神世界と素因封印

茶坊ピエロ

文字の大きさ
上 下
10 / 83

10.戻ってきて待っていたのは冤罪

しおりを挟む
 扉をあけるとレイク皇帝陛下とその右横に皇太子のルナト殿下に左横に叔父さんがいて、その後ろに近衛兵と思われる人が二人いる。目の前には兄さんとカナンさんが控えながら話をしていた。


「陛下、お忙しいところを失礼します。真壁和澄とミナ・ヒューゲル、門にいた兵士から陛下の命を聞き参上致しました」


 帝国に不敬罪はないけど作法という物はある。あんまりこういう場に出席したことがない俺は、兄さんたちに倣って膝をついて頭を下げ報告した。


「そなたが真壁のせがれか。余がそなたを呼び出した理由は聞いているな?」


 陛下はそういうと右手をあげた。その瞬間叔父さんと兄さんが武装した。
 叔父さんは兄さんと違ってブレードもちではない。しかし二刀流で片手で大剣を両手に持ち、一般兵が標準的な大きさの剣を振り回してるのと変わらない速度で扱う。この人本当に人間かって装備をみる度に思う。
 そして<未来視フューチャーアイ>が発動する。
 なぜ叔父さんに俺の左腕が切られているのか。
 くそっ!わけがわかんないけどこのままじゃ切られる!俺は後ろに下がって回避したが、予知を警戒していた叔父さんは俺が離脱するギリギリまで何度も連続で斬りかかってきた。わかっていても集中力が乱れれば避けきれない。俺は腕こそ切れなかったが叔父さんの攻撃を避けきれなかった。
 後ろに下がった俺はすぐさま俺はブレードを装着し戦闘態勢に入る。
 

「いってぇ!急になにするんだ叔父さん!兄さんもブレードを装備して。俺がなにかしたっていうのか!」


「ほう。マーフィーの剣を見切るか」

 
 皇帝は感心そうにいう。叔父さんと兄さんは黙ったままだ。
 俺が叔父さんと兄さんを睨んでいると、皇帝の隣りに座っていたルナト殿下が立ちあがり俺に告げる。


「兵士から聞いていなかったのか?貴様には国家反逆罪の疑いがかけられている。まずはその武装を解除し投降しろ」


「は!?ふざけんな!そんな話は一度もしてなかったぞ!それに今、俺が叔父さんの攻撃を防がなかったら左腕が飛んでたぞ!俺は別に武装解除は構わないし聴取だって受ける。だけどそちらも武装解除してもらいたい!」


 こっちは正当防衛しただけだ。戦闘継続の意思はないし、むしろ武装解除したいな。叔父さんと兄さんと戦闘なんかしたくない。そう思っていたがルナト殿下はとんでもないことを口にする。

「ふはははは!他国の尖兵かもしれないやつの前で武装を解けって本気で言ってるのか?なぁ魔眼所持者だと隠している和澄くん?」


「――――――!?叔父さん!兄さん!話したのか!?」


「あぁ!わかっているよ!貴様が<未来視>を持っているってことはな!」


「くそ!なんでだよ!俺は二人を信じてたのに!」


 ふたりとも黙っている。その沈黙は肯定ってことか!?
 <未来視>は2秒先が視える。そうだたった2秒だ。<未来視>を知る強者が敵に回った場合、たったの2秒では大きなアドバンテージにはならない。単純にわかっていても避けにくい攻撃をすればいいからだ。現に俺は叔父さんの攻撃がわかっていても完全に回避はできなかった。
 俺は能力の性質上、絶対に口外しないだろう信頼した相手にしか詳細は話さない。知られてないことで大きなアドバンテージになるからだ。そんな信頼してた二人に裏切られたかもしれない。俺はショックで動けずにいたが、後ろからミナが歩いてきた。


「陛下、殿下。どうか再考をお願いします。カズくん・・・真壁和澄は国会に背くようなことをする人じゃありません。どうかお願いします!」


「そうはいってもなぁ。ミナ・ヒューゲル、君にも容疑はかけられているんだぜ。真壁和澄と一番長くいるのは君だからなぁ。疑うのは当然だろう?」


「そんな・・・!?」


 どうやらミナにも疑いがかけられているようだ。ミナがしてくれた俺の弁明はかき消されてしまった。
 しかし腑に落ちない。俺と一緒にいるだけで容疑をかけられるなんて!


「ミナは関係ないだろ!俺は投降する。武装だって解除する。そちらが俺が攻撃してきたり逃走したりすると思うのならば、そちらは武装解除しなくてもいい。だからミナへの容疑は取り消してくれ」


「お前は脳内お花畑ちゃんか!国家反逆罪の容疑をかけられた人間のいうことをだれが信じるんだ?君なら信じるのかい?」


「・・・くっ!」


 確かにその通りだ。俺だって逆の立場なら信じられない。
 これはもう反論のしようもない。疑いをかけられてるだけで俺たちは無実なんだ。
 また攻撃されたらと思うと怖いが仕方ない。
 俺は投降するためにブレードをはずして、皇帝のほうを向いた。
 そこで後ろに控えてた近衛兵の二人が口を上に釣り上げたのが見えたから嫌な予感がして<未来視>を使った。
 視えたのは、俺は倒れていてミナが頭部に弾丸を撃たれて射殺される未来。
 俺はブレード即座につけなおして手を前にかざした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

泥々の川

フロイライン
恋愛
昭和四十九年大阪 中学三年の友谷袮留は、劣悪な家庭環境の中にありながら前向きに生きていた。 しかし、ろくでなしの父親誠の犠牲となり、ささやかな幸せさえも奪われてしまう。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

初恋が綺麗に終わらない

わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。 そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。 今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。 そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。 もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。 ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

閻魔の庁

夢酔藤山
ホラー
小野篁。 後世に伝わる彼の伝説は、生々しい。 昼は平安朝の貴族にして、夜は閻魔大王の片腕となる。その奇怪なる人物の目を通じて、人の世の因果を描く。閻魔の役人は現世をどう傍観するものか。因果応報……小野篁は冷ややかに世を見つめる。

処理中です...