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バーベンベルク城にて
融けてしまいそうになりました
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アハハ!ハハハハッ!
不安、恐怖、憤りの反動で放出した怒りは、私をとっても高揚させた。笑い声が止まらず、地面や空気の揺れもだんだん大きくなる。
ふと、周りを見回すと、騎士たちは空中を舞いながら気絶していた。魔導師たちはほとんど倒れていて、なぜかおじさんが一生懸命箱を取り除こうとしている。あ、一人取れたみたい。おじさん、魔術センスあるのね。
次の人、と立ち上がったおじさんと目が合った。ん?なんでそんな恐ろしいものを見る目なの?助けてあげたのに。
おじさんは、ゴクリと唾を飲み込むと、必死の形相で叫んだ。
「嬢ちゃん!お願いだ、この箱を取ってくれ。聞こえるか?頼む!小さい嬢ちゃんに人殺しはさせたくないんだ!」
「?」私は首をかしげた。おじさんが何か言っている。でも、何を言ってるのかよく分からない。感情が言葉を理解することを拒否してるみたい。何か必死なことは伝わってくるんだけど。
おじさんにも、私には聞こえていないことが分かったようで。くっと唇を噛みしめると、今度は兄上に向かって何か言い始めた。
「オスカー殿!もう、嬢ちゃんを止められるのはあなただけだ。どうか、もう止めろと言ってくれ!」
兄上に何を言ってるの?お願いしてるってことは伝わってくるんだけど。
でも、おじさんの言葉は兄上には届いたみたいで。さっきから身じろぎもせず私を見つめていた兄上は、ハッとすると、床の揺れにも動じず、私に近づきながら手を差し伸べた。
「ディー、もう止めるんだ。君のおかげで私は助かったよ。ありがとう。もう十分だから、みんなを懲らしめるのは止めて、こっちにおいで。」
あ、れ、、、?
ここで、やっと私も少し変だなと思った。兄上が私に何か話してる。手を差し伸べてくれている。でも、、、
「分からない・・・。」
思わずつぶやく。兄上とおじさんがギョッとした。
「兄上はディーに話しかけてるのよね。でも、何を言ってるんだろう・・・。」
「ディーっ!?どうしたんだ!ディー!!」
「嬢ちゃん!オスカー殿の声も聞こえないのか?まずいな、自我が魔力に侵されてきている。オスカー殿!とにかく呼びかけて、出来れば抱きしめてくれ。」
「分かった。だが、ディーはどうなってしまったんだ?」
空中の私を捕まえようと腕を伸ばしながら、兄上がおじさんと話している。なんだか兄上の話もどうでもよくなってきちゃった。
私はフイッと兄上の腕を避ける。なんだか今は捕まりたくない。私に拒否されたことのない兄上は愕然として私を見上げた。
「魔力に自我を乗っ取られかけてるんだ!」
おじさんが魔導師の箱を取り除こうとしながら兄上と話している。
「自我が発達していない状態でこんな量の魔力を受け入れてるんだ。しかも怒りで理性が吹き飛んじまっている。今はまだ自分の感情があるみたいだが、この状況が続くと魔力が嬢ちゃんを飲み込んじまう。そうなったら・・・」
「そうなったらどうなると言うんだ!魔導師!」
「たぶん、嬢ちゃんという存在が崩壊する・・・身体も魂も、この大気に融ける・・・ただの強い魔力に戻るんだ。」
「っ!!なんだって!?」
「何を言い出すんだ、お前は・・・そんなこと、ある訳ないだろう・・・ディー、おいで!兄上にギュッてさせておくれ。ほら、ディーっ!!」
追いかけてくる人がいる。誰だっけ?なんだかうるさいな。
私がそう思った途端、その人の周りに風が障壁を作った。すごい、きちっと考えたり思い浮かべたりしなくても、私の漠然としたイメージ通りに魔力が動く。私と魔力は一体なんだ。、、、?私ってなんだっけ?
「?ディー、私に何をするんだ・・・?」
うろたえてる。ふふ、楽しい。
「嬢ちゃん!オスカー殿も分からなくなるなんて・・・」
おじさんもうるさいな。そう思った時。
「兄上!ご無事ですか!?」
新しくこの空間に入ってきた誰かが何か叫んだ。
不安、恐怖、憤りの反動で放出した怒りは、私をとっても高揚させた。笑い声が止まらず、地面や空気の揺れもだんだん大きくなる。
ふと、周りを見回すと、騎士たちは空中を舞いながら気絶していた。魔導師たちはほとんど倒れていて、なぜかおじさんが一生懸命箱を取り除こうとしている。あ、一人取れたみたい。おじさん、魔術センスあるのね。
次の人、と立ち上がったおじさんと目が合った。ん?なんでそんな恐ろしいものを見る目なの?助けてあげたのに。
おじさんは、ゴクリと唾を飲み込むと、必死の形相で叫んだ。
「嬢ちゃん!お願いだ、この箱を取ってくれ。聞こえるか?頼む!小さい嬢ちゃんに人殺しはさせたくないんだ!」
「?」私は首をかしげた。おじさんが何か言っている。でも、何を言ってるのかよく分からない。感情が言葉を理解することを拒否してるみたい。何か必死なことは伝わってくるんだけど。
おじさんにも、私には聞こえていないことが分かったようで。くっと唇を噛みしめると、今度は兄上に向かって何か言い始めた。
「オスカー殿!もう、嬢ちゃんを止められるのはあなただけだ。どうか、もう止めろと言ってくれ!」
兄上に何を言ってるの?お願いしてるってことは伝わってくるんだけど。
でも、おじさんの言葉は兄上には届いたみたいで。さっきから身じろぎもせず私を見つめていた兄上は、ハッとすると、床の揺れにも動じず、私に近づきながら手を差し伸べた。
「ディー、もう止めるんだ。君のおかげで私は助かったよ。ありがとう。もう十分だから、みんなを懲らしめるのは止めて、こっちにおいで。」
あ、れ、、、?
ここで、やっと私も少し変だなと思った。兄上が私に何か話してる。手を差し伸べてくれている。でも、、、
「分からない・・・。」
思わずつぶやく。兄上とおじさんがギョッとした。
「兄上はディーに話しかけてるのよね。でも、何を言ってるんだろう・・・。」
「ディーっ!?どうしたんだ!ディー!!」
「嬢ちゃん!オスカー殿の声も聞こえないのか?まずいな、自我が魔力に侵されてきている。オスカー殿!とにかく呼びかけて、出来れば抱きしめてくれ。」
「分かった。だが、ディーはどうなってしまったんだ?」
空中の私を捕まえようと腕を伸ばしながら、兄上がおじさんと話している。なんだか兄上の話もどうでもよくなってきちゃった。
私はフイッと兄上の腕を避ける。なんだか今は捕まりたくない。私に拒否されたことのない兄上は愕然として私を見上げた。
「魔力に自我を乗っ取られかけてるんだ!」
おじさんが魔導師の箱を取り除こうとしながら兄上と話している。
「自我が発達していない状態でこんな量の魔力を受け入れてるんだ。しかも怒りで理性が吹き飛んじまっている。今はまだ自分の感情があるみたいだが、この状況が続くと魔力が嬢ちゃんを飲み込んじまう。そうなったら・・・」
「そうなったらどうなると言うんだ!魔導師!」
「たぶん、嬢ちゃんという存在が崩壊する・・・身体も魂も、この大気に融ける・・・ただの強い魔力に戻るんだ。」
「っ!!なんだって!?」
「何を言い出すんだ、お前は・・・そんなこと、ある訳ないだろう・・・ディー、おいで!兄上にギュッてさせておくれ。ほら、ディーっ!!」
追いかけてくる人がいる。誰だっけ?なんだかうるさいな。
私がそう思った途端、その人の周りに風が障壁を作った。すごい、きちっと考えたり思い浮かべたりしなくても、私の漠然としたイメージ通りに魔力が動く。私と魔力は一体なんだ。、、、?私ってなんだっけ?
「?ディー、私に何をするんだ・・・?」
うろたえてる。ふふ、楽しい。
「嬢ちゃん!オスカー殿も分からなくなるなんて・・・」
おじさんもうるさいな。そう思った時。
「兄上!ご無事ですか!?」
新しくこの空間に入ってきた誰かが何か叫んだ。
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