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22.故郷の味
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俺とミナは絶句していた。この前は神殿があった場所には、二階建ての家が建っていた。
いやそんなことよりもっと重要なことがあるな。
「なんなんだここはー!!」
地下なのに空があるし、横を見渡せば川が流れている。奥を見れば森林があり鳥たちが囀っていた。ここが地下だった面影はこの家付近の床のタイルくらいだ。
「なによ和澄!急に叫んだらびっくりするじゃない!」
「これが叫ばずにいられますか!ここって本当にこの前と同じ地下ですよね?」
「そこは難しいところなのよね和澄。まぁそのことについても中に入って話しましょ。そこの絶賛方針中のルナトを連れて入りなさい。ミナも話があるんでしょ?」
ミナは頷く。そうだった、俺たちはイヴさんと話しをするために来たんだ。見ればルナトは、ここが地下・・地下・・と呟いていた。そりゃ規格外と知っていた俺だってここまでかと驚いたし当然か。
方針状態のルナトの背中を押して、俺たちは家に入っていく。
中へ入ると板の廊下が広がっている。イヴさんが靴を脱いで上がる。どうやら土足は厳禁らしい。俺たちはイヴさんに倣い靴を脱いで入る。
イヴさんは台所に行きコップに緑の液体を入れている。一体なんの飲み物だろう?
「さぁ座ってちょうだい。これは日本に行って買ってきた緑茶というものよ。」
これは緑茶か!22世紀に入る前は世界のどこでも手に入ったそうだけど、戦後の日本が茶葉を輸出しなくなり、今ではあまり見なくなったものだ。
両親の故郷の飲み物ということで恐る恐る湯飲みに口をつけ飲む。
・・・苦い。しかしどこか懐かしい味がする。飲むほど深みがあり身体に染み渡っていく。ミナとルナトの方を見ると、ミナは普通に飲めていたがルナトは青い顔をして飲んでいた。
「苦くはありますが味わい深い味がします。」
「あらーわかるー?流石日本人の血が流れてるだけあるわ。ミナも普通に飲めてるみたいだし、出した甲斐があるわね。ルナトには少し合わなかったかしら?紅茶もあるからキツければそちらをどうぞ」
イヴさんは満足そうに言った。なんでもイヴさんは今和式ブームというものらしく、アダムさんの情報を集めているときに日本の文化に触れて気に入ったらしい。
「家の裏には温泉があるのよ。知り合いにここを作るときに一緒に作らせたの。泊まっていくなら使わせてあげるわ。一番風呂はわたしがいただくけどね!」
その知り合いはとてもつもなく規格外といえる。なんでも別空間作り、地下に入り口を設置したそうだ。しかもたったの2日で。いくら希少な闇属性の使い手といってもデタラメだ。兄さんには間違ってもそんなことはできない。流石に閻魔のイヴさんの知り合い。他にも知り合いがいるなら一癖も二癖もあるのだろう。
イヴさんが一通りこの空間の話をしたら満足そうにミナの話について問いかける。
「ミナは話があったのよね?なにかしら?」
「えぇ、話というのは、先日カズくんが限界までブレードを使ってエネルギー放出を行なったら暴走したそうなんですけどなにかわかりませんか?」
続けて補足でルナトが事の顛末を語る。イヴさんは少し考えた後に口を開く。
「和澄とルナトが聞いた鍵の開くような音はおそらく素因封印が解除される音ね。わたしもその音は封印が解けた時に聞いたわ」
素因封印は人類の創造主、最初の神が人類の可能性を恐れてその素質を封印した。それは封印された子供にも適用されているらしい。邪心の欠片という神の欠片により解除ができるそうだ。
このことをイヴさんが俺とミナの前で話してたらしいが覚えがなく、それをミナに呆れられたのは記憶に新しい。
「だけどわたしは別に服装が変わったりと何か変化したりはしなかったわね。その秘密はブレードって武器にありそうだけど」
ブレードの中に邪心の欠片が使われていてそれが素因封印を解除しているんだろう。俺が暴走したとき指輪の方からエネルギーが供給されていたようだし、変化の原因はやはりアクセサリ型か。
「暴走しても制御できる精神力と実力が必要ね。わたしがここであなた達を鍛えてあげるわ。ルナトは特にね。<模倣眼>の使い方を教えてあげる」
またもイヴさんは魔眼を看破する。ルナトには模様がないからわからないはずなのに。ルナトは驚いて口にする。
「なぜそれを!?」
「わたしの魔眼が<完全模倣眼>なのよ。つまりあなたの上位互換。あなたと眼と違ってわたしは能力を保存できる。だから他人の能力を奪ったあとの組み合わせを考えるのは得意なの。少なくともあなたはわたしに師事された方が強くなるわね。あ、和澄は強制ね」
ルナトは看破の理由を聞いて絶句していた。俺はこの話はむしろありがたいと思っている。
「わかってますよ。今回は大事にならなかったからいいけど次はどうなるかわからないですしね」
そうだ。ミナやルナトや兄さんにカナンさん。他にも傷つけたくないひとはいっぱいいる。そのためにも俺はもっと自分を磨かなければならない。ルナトもイヴさんに師事することを了承した。
そんなこんなで学校が始まるまでこの空間に泊まり込みで、ミナはブレードの解析、俺とルナトはイヴさんに鍛えられることになった。
いやそんなことよりもっと重要なことがあるな。
「なんなんだここはー!!」
地下なのに空があるし、横を見渡せば川が流れている。奥を見れば森林があり鳥たちが囀っていた。ここが地下だった面影はこの家付近の床のタイルくらいだ。
「なによ和澄!急に叫んだらびっくりするじゃない!」
「これが叫ばずにいられますか!ここって本当にこの前と同じ地下ですよね?」
「そこは難しいところなのよね和澄。まぁそのことについても中に入って話しましょ。そこの絶賛方針中のルナトを連れて入りなさい。ミナも話があるんでしょ?」
ミナは頷く。そうだった、俺たちはイヴさんと話しをするために来たんだ。見ればルナトは、ここが地下・・地下・・と呟いていた。そりゃ規格外と知っていた俺だってここまでかと驚いたし当然か。
方針状態のルナトの背中を押して、俺たちは家に入っていく。
中へ入ると板の廊下が広がっている。イヴさんが靴を脱いで上がる。どうやら土足は厳禁らしい。俺たちはイヴさんに倣い靴を脱いで入る。
イヴさんは台所に行きコップに緑の液体を入れている。一体なんの飲み物だろう?
