、エルンストさんに向き直った。
「エルンストさん、これは、とっても大きな問題だと思うんです。」
父さまのお小言は聞き流して話しかける。
「このまま父さまが私を監視する気満々のままだと、これから半月、お仕事は全く捗らないと思うんです。」
「もし、書類のお仕事はさっさと進んでも、会議なんかは全く行かなくなっちゃうでしょう。それって、大変なことじゃないですか?」
どうよ。共闘する気にならない?!
「うーん、まあ、それはそうなんですけどね。」
エルンストさんは困ったように笑った。
あら、エルンストさんは困らないのかしら?
「元々団長は会議サボりがちでしてね。嬢ちゃんがバーベンベルク辺境伯を見て想像しているほど、団長の絡む会議は多くないんですよ。」
「え・・・」
私は思わず父さまを見つめる。流石に副官のこの発言は恥ずかしかったのか、父さまはそっぽを向いていた。
「無駄な会議が多いから、峻別しているだけだ。エル、変なことをディーに吹き込むな。」
そのまま私を見て訴えてくる。
「今は忙しい時期では無いから、朝と午後一番、夕方其々に半刻も書類を見れば、団長としての最低限の仕事は終わるんだ。」
だから、後はずーっとディーと一緒に居て、変な奴らから守ってあげるから。
「何なら、私が皇宮と帝都を全て案内してあげよう。」
何処でも一瞬で連れて行ってあげるし、何でも買ってあげる。
そう言いながら、一人でうんうん頷く父さま。
ずーっと、父さまとデート。
いや、一日とかなら、嬉しいと思うけど。
半月、自由な時間を全て、、、。
「皇帝陛下が居ない時にでも、玉座に座ってみる?それとも帝都を一望できる天究の塔の天辺でも行こうか?エレオノーレ は高いところを喜んだから・・・それとも女の子はやっぱり買い物だろうか?でも、宝石とかドレスは分からないな、エレオノーレにはよく短剣や髪留めを・・・」
一人でどんどん話しを進める父さま。私のこと、全く考えてない。そんな父さまとお出かけなんて、、、
「・・・や」
「なんだ、ディー。」
言いながら、父さまはエルンストさんを見て、最近の帝都の流行りは、、、なんて聞いてる。私を見もしないで。
「イヤって言ってるの。」
思わぬ低い声が出た。ライの声でも、こんな声が出るんだ。
「父さまとは出かけない。絶対出かけない。」
おかしいと思ったのか、父さまがやっと私を見た。見て、漸く。
「ディー、ど、どうした・・・」
私の怒りに気づいたらしい。声が上ずっている。
でも、知らない。母さまにちょっと乗せられて、私の楽しみを奪うことに気づきもしない父さまなんて、知らない。
「今の父さまはキライ。私、伯父さまに言い付けます!皇宮で困ったら、必ず助けてくれるって、仰ったもの。小鳥さん、伯父さまのところへ行ってちようだい!」
「あ、待て!」
「ダメ!小鳥さん、行って!」
小鳥は、父さまの制止に一瞬止まったけど、わたしが再度お願いすると、サッと消えた。そして、涙目で睨みつける私に、父さまがオロオロしているうちに。
なんと、オリヴィエ兄さまと伯父さまが、直接現れたの。
「やあ、アルフ。可愛いレディに何をしたんだい?」
伯父さまの笑みは柔らかくも真っ黒で。
私は呼んではいけないものを呼んでしまったのでは、と、その時初めて思ったの。
でも、心配は要らなかった。
伯父さまは、ご自分で仰る通り私の困りごとを、すぐに解決してくれた。
父さまは私から助けを求めない限り私の行動について行かないこと。
私は侍従見習いの仕事の他は、一日好きに歩き回っていいこと
その代わり、朝食は必ず父さまと取ること。夜は父さまの寝室で休むこと。
そして。
使い魔に早く名前をつけること。
「小鳥さんに名前?」
思いがけないことを言われて驚く。
オリヴィエ兄さまが可笑しそうに言った。
「ディーちゃんに、早く名前付けなって言ったでしょう?使い魔は名前をつけてくれた人を第一の主人にするんだ。考えて話し合ったりしてる時も、他の指令より優先して聞いてるくらい、使い魔にとっては大事なことなんだよ。」
小鳥さんは名前をつければ、私の意思を一番に尊重してくれるんだ。さっき名前の話をしていたから、父さまの制止より、私を優先してくれたのかもしれない。
それなら、すぐにでも付けなくちゃ!
