42 / 241
バーベンベルク城にて
ディーの出発の真の思惑(ルー視点)
しおりを挟む
行く前に一言、声を掛けようと思っていたのに。
騎士たちに指示を終えて振り返ったら、もうディーと父上は居なかった。
いや、見かけはディーそっくりな奴が居るか、、、。
さっき第一陣としてここに来た時に見かけて、本当に驚いた。
俺は急いで歩み寄ると、やや茫然としている母上に声を掛けた。
「早く準備を終えないと、すぐに出発の時間ですよ。」
「あ、ああ。」母上はなぜか上の空のままだ。仕方ない。私は代わりに彼に伝える。
「早く馬車にお戻りを。お召し物の着替えはご自分で出来ますか?」
気持ち悪いけど、出来ないなら手伝わなくてはならない。
私が目をそらしつつ伝えると、奴はディーの顔でニッコリ笑った。
「ありがとう。ルー兄さま。一人で大丈夫。」
芸細な父上は声も変えていったらしい。この子どもらしくやや高い、鈴が鳴るような涼しい声がこいつから出ていると思うと、なんだか無性に腹が立つ。
「それは宜しゅうございました。では時間もありませんので、疾くお着替えください・・・殿下。」
ニッコリ。こちらも涼しい笑顔で答えてやると。
奴、、、北の国境の向こう、北の海に臨む隣国の王子マクシミリアン殿下は、ディーの顔で苦笑いした。
「母上・・・母上!」
「あ、ああ、なんだルー。」
しばらくして。バーベンベルク辺境伯一行は、何事もなく行軍を開始した。
もう領民へのお披露目は済んだので、
馬車が可能な限りの速さで駆ける。疾走と並み足の中間くらいだろう。ほぼ予定通りだ。
中のあいつはだいぶキツイかもしれないが、、、イヤ、少しの間とは言えディーが乗ったのだ。父上が振動を抑える魔術を施しているだろう。
俺は母上の隣に馬を寄せる。本来なら話をする速さでは無いが、誰にも聞かれずに話せる機会はそうそう無い。
次の昼休憩は午後の予定を確認しながら取るから、話をするなら今しかない。
「あいつをディーの身代わりに、とはいつから考えていたんですか?」
「あいつ?・・・ああ、マクシミリアン殿下のことか。」
母上は物思いから覚めた様な顔をして俺を見た。少し速度を落とすよう指示を出すと、話し出す。
「あれな、実は直前で・・・しかも押しかけられてしまったんだ。」
全くのやられ案件だよ。あーあ、と珍しくボヤいている。
意外だ。驚きはしたけどメリットが無いわけではないので、てっきりこれも母上の隠し思惑に入ってたんだと思ったのに。
「初めは選択肢にあったさ。でも、あんまり欲張るのもなと思って、外したんだ。本当にライが身代わりの予定だったんだがな・・・。」
隣国の王妃と母上は仲が良い。と言うより、我がオストマルク帝国の皇族だった王妃は、若い頃から母上の熱狂的なファンだったらしい。息子としては理解出来ないが。
今でも一方的に近い形で手紙のやり取りがあるし、式典などにも度々家族ぐるみで呼ばれるから、我々は隣国の王族と顔馴染みなのだ。
「手紙も溜まっていてな。たまには返事を書かなければと思って、今度の騎士任命式と皇帝家主催のお茶会には家族で参加すると書き送ったんだ。」
その時、うっかりディーも年頃で、ちらほら縁談が来始めた。末っ子の成長は嬉しいがさびしい、と書いてしまったのが運の尽き。
「昨日、隣国の通商団の謁見があり、何時ものこととして受けたら、なんと、顔馴染みの団長の隣に殿下が居たんだ。」
どうやら王妃はディーが母上似であることから、マクシミリアン殿下の相手として狙っていたらしい。今回の帝都行きで婚約者が決まっては!と焦って寄越したのだそうだ。
「殿下の持参した親書を見て驚いたよ。水面下で長く交渉していた相互不可侵条約と互恵的通商条約交渉の全権として殿下を極秘に派遣する、保護を頼むと言う真摯な王陛下のものと、婿はうちの息子を宜しくと言う、なんともふざけた王妃陛下のものと、二つを同時に出されたんだからね。」
溜め息が一つ。母上の気持ちは分かる。ただでさえバタバタの出立前にこんな面倒ごとをもちこまれても、、、。
俺も思わず溜め息を吐いた。
「それで、身代わりですか?」
「仕方ないだろう。極秘とは言え、まさかこの強行軍に騎馬で殿下を付き合わせるわけには行かない。かと言って知ってしまったのにこのまま通商団の護衛で帝都まで行かせるわけにも行かない。」
「殿下は強かだからな。ディアナ嬢と半月も馬車でご一緒させて頂けるなら、誰よりも早くお近づきになれますね、と良い笑顔で言われてしまっては。ディーの代わりにお守りしますのでお一人でと言うしかないだろう。」
アルに下手に話してゴネられるくらいなら、もう当日その場で強行突破してしまおうと、ライとアンナにだけ身代わりがなくなったことを話して、後から来る通商団と一緒に来てもらうことにしたそうだ。
「そうだったんですね・・・」
まあ、この件は納得だ。だが、母上は苦い表情のままだ。
「代償は大きかったがな。」
「?」何かあったのだろうか?