「さぁ座ってちょうだい。これは日本に行って買ってきた緑茶というものよ。」
これは緑茶か!22世紀に入る前は世界のどこでも手に入ったそうだけど、戦後の日本が茶葉を輸出しなくなり、今ではあまり見なくなったものだ。
両親の故郷の飲み物ということで恐る恐る湯飲みに口をつけ飲む。
・・・苦い。しかしどこか懐かしい味がする。飲むほど深みがあり身体に染み渡っていく。ミナとルナトの方を見ると、ミナは普通に飲めていたがルナトは青い顔をして飲んでいた。
「苦くはありますが味わい深い味がします。」
「あらーわかるー?流石日本人の血が流れてるだけあるわ。ミナも普通に飲めてるみたいだし、出した甲斐があるわね。ルナトには少し合わなかったかしら?紅茶もあるからキツければそちらをどうぞ」
イヴさんは満足そうに言った。なんでもイヴさんは今和式ブームというものらしく、アダムさんの情報を集めているときに日本の文化に触れて気に入ったらしい。
「家の裏には温泉があるのよ。知り合いにここを作るときに一緒に作らせたの。泊まっていくなら使わせてあげるわ。一番風呂はわたしがいただくけどね!」
その知り合いはとてもつもなく規格外といえる。なんでも別空間作り、地下に入り口を設置したそうだ。しかもたったの2日で。いくら希少な闇属性の使い手といってもデタラメだ。兄さんには間違ってもそんなことはできない。流石に閻魔のイヴさんの知り合い。他にも知り合いがいるなら一癖も二癖もあるのだろう。
イヴさんが一通りこの空間の話をしたら満足そうにミナの話について問いかける。
「ミナは話があったのよね?なにかしら?」
「えぇ、話というのは、先日カズくんが限界までブレードを使ってエネルギー放出を行なったら暴走したそうなんですけどなにかわかりませんか?」
続けて補足でルナトが事の顛末を語る。イヴさんは少し考えた後に口を開く。
「和澄とルナトが聞いた鍵の開くような音はおそらく素因封印が解除される音ね。わたしもその音は封印が解けた時に聞いたわ」
素因封印は人類の創造主、最初の神が人類の可能性を恐れてその素質を封印した。それは封印された子供にも適用されているらしい。邪心の欠片という神の欠片により解除ができるそうだ。
このことをイヴさんが俺とミナの前で話してたらしいが覚えがなく、それをミナに呆れられたのは記憶に新しい。
「だけどわたしは別に服装が変わったりと何か変化したりはしなかったわね。その秘密はブレードって武器にありそうだけど」
ブレードの中に邪心の欠片が使われていてそれが素因封印を解除しているんだろう。俺が暴走したとき指輪の方からエネルギーが供給されていたようだし、変化の原因はやはりアクセサリ型か。
「暴走しても制御できる精神力と実力が必要ね。わたしがここであなた達を鍛えてあげるわ。ルナトは特にね。<模倣眼>の使い方を教えてあげる」
またもイヴさんは魔眼を看破する。ルナトには模様がないからわからないはずなのに。ルナトは驚いて口にする。
「なぜそれを!?」
「わたしの魔眼が<完全模倣眼>なのよ。つまりあなたの上位互換。あなたと眼と違ってわたしは能力を保存できる。だから他人の能力を奪ったあとの組み合わせを考えるのは得意なの。少なくともあなたはわたしに師事された方が強くなるわね。あ、和澄は強制ね」
ルナトは看破の理由を聞いて絶句していた。俺はこの話はむしろありがたいと思っている。
「わかってますよ。今回は大事にならなかったからいいけど次はどうなるかわからないですしね」
そうだ。ミナやルナトや兄さんにカナンさん。他にも傷つけたくないひとはいっぱいいる。そのためにも俺はもっと自分を磨かなければならない。ルナトもイヴさんに師事することを了承した。
そんなこんなで学校が始まるまでこの空間に泊まり込みで、ミナはブレードの解析、俺とルナトはイヴさんに鍛えられることになった。
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