「おいで」
手のひらを向けると、伯父さまたちと戻って私の肩に止まっていた小鳥は、ちょん、と手のひらに乗った。
目をしっかり合わせる。
「大事な友達には大事な名前をあげなきゃね。私のミドルネームアウローラからローラ、ローちゃんよ。」
よろしくね、ローちゃん。と言いながら、契約と同じように額にキスしてみた。
すると、今度は小鳥さんから、ううん、ローちゃんから、温かいものが流れ込んでくる。
『ディー、私の主。』
そして心の中に声が聞こえた。
「ローちゃんの声?」
思わず聞き返すと、小鳥がコックリ頷く。
「おや、もう名前が付いてしまったらしい。叔父さんもこれで監視は難しいですね。」
ニヤニヤしながらオリヴィエ兄さまが父さまに話しかける。
「そうだぞ。アルフ。皆が皆、エレオノーレ 殿の忍耐力と寛容さを持っているわけではない。ディーちゃんに好かれたいなら、その辺はわきまえなくては。」
伯父さままで、援護してくれて。
「分かりました。兄上。オリヴィエはいつか覚えてろよ。」
不穏な言葉を吐きながらも。
「ディー、ごめん。これから出来るだけディーの気持ちは尊重するから」
だから、父さまを嫌わないで欲しい。
そう言う父さまは、ちょっと情けなくて。でも、そう言うところも父さまなんだって受け入れることが出来たので。
「うん、大丈夫。父さま大好き。」
私は父さまにギュッと抱きついた。
「一回くらいは、一緒にお出かけもしようね。」
あとは見守っててね、と言うと。
「くぅっ。天国と地獄・・・」
父さまはわたしを抱きしめながら呟いた。
ちょっと目を離したスキに知らない奴に会ってだの、危ない目に遭ってだのと父さまは言うけど、使い魔付けて何かと口出しするわ、突然来ちゃうわ、何処が目を離しているのか全く理解できない。
しかも。
執務室を出る前は殆ど機能して無かったのに、どうしてこんなに自信とやる気、、、主に私の監視に対して、、、に溢れてるの??
ついつい、側に控えるエルンストさんを恨めしく見つめると。
ちょっと気まずそうに種明かしをしてくれた。
なんと、父さまったら、私が出かけて一時間もしないうちに、使い魔を飛ばして母さまに謝ったらしい。
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エルンストさんに言われても、平然としている。
ご褒美って、、、。
なんだか父さまに抱いていた尊敬の念が段々と薄れていくわ。
まあ、とにかく。
母さまになんて言われるか、戦々恐々だった父さまは、なんと母さまから、早々に謝罪を引き出したらしい。
おまけに、(そこは教えてくれなかったけど、エルンストさんの表情から見るに)母さまから愛情溢れるお言葉を受け取ったようだ。
見違えるように自信に溢れた父さまに、母さまはダメ押しの一言として、くれぐれもディーを頼むと、困ったり悩んだら助けて欲しい、皇宮で頼めるのは貴方だけだ、と頼んだらしいのだ。
通常仕様で、父さまは母さまの頼みを120%叶える。
それが、貴方しか頼れないなんて言われた日には、どうなってしまうのか。
暇さえあれば、いや、一日中私について回るに決まっている。
さっきは結果的に助かったけど。
でも、父さまが急に話しかけてくるから、頭が真っ白になって不審がられただけで、あのまま一人だったら、後の三人の男の子が来ても、普通に迷子で押し通せたかもしれないじゃない。
もしかしたら、知り合いになったかも知れないのに。
もし、よ?
これから、父さまに、ずーっとついて回られたら、私の気ままな皇宮探検はユメマボロシとなってしまうじゃない。
それはイヤだ。
絶対にイヤ!
私はとりあえず共闘すべく、エルンストさんに向き直った。
「エルンストさん、これは、とっても大きな問題だと思うんです。」
父さまのお小言は聞き流して話しかける。
「このまま父さまが私を監視する気満々のままだと、これから半月、お仕事は全く捗らないと思うんです。」
「もし、書類のお仕事はさっさと進んでも、会議なんかは全く行かなくなっちゃうでしょう。それって、大変なことじゃないですか?」
どうよ。共闘する気にならない?!
「うーん、まあ、それはそうなんですけどね。」
エルンストさんは困ったように笑った。
あら、エルンストさんは困らないのかしら?
「元々団長は会議サボりがちでしてね。嬢ちゃんがバーベンベルク辺境伯を見て想像しているほど、団長の絡む会議は多くないんですよ。」
「え・・・」
私は思わず父さまを見つめる。流石に副官のこの発言は恥ずかしかったのか、父さまはそっぽを向いていた。
「無駄な会議が多いから、峻別しているだけだ。エル、変なことをディーに吹き込むな。」
そのまま私を見て訴えてくる。
「今は忙しい時期では無いから、朝と午後一番、夕方其々に半刻も書類を見れば、団長としての最低限の仕事は終わるんだ。」
だから、後はずーっとディーと一緒に居て、変な奴らから守ってあげるから。
「何なら、私が皇宮と帝都を全て案内してあげよう。」
何処でも一瞬で連れて行ってあげるし、何でも買ってあげる。
そう言いながら、一人でうんうん頷く父さま。
ずーっと、父さまとデート。
いや、一日とかなら、嬉しいと思うけど。
半月、自由な時間を全て、、、。
「皇帝陛下が居ない時にでも、玉座に座ってみる?それとも帝都を一望できる天究の塔の天辺でも行こうか?エレオノーレ は高いところを喜んだから・・・それとも女の子はやっぱり買い物だろうか?でも、宝石とかドレスは分からないな、エレオノーレにはよく短剣や髪留めを・・・」
一人でどんどん話しを進める父さま。私のこと、全く考えてない。そんな父さまとお出かけなんて、、、
「・・・や」
「なんだ、ディー。」
言いながら、父さまはエルンストさんを見て、最近の帝都の流行りは、、、なんて聞いてる。私を見もしないで。
「イヤって言ってるの。」
思わぬ低い声が出た。ライの声でも、こんな声が出るんだ。
「父さまとは出かけない。絶対出かけない。」
おかしいと思ったのか、父さまがやっと私を見た。見て、漸く。
「ディー、ど、どうした・・・」
私の怒りに気づいたらしい。声が上ずっている。
でも、知らない。母さまにちょっと乗せられて、私の楽しみを奪うことに気づきもしない父さまなんて、知らない。
「今の父さまはキライ。私、伯父さまに言い付けます!皇宮で困ったら、必ず助けてくれるって、仰ったもの。小鳥さん、伯父さまのところへ行ってちようだい!」
「あ、待て!」
「ダメ!小鳥さん、行って!」
小鳥は、父さまの制止に一瞬止まったけど、わたしが再度お願いすると、サッと消えた。そして、涙目で睨みつける私に、父さまがオロオロしているうちに。
なんと、オリヴィエ兄さまと伯父さまが、直接現れたの。
「やあ、アルフ。可愛いレディに何をしたんだい?」
伯父さまの笑みは柔らかくも真っ黒で。
私は呼んではいけないものを呼んでしまったのでは、と、その時初めて思ったの。
でも、心配は要らなかった。
伯父さまは、ご自分で仰る通り私の困りごとを、すぐに解決してくれた。
父さまは私から助けを求めない限り私の行動について行かないこと。
私は侍従見習いの仕事の他は、一日好きに歩き回っていいこと
その代わり、朝食は必ず父さまと取ること。夜は父さまの寝室で休むこと。
そして。
使い魔に早く名前をつけること。
「小鳥さんに名前?」
思いがけないことを言われて驚く。
オリヴィエ兄さまが可笑しそうに言った。
「ディーちゃんに、早く名前付けなって言ったでしょう?使い魔は名前をつけてくれた人を第一の主人にするんだ。考えて話し合ったりしてる時も、他の指令より優先して聞いてるくらい、使い魔にとっては大事なことなんだよ。」
小鳥さんは名前をつければ、私の意思を一番に尊重してくれるんだ。さっき名前の話をしていたから、父さまの制止より、私を優先してくれたのかもしれない。
それなら、すぐにでも付けなくちゃ!
「おいで」
手のひらを向けると、伯父さまたちと戻って私の肩に止まっていた小鳥は、ちょん、と手のひらに乗った。
目をしっかり合わせる。
「大事な友達には大事な名前をあげなきゃね。私のミドルネームアウローラからローラ、ローちゃんよ。」
よろしくね、ローちゃん。と言いながら、契約と同じように額にキスしてみた。
すると、今度は小鳥さんから、ううん、ローちゃんから、温かいものが流れ込んでくる。
『ディー、私の主。』
そして心の中に声が聞こえた。
「ローちゃんの声?」
思わず聞き返すと、小鳥がコックリ頷く。
「おや、もう名前が付いてしまったらしい。叔父さんもこれで監視は難しいですね。」
ニヤニヤしながらオリヴィエ兄さまが父さまに話しかける。
「そうだぞ。アルフ。皆が皆、エレオノーレ 殿の忍耐力と寛容さを持っているわけではない。ディーちゃんに好かれたいなら、その辺はわきまえなくては。」
伯父さままで、援護してくれて。
「分かりました。兄上。オリヴィエはいつか覚えてろよ。」
不穏な言葉を吐きながらも。
「ディー、ごめん。これから出来るだけディーの気持ちは尊重するから」
だから、父さまを嫌わないで欲しい。
そう言う父さまは、ちょっと情けなくて。でも、そう言うところも父さまなんだって受け入れることが出来たので。
「うん、大丈夫。父さま大好き。」
私は父さまにギュッと抱きついた。
「一回くらいは、一緒にお出かけもしようね。」
あとは見守っててね、と言うと。
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