「アルが私に怒った・・・貸しだと。許さないと言われてしまった。」
「はあ。」
「初めて言われた。私が怒って突き放すことはあっても、その逆は無かったら・・・」
本当に衝撃だったのか、この話になったら目が虚ろになった。
「それはそれは。」
「ルーは慰めてくれないのか、冷たいな。」
いや、親の痴話喧嘩を慰めろと言われても、、、。
「母上は、私やディーにも隠し事をしてましたからね。自業自得です。」
ここはあえて冷たく突き放そう。
「ディーの特訓。あれは皇帝家主催のお茶会が、実質的なお見合いの席だからでしょう?」
母上が目を見開いた。うん、気を取り直したみたいで良かったじゃないか。
「半月自由にさせるのは、話が複数来てるから。あの子を皇宮に野放しにすれば、その内皇子宮近辺にも遊びに行って、取り巻きとも自然に知り合う。そこまでしなくても、見かけたり、話しを聞いたり、自然な形で情報が入る。宰相閣下と相談でもされましたか?」
「・・・ああ、その通りだ。義兄上の息子、君たちの従兄弟殿が自然に連れ出してくれることになっている・・・アルはだいぶゴネたがな。ディーに無理強いはしないという条件で飲ませた。」
「なるほど。散々父上の嫌がることをしたんですね。」
ニッコリ微笑めば、母上は明らかにギクリとした。
「子供たちのために演習だ、ディーのために別行動だと綺麗ごとを言って誤魔化していたツケです。せいぜい反省して下さい。」
言い捨てて馬首を返す。
「速度を上げてください。後方にも連絡してきます。」
と言うと。
「それも本当なんだがな。」
言いながらまた一つ溜め息をついて、母上は速度上げの指示を出した。
騎士たちに指示を終えて振り返ったら、もうディーと父上は居なかった。
いや、見かけはディーそっくりな奴が居るか、、、。
さっき第一陣としてここに来た時に見かけて、本当に驚いた。
俺は急いで歩み寄ると、やや茫然としている母上に声を掛けた。
「早く準備を終えないと、すぐに出発の時間ですよ。」
「あ、ああ。」母上はなぜか上の空のままだ。仕方ない。私は代わりに彼に伝える。
「早く馬車にお戻りを。お召し物の着替えはご自分で出来ますか?」
気持ち悪いけど、出来ないなら手伝わなくてはならない。
私が目をそらしつつ伝えると、奴はディーの顔でニッコリ笑った。
「ありがとう。ルー兄さま。一人で大丈夫。」
芸細な父上は声も変えていったらしい。この子どもらしくやや高い、鈴が鳴るような涼しい声がこいつから出ていると思うと、なんだか無性に腹が立つ。
「それは宜しゅうございました。では時間もありませんので、疾くお着替えください・・・殿下。」
ニッコリ。こちらも涼しい笑顔で答えてやると。
奴、、、北の国境の向こう、北の海に臨む隣国の王子マクシミリアン殿下は、ディーの顔で苦笑いした。
「母上・・・母上!」
「あ、ああ、なんだルー。」
しばらくして。バーベンベルク辺境伯一行は、何事もなく行軍を開始した。
もう領民へのお披露目は済んだので、
馬車が可能な限りの速さで駆ける。疾走と並み足の中間くらいだろう。ほぼ予定通りだ。
中のあいつはだいぶキツイかもしれないが、、、イヤ、少しの間とは言えディーが乗ったのだ。父上が振動を抑える魔術を施しているだろう。
俺は母上の隣に馬を寄せる。本来なら話をする速さでは無いが、誰にも聞かれずに話せる機会はそうそう無い。
次の昼休憩は午後の予定を確認しながら取るから、話をするなら今しかない。
「あいつをディーの身代わりに、とはいつから考えていたんですか?」
「あいつ?・・・ああ、マクシミリアン殿下のことか。」
母上は物思いから覚めた様な顔をして俺を見た。少し速度を落とすよう指示を出すと、話し出す。
「あれな、実は直前で・・・しかも押しかけられてしまったんだ。」
全くのやられ案件だよ。あーあ、と珍しくボヤいている。
意外だ。驚きはしたけどメリットが無いわけではないので、てっきりこれも母上の隠し思惑に入ってたんだと思ったのに。
「初めは選択肢にあったさ。でも、あんまり欲張るのもなと思って、外したんだ。本当にライが身代わりの予定だったんだがな・・・。」
隣国の王妃と母上は仲が良い。と言うより、我がオストマルク帝国の皇族だった王妃は、若い頃から母上の熱狂的なファンだったらしい。息子としては理解出来ないが。
今でも一方的に近い形で手紙のやり取りがあるし、式典などにも度々家族ぐるみで呼ばれるから、我々は隣国の王族と顔馴染みなのだ。
「手紙も溜まっていてな。たまには返事を書かなければと思って、今度の騎士任命式と皇帝家主催のお茶会には家族で参加すると書き送ったんだ。」
その時、うっかりディーも年頃で、ちらほら縁談が来始めた。末っ子の成長は嬉しいがさびしい、と書いてしまったのが運の尽き。
「昨日、隣国の通商団の謁見があり、何時ものこととして受けたら、なんと、顔馴染みの団長の隣に殿下が居たんだ。」
どうやら王妃はディーが母上似であることから、マクシミリアン殿下の相手として狙っていたらしい。今回の帝都行きで婚約者が決まっては!と焦って寄越したのだそうだ。
「殿下の持参した親書を見て驚いたよ。水面下で長く交渉していた相互不可侵条約と互恵的通商条約交渉の全権として殿下を極秘に派遣する、保護を頼むと言う真摯な王陛下のものと、婿はうちの息子を宜しくと言う、なんともふざけた王妃陛下のものと、二つを同時に出されたんだからね。」
溜め息が一つ。母上の気持ちは分かる。ただでさえバタバタの出立前にこんな面倒ごとをもちこまれても、、、。
俺も思わず溜め息を吐いた。
「それで、身代わりですか?」
「仕方ないだろう。極秘とは言え、まさかこの強行軍に騎馬で殿下を付き合わせるわけには行かない。かと言って知ってしまったのにこのまま通商団の護衛で帝都まで行かせるわけにも行かない。」
「殿下は強かだからな。ディアナ嬢と半月も馬車でご一緒させて頂けるなら、誰よりも早くお近づきになれますね、と良い笑顔で言われてしまっては。ディーの代わりにお守りしますのでお一人でと言うしかないだろう。」
アルに下手に話してゴネられるくらいなら、もう当日その場で強行突破してしまおうと、ライとアンナにだけ身代わりがなくなったことを話して、後から来る通商団と一緒に来てもらうことにしたそうだ。
「そうだったんですね・・・」
まあ、この件は納得だ。だが、母上は苦い表情のままだ。
「代償は大きかったがな。」
「?」何かあったのだろうか?
「アルが私に怒った・・・貸しだと。許さないと言われてしまった。」
「はあ。」
「初めて言われた。私が怒って突き放すことはあっても、その逆は無かったら・・・」
本当に衝撃だったのか、この話になったら目が虚ろになった。
「それはそれは。」
「ルーは慰めてくれないのか、冷たいな。」
いや、親の痴話喧嘩を慰めろと言われても、、、。
「母上は、私やディーにも隠し事をしてましたからね。自業自得です。」
ここはあえて冷たく突き放そう。
「ディーの特訓。あれは皇帝家主催のお茶会が、実質的なお見合いの席だからでしょう?」
母上が目を見開いた。うん、気を取り直したみたいで良かったじゃないか。
「半月自由にさせるのは、話が複数来てるから。あの子を皇宮に野放しにすれば、その内皇子宮近辺にも遊びに行って、取り巻きとも自然に知り合う。そこまでしなくても、見かけたり、話しを聞いたり、自然な形で情報が入る。宰相閣下と相談でもされましたか?」
「・・・ああ、その通りだ。義兄上の息子、君たちの従兄弟殿が自然に連れ出してくれることになっている・・・アルはだいぶゴネたがな。ディーに無理強いはしないという条件で飲ませた。」
「なるほど。散々父上の嫌がることをしたんですね。」
ニッコリ微笑めば、母上は明らかにギクリとした。
「子供たちのために演習だ、ディーのために別行動だと綺麗ごとを言って誤魔化していたツケです。せいぜい反省して下さい。」
言い捨てて馬首を返す。
「速度を上げてください。後方にも連絡してきます。」
と言うと。
「それも本当なんだがな。」
言いながらまた一つ溜め息をついて、母上は速度上げの指示を出した。
0
お気に入りに追加
2,162
